現在、東京ステーションギャラリーでは、
“没後70年 南薫造” という展覧会が開催されています。
南薫造。
その3文字熟語のような字面だけ見ると、
日本酒や仏像の製法のように思えますが (←?)。
南薫造 (1883~1950) は、明治末から昭和にかけて、
文展や帝展など官展の中心作家として活躍した洋画家です。
現在の人間国宝の前身にあたる帝室技芸員に、
梅原龍三郎や安井曾太郎とともに認定されたほどの実力の持ち主。
しかし、その知名度に、大きな格差があるのは否めません。
というのも、実はこれまで、地元・広島以外では、
南薫造の大規模な回顧展が開かれたことがなかったのだそう。
今展は、没後70年にして初めて東京で開催される過去最大規模の南薫造展なのです。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
出展数は、実に200点以上 (前後期で一部入れ替えあり)!
それらの中には、若き日の留学先イギリス仕込みの水彩画や、
《うしろむき》 1909年 広島県立美術館 (注:展示期間は2/20~3/14)
文展や帝展に出品された代表作の数々も多数含まれています。
《六月の日》 1912年 東京国立近代美術館
展覧会のコピーには・・・・・
『まさに、ニッポンの印象派』 とありましたが、まさに、それ!
印象派の展覧会に展示されていても、
おそらく違和感を感じないであろうほどの印象派感がありました。
印象派の作品にインスパイアされて、
印象派っぽい見た目の絵を描いた日本の洋画家は少なくありませんが。
南薫造は印象派のエッセンスを自身に取り込んだ後に、
それをしばらく寝かせ、熟成させた上でアウトプットしたかのような。
表面的ではなく、内面から滲み出てくる印象派といった印象でした。
どの作品も、とても心地の良い絵なのですが。
あまりにも絶妙に心地よすぎて、
「いい絵だなァ」 としか形容しようがありません。
それゆえ、クセのある他の洋画家と比べて、
インパクトに欠け 、名前を覚えてもらえないのかも。
食べ物に例えると、優しいお粥のような作風の画家でした。
この展覧会を機に、南薫造の名前が浸透しますように。
ちなみに。
印象派があまり好きでないという方もご安心を。
『まさに、ニッポンの印象派』 な作品以外の作品も多々ありました。
例えば、自身の娘をモデルにした 《ピアノの前の少女》。
こちらは、『まさに、ニッポンのハマスホイ』 。
画題や構図はハマスホイを彷彿とさせますが、
ハマスホイの作品にうっすらと漂う寂寥感とは真逆で、
ほのぼのとした温かみが感じられる作品でした。
また例えば、収穫前のキャベツがたくさん描かれた 《高原の村の朝》 (写真左)。
こちらは、『まさに、ニッポンのシュルレアリスム』 。
一見すると、どこにでもあるような畑の光景ですが。
よく見ると、あぜ道に子供らしき人物が2人描かれています。
その2人分の大きさとキャベツの大きさがほぼ同じ。
化け物みたいなデカさのキャベツです。
最後に、特に印象に残った作品をご紹介いたしましょう。
まずは、スピッツの曲名にありそうな 《すまり星》 です。
《すまり星》 1921年 東京藝術大学
聞きなれない単語でしたが、
解説によると、すまり星とは、すばるの別名とのこと。
夜の光景を描いているのに、優しい明るさが感じられました。
まるで夜と昼が同居しているような。
マグリットの 《光の帝国》 を思わせる作品でした。
それからもう1つ印象的だったのが、
虫干しの様子が描かれた 《曝書》 です。
《曝書》 1946年 広島県立美術館
初めて目にするのに、以前どこかで目にしたことがあるような。
デジャヴを感じる一枚でした。
遠い昔、親せきの家を訪れた際に目にした光景か、
はたまた、キンチョーのCMか何かで目にしたシーンか。
ちなみに、よーく見てみると、
女の子の周りをオーラ的なものがうっすら包んでいました。
ニベアのボディウォッシュを流した後に包むボディミルク成分のような。
┃会期:2021年2月20日(土)~4月11日(日)
┃会場:東京ステーションギャラリー
┃http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202102_minami.html
┃※チケットは事前予約制
~読者の皆様へのプレゼント~
“南薫造展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、2月28日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。