現時点で日本一高いビル、あべのハルカス。
その16階にあるのが、あべのハルカス美術館です。
美術はもちろん、空中庭園からの眺めも楽しめるとのことでしたが・・・。
訪れた日は、あいにくのお天気。
スカイビューは諦めて、美術鑑賞に専念することにしました。
現在、開催されているのは、
世界で唯一、家名がそのまま国名となっている一族。
リヒテンシュタイン侯爵家が500年以上に渡って、
蒐集し続けた秘蔵の美術品のうち約130点を紹介する展覧会です。
2019年に、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されたのを皮切りに、
宇都宮美術館や宮城県立美術館、広島県立美術館など日本全国を巡回。
あべのハルカス美術館は、その最終会場となるようです。
この展覧会自体は、2年前にBunkamuraザ・ミュージアムで観ています。
あの頃は、このようにまとまった形で、
海外のコレクションが日本で観られるのはざらだったので、
その部分にはあまり有難みを感じられませんでしたが。
やはりアフターコロナ後ともなると、
西洋の美術品に四方を囲まれるだけで、感動もひとしお。
久しぶりに王道な西洋美術の展覧会を堪能しました。
さてさて。
2年ぶりともなると、記憶は薄れているもの。
ほぼ初見な感じで楽しむことが出来ました (嬉しいような悲しいような)。
印象に残った作品を、いくつかご紹介いたしましょう。
まずは、ヨーゼフ・ノイゲバウアーの 《リヒテンシュタイン侯フランツ1世、8歳の肖像》 から。
8歳とは思えぬ完成された顔立ち。
そして、すでに憂いのようなものも帯びています。
さすがは貴族。
なんとなく勝手なイメージですが、
萩尾望都さんの漫画に出てきそう。
絵画以外にも、磁器も多くコレクションしていたリヒテンシュタイン家。
今展にも磁器の作品が数多く出展されていましたが、
その中でも特に印象的だったのが、《黒絵ダルメシアン母子置物》 です。
一般的なダルメシアンと比べたら、
白地 (?) に対して、黒の部分の割合が大きいような。。。
ダルメシアン柄というよりは、うずらの卵。
もしくは、視力回復に効果がある3Dアートのよう。
磁器と言えば、こんな作品も。
景徳鎮の 《染付花鳥文金具付水柱》 です。
実は、こちらは、当時、金と等価とされるほど高価だった東洋の磁器を、
さらにゴージャスにするべく、イギリスの細工師にカスタムさせたものなのだとか。
ゴージャスなのは伝わってきますが、
いまいち景徳鎮と金具が合っていないような、
というか、お互いが高めるどころか、打消しあっているような。
庶民の僕には、貴族の考えることがよくわかりませんでした。
最後に。
妙に気になった聖母子像2連発をお届けいたします。
1点目は、マルコ・バザイーティの 《聖母子》。
マリアに無理やりポーズを取らされる幼いキリスト。
“いや、俺、フィギュアじゃねぇし・・・”
そんな感情が、顔にダダ洩れしています。
2点目は、セバスティアーノ・マイナルディによる、
《洗礼者聖ヨハネと天使二人といる聖母子》 という作品。
マリア様が、幼い聖ヨハネのあごを雑に持ち上げています。
「あんた、うちの子、イジめたんだって?あ?」
とでも言っているかのよう。
キリストの表情から察するに、おそらくそれは濡れ衣。
ウソの告げ口をしたものと推測されます。
その証拠に天使のうちの1人が、
“やれやれ、また始まったぜ” 的な顔をしています。
鑑賞していて、こんなにも心が休まらない聖母子像は初めてです。