横浜市民ギャラリーあざみ野での2月の風物詩。
現代の写真表現を紹介するシリーズ、
“あざみ野フォト・アニュアル” が、今年も開催されています。
サブタイトルは、“とどまってみえるもの”。
例年は個展形式でしたが、今年はグループ展形式。
7名の若手作家が参加しています。
7名とも写真を使って、作品を制作していますが、
単に写真家、カメラマンという感じではありません。
写真で何かを表現するのではなく、
写真を素材にして何かを表現するアーティストばかり。
写真表現は、「シャッターを切って、ハイ終わり」 から次のフェーズに移行しているようです。
さてさて、どの作家の作品も印象的でしたが、
まず個人的に惹かれたのが、新居上実さんの 「家」 シリーズでした。
最近、新居に引っ越したという新居さん。
コロナ禍でスタートした新生活ということもあり、
自分の中に、不安でモヤモヤした気持ちが生まれたのだそう。
それらを消化するために制作し始めたシリーズとのことです。
撮影されたミニチュアハウスは、
どこかシュルレアリスムっぽく、絶妙なほどに不穏な空気が漂っていました。
じーっと眺めていると、もしかしたら、
次の瞬間に、自分がこの写真の世界に入り込んでしまうのではないか。
そして、一生閉じ込められてしまうのではないか。
思わずそんな妄想が頭をよぎり、一人でブルっと震えてしまいました。
観ていて心地よくはないのですが、しかし、妙に気になって見てしまう。
そんな不思議な作品でした。
もう一つ印象的だったのが、
平本成海さんの 「PRIVATE VOYAGER」 シリーズ。
平本成海さんは、「平本成海」 という名義で、
新聞を素材に、6畳一間の自室で一日一作品を制作しているのだそう。
(他の作品シリーズは、別の名義で制作・発表しているとのこと)
新聞に掲載されている写真を、デジタルカメラで撮影し、
それを画像編集ソフトで編集し、固有名詞を持たな図像を制作しているのだとか。
デジタル版フォトコラージュといったところでしょうか。
平本さんの作品も、新居さんの作品同様、
いい意味で (?)、不穏な空気が漂っていました。
しかも、これを毎日制作しているというところに、狂気すら感じます。
最後に、7名の作家の中でもっとも印象に残った木原結花さんの作品を。
彼女は、行旅死亡人をテーマに作品を制作しています。
行旅死亡人とは、氏名や戸籍などが判明しない身元不明の遺体のこと。
官報や新聞、警察のホームページなどで、
発見された行旅死亡人の情報が発表されていますが、
掲載されている情報は、推定年齢や性別、服装など、わずが数行ほど。
木原さんは、それらの情報をもとに、
フォトモンタージュの手法で、行旅死亡人の姿を再現しています。
作品のコンセプト自体は、とても興味深かったのですが。
意図的なのか、天然 (?) なのか、
出来上がったフォトモンタージュが、どこか不格好で。。。
妙な可笑しみが漂っていました。
内容が内容だけに、さすがに笑うのは不謹慎。
しかし、そう自覚すれば自覚するほど、余計オモシロく感じてしまう。
笑ってはいけない状態と闘う羽目になりました。
ちなみに。
この展覧会を担当した学芸員の一人が、
アートテラーの生みの親 (?) でもある天野太郎さんです。
この展覧会をもって、天野さんはギャラリーあざみ野を定年退職。
つまり、これが学芸員人生ラストの展覧会です。
本当にお疲れ様でした!
なお、今後はフリーランスとして活動されるそうなので、
きっとまだまだ面白い現代アートを紹介してくれるはず。
これからも期待しています。