現在、すみだ北斎美術館で開催されているのは、
“筆魂 線の引力・色の魔力―又兵衛から北斎・国芳まで―” という展覧会。
美術館開館以来初となる肉筆画オンリーの展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
浮世絵の源流を作ったと言われる奇想の絵師・岩佐又兵衛の肉筆画もあれば、
左)岩佐又兵衛 《和漢故事説話図 浮舟》 福井県立美術館蔵
右)重要文化財 岩佐又兵衛 《弄玉仙図(旧 金谷屏風)》 摘水軒記念文化振興財団 千葉市美術館寄託
肉筆画の技量は浮世絵師中第一級と賞される勝川春章の肉筆画や、
勝川春章 《吾妻風流図》 東京藝術大学蔵
幕末に活躍した歌川国貞&歌川国芳の肉筆画も。
左)歌川国芳 《立美人図》 個人蔵
右)歌川国貞 《立美人図》 摘水軒記念文化振興財団 千葉市美術館寄託
他にも、菱川師宣、鳥居清長、喜多川歌麿、溪斎英泉、
歌川広重といった浮世絵界のスーパースターの肉筆画が揃い踏み!
もちろん、展覧会のトリを務めるのは、この人です。
左)葛飾北斎 《隅田川蛍狩図》 回向院蔵 右)葛飾北斎 《登龍図》 個人蔵
そう。葛飾北斎。
満を持して、北斎の肉筆画が登場した際には、
思わず心の中で、「よっ!待ってました!」 と大向こうを掛けてしまいました。
なお、出展作は、前後期あわせて約125点!
(注:出展作品は前後期で総入替となります)
その中には、重要文化財もあれば、重要美術品もあり、
さらには、新発見、再発見、初公開の作品も多数含まれています。
浮世絵ファンにとっては、昨年夏、東京都美術館にて、
大々的な浮世絵展 “The UKIYO-E 2020” が開催されたのは記憶に新しいところでしょうが。
それに勝るとも劣らない規模の展覧会でした!
文句のつけようの無い展覧会なのですが。
強いて一つだけ挙げるとするならば、
展覧会のタイトルが、いまひとつ伝わりづらいのかなと。
ベタもベタですが、タイトルのどこかに、
“肉筆画の名品” というフレーズがあったほうが伝わるような。
とはいえ、あえて “筆魂” という造語で勝負する、
そのチャレンジングな姿勢は素晴らしいと思います!
そこで、頼まれてもないですが、
僕も、キャッチーな展覧会タイトルを考えてみました。
昨年の展覧会に全乗っかりして、
“The NIKUHITSU-GA 2021” というのはどうでしょう。
もしくは、漢字2文字にこだわるのでしたら、
浮世絵界の最高位に立つ絵師が勢ぞろいしているので・・・・・
“筆柱”
というのはどうでしょうか?
すみだ北斎美術館さん、良かったら使ってみてください (笑)
さてさて、ここからは、前期の出展作の中で、
特に印象に残った作品をいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、喜多川歌麿の 《雪兎図》 (写真右) から。
左)喜多川歌麿 《夏姿美人図》 遠山記念館蔵 右)喜多川歌麿 《雪兎図》 個人蔵
幼い子供を抱く母親と、
雪うさぎを作る少女が描かれた一枚です。
何より印象的だったのが・・・・・
少女作の雪うさぎのクオリティの高さ!
ふわふわ感まで再現されていました。
・・・・・ただ、雪うさぎって、こういうことじゃないような。
ウサギと言えば、葛飾北斎の 《宝珠を搗く月兎》 も印象的でした。
左)葛飾北斎 《宝珠を搗く月兎》 個人蔵 右)葛飾北斎 《鮟鱇図》 すみだ北斎美術館蔵
解説文には、「お餅を搗いていたところ、
霊験あらたかな宝珠に変わって、ビックリしたように見える」 とあったのですが。
目が赤く光り、感情が読み取れないその姿は、
どことなくターミネーターを連想させるものがありました。
もしかしたら、宝珠は人類の未来の希望を象徴したもので、
それをこのウサギ型ターミネーターが打ち砕こうとしているのかもしれません。
デデンデンデデン。
続いて印象に残った肉筆画は、
歌川豊国の 《三代目中村歌右衛門の九変化図屏風》 です。
歌川豊国 《三代目中村歌右衛門の九変化図屏風》 個人蔵
こちらは、今回初公開となる貴重な屏風絵。
描かれているのは、三大中村歌右衛門の歌舞伎舞踊の様子です。
九変化とありますが、絵は八面しかありません。
「一変化はいずこに??」 と思ったら・・・・・
この一面に描かれている姿が、
辻君と奴の2役を表しているのだとか。
一人が同時に2役を演じる。
清水アキラと同じシステムです (←?)。
最後に紹介したいのは、鳥居清長の 《恵美須屋見世先図》。
鳥居清長 《恵美須屋見世先図》 江戸東京博物館
描かれているのは、かつて尾張町、
今の銀座にあったという呉服屋・恵比須屋の店先です。
恵比須屋というだけあって、
のれんには恵比須様が染め抜かれていましたが。
その手で抱いていたのは・・・・・・
南国の鯛!!
いや、そこは真鯛であってくれよ。
┃会期:2021年2月9日(火)~2021年4月4日(日)
┃前期:2/9(火)~3/7(日) 後期:3/9(火)~4/4(日)
┃会場:すみだ北斎美術館
┃https://hokusai-museum.jp/fudedamashii/
┃訪れる前に美術館HPをチェックされることをお勧めいたします。