ルノアールを筆頭に、モネ、ゴッホ、シャガール・・・と、
街を歩いていると、時に、美術界の巨匠たちと同じ名前のお店に出くわします。
果たして、それらのお店と巨匠との間に関係はあるのか??
気になるようで気にならない。
でも、気にしてしまったら、気になって仕方がない。
そんな疑問を解消すべく、アートテラーは今日も店へと赴きます!!
靖国神社前の靖国通りを1本入った静かな通りに、その店はありました。
店名は、牧谿。
日本の絵師たちがこぞって模写したという中国の水墨画家です。
長谷川等伯が模写したことでも知られる、
大徳寺に伝わる 《観音猿鶴図》 は、国宝に指定されています。
また、畠山記念館が所蔵する 《煙寺晩鐘図》 と、
根津美術館が所蔵する 《漁村夕照図》 も国宝ですが、
その2点に関しては、正確には、「伝牧谿」 として指定されています。
伝レベルでも、国宝指定。
つまりは、それくらいにスゴい絵師というわけです。
・・・・・・ただ。
日本美術界、それも古美術界では、知名度抜群ですが。
一般的には、知名度はほぼ0に近い気がします。
そもそも、“もっけい” と読める人が、どれくらいいるのでしょう??
というか、この看板をパッと見て、
「牧谿」 が店名だと誰が思うのでしょうか??
この時点で、だいぶクセが強めですが、
牧谿のクセの強さは、まだまだこんなものではありませんでした!
店内はカウンター席が7席。
和食の小料理屋のような感じです。
まずは、ビールを注文。
条件反射のように、「生1つ」 と言いそうになりましたが、
この牧谿には、スーパードライとかキリンビールとか、普通の銘柄はありません。
和歌山の平和クラフトや茨城の鹿島パラダイスなど、品揃えもクセが強いです。
運ばれてきた平和クラフトのホワイトエールを飲みながら、オーダーを決めることに。
メニュー表に目をやると・・・・・
そこには見慣れぬど料理名がズラリと書かれていました。
何にも想像がつかない!
食べログに記載されていた情報では、
「ジャンル:居酒屋、カレー」 となっていましたが。
そんなわけはありますまい。
詳しいレビューを見てみると、どうもこちらのお店は、
南インド料理と中国料理を独自に解釈したスパイス料理店なようです。
確かに、厨房にはスパイスがいっぱいでした。
とりあえず、勘を頼りに3品オーダーしてみることに。
料理が運ばれてくる間に、恒例の店内チェック。
果たして、牧谿の水墨画はあるのか?
結論から言えば、牧谿はありませんでした。
あったのは、謎の抽象画。
牧谿の影響はみじんも感じられない抽象画でした。
さてさて、料理が完成したようです。
まず運ばれてきたのは、ニラミン玉。
ニラと玉はわかりますが。
「ミン」 って何よ?
ちなみには、牧谿は宋の絵師。
明 (みん) の絵師ではありません。絶対関係ないけど。
何はともあれ、ニラミン玉を一口。
ニラのパンチ力のあとに、爽やかな風味がやってきました。
鼻から抜けるこの清涼感は・・・・・あっ、ミントだ!
ニラ玉とミント。
初体験の組み合わせでしたが、意外とマッチしていました。
続いて運ばれてきたのは、
ジャスミン茶羊脳ペーストミントチャパティ付です。
羊の脳みそ自体初めて食べましたが、
食感は、どこか蟹みそに近いものがありました。
味はフォアグラに近いかも。
ジャスミン茶と合わさっていることで、臭みは一切感じられませんでした。
美味しゅうございました。
3品目は、鯖レモングラスバナナリーフ焼です。
鯖×レモングラス×バナナリーフ。
味の想像がまったくつかなかったのですが、
食べてみると、絶妙にそれぞれが調和していました。
白身魚の香草焼みたいな感じでしたね。白身じゃないけど。
ちなみに、ビール以外に、日本酒も充実していました。
スパイス料理に日本酒が合うのだろうか、と気になったのですが、
セレクトされている日本酒は、どれも一癖も二癖もあるものばかり。
むしろ日本酒自体がスパイシーな味。
何種類か頂きましたが、どれも料理に負けていませんでした。
さてさて、続いて頼んだのは、
ウーロン豚咖喱とインド米です。
インド米は初体験。
その食感は、モチモチでもパサパサでもなく、シャクシャクでした。
その不思議なシャクシャク食感に、
ウーロン茶の風味がかすかに香るスパイシーなカレーがマッチ。
クセになる味でした。
この時点でお腹いっぱいだったのですが、
どうしても気になるメニューがあったので、最後にそれを頼んでみることに。
謎の発酵スープです。
これまでのメニューも、だいぶ謎でしたが。
そんな料理を出すお店が、「謎」 と名付ける謎のスープ。
恐る恐る、口に運んでみました。
ん?!これは・・・・・!
何味かわからん!!
酸味があり、辛味もあり、
野菜の甘みのようなものもあり、魚介の旨味もあり。
複雑すぎて、舌と脳が理解できませんでした。
初めて出会う世界に、カウンターパンチを喰らった感じ。
完全なるカルチャーショック。
牧谿の水墨画を初めて目にした日本人もきっとこんな感覚だったのでしょう。
(↑無理やり結び付けてみた)
その後、探り探り食べ進めましたが、
結局最後まで、何味なのかわからず。
謎は謎のまま。
多くの謎を残したままラストを迎えました。
クリストファー・ノーラン映画のように。
ちなみに。
メニュー名はスープとなっていましたが、
中にはゴロっと白身魚が一切れ入っていました。
ほぼ魚料理でした。
スープというか、伝スープ。
<お店情報>
牧谿
住所:東京都千代田区九段南3-8-2 ライオンズマンション九段第二 1F
定休日:月曜日、日曜日
営業時間:18:00~22:00
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