今年2021年に、めでたく開館55周年を迎えた山種美術館。
それを記念して、現在、開催されているのが、
“【開館55周年記念特別展】 川合玉堂 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠―” です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
山種美術館の創立者である山﨑種二が、
個人的に交流した日本画家は数多くいますが、
とりわけ深い交流のあった画家の一人が、川合玉堂です。
その長年にわたる親交の中で、
山種美術館の所蔵品となった玉堂作品は71点を数えるとのこと。
本展では、初期の代表作である 《鵜飼》 や、
川合玉堂 《鵜飼》 1895(明治28)年 絹本・彩色 山種美術館
玉堂芸術の真骨頂とされる 《早乙女》 など、
川合玉堂 《早乙女》 1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館
選りすぐり玉堂作品が紹介されています。
「日本の自然は、玉堂が作った」。
そう言われるほどに、日本の風景を多く描いた玉堂。
初めて目にするのに、どこか懐かしいような。
展覧会を訪れたというよりも、
まるで故郷を訪れたような感覚になりました。
玉堂作品は、色鮮やかではありません。
ベージュやブラウン、カーキが多いので、
会場全体がアースカラーに染まっていました。
さらに、絵の画面だけでなく、
表具にも赤や青といった派手な色は使われていません。
どの表具も、蛭子さんの服みたいなカラーリングでした (←?)
ただ、決して地味にあらず。
地味ではなく、滋味といった感じ。
味わえば、日本人誰もがホッとする。
お味噌汁のような作品です。
さてさて、今展では、こんな3点セットも紹介されています。
かつて山﨑種二によって、玉堂と横山大観、川端龍子の3巨匠が、
松・竹・梅の3つのモチーフをそれぞれ担当して描く “松竹梅展” が開催されたのだそう。
(モチーフは回ごとに変わり、全3回開催されたとのこと)
これらは、その時に出展された作品です。
どの作品もそれぞれ味わい深かったですが。
個人的な感想を言えば、このサイズ感だと、
大観と龍子の良さがそこまで出ていないような。
派手すぎず実直な玉堂の作風は、
むしろ、このサイズ感があっているような。
他の2巨匠と比べることで、玉堂の真価に気が付くことが出来ました。
事実、玉堂が残した風景画のほとんどには、
富士山や松島のような、いわゆる絶景は描かれていません。
どこにでもあるような風景。
誰もが見たことがあるような風景ともいえましょう。
そして、作品の多くには、日々の営みをする人が描き込まれています。
日常の何気ないシーンを丁寧に描く。
ダイナミックでスケールの大きな絵を得意とした大観や龍子とは真逆の作風です。
しかし、そんな玉堂ですが、今展の出展作品の中に、
1点だけ、ダイナミックでスケールの大きな作品がありました。
川合玉堂 《松籟涛声》 1929(昭和4)年 絹本・彩色 個人蔵
こちらは個人蔵の作品で、今回山種美術館で初めて披露される貴重な一枚です。
なんでも昭和5年にイタリアで開催された展覧会、
“ローマ日本美術展覧会” の出品作として描かれたものなのだそう。
普段は穏やかな玉堂も、やはり海外に打って出るときばかりは、気合が入ったのでしょう。
「大海原へ、いざ出航!」 のような気概を感じる一枚でした。
ちなみに。
日本の風景を描いた作品以外では、
玉堂による書の作品もまとめて紹介されていました。
書はよくわかっていないのですが、
この字には、穏やかな人柄が現れているのでしょう。たぶん。
「文字が崩されすぎてて、読めないっ!」 と放り投げだしたいところですが。
そろそろ大人として、書の一つくらい読めるようになりたいもの。
そこで、こちらの書と向き合ってみることにしました。
・・・・・・・・・・・・・・。
ダメだ。『リンク』 しか読めないや (汗)
また、今展では、玉堂が描いた生き物の絵も紹介されています。
ウサギに猿に、可愛らしい動物が多々いましたが。
すべての出展作品の中で、
もっとも可愛かった生き物は、玉堂の作品ではなく。
玉堂の師・橋本雅邦が描いた 《松林山水》 (写真右)の・・・・・
表具に登場する麒麟たちでした。
乱世が穏やかになった時、
世を収めた王のもとには、こいつらがやってくるのですね。
可愛すぎんだろ。