美術界の春の風物詩。
岡本太郎現代芸術賞。通称TARO賞。
岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」 を問うための賞です。
国籍、年齢の制限はなし。
プロアマ問わず誰でも応募可能となっています。
さらには、表現の技法も一切制限なし!
高さ5m×幅5m、もしくは、奥行き5m以内であれば、平面でも立体でもOK!
まさに、美術界の異種格闘技戦のような公募展です。
ちなみに、コロナによりステイホームし、芸術活動する人が増えたからでしょうか、
今回のTARO賞には、昨年の452点を大きく上回る616点の応募があったのだそう。
そんな激戦をくぐり抜け、見事入選した作品が、
現在、川崎市岡本太郎美術館で一挙公開されています。
ただし、応募者は大きく増えたものの、
入選したのは、昨年より1名減って、たった24人 (組) 。
その中で栄えある岡本太郎賞を受賞したのは、
2003年生まれの高校3年生の大西茅布 (ちふ) さんでした。
M-1でいうところの霜降り明星 (←?)。
史上最年少受賞です!
略歴によると、11歳の時にフランスで美術研修したのこと。
なお、その年に、小学生として史上初となる独立展の入選を果たしたとのこと。
とてつもない才能の持ち主です。
そんな彼女の作品が、こちら↓
タイトルは、《レクイコロス》。
「レクイエム」 と 「コロナウイルス」 を組み合わせた造語だそうです。
コロナによって学校が休校になった昨年から半年をかけて描いた4枚と、
過去の作品51枚の絵画を組み合わせて、インスタレーションとして構成したとのこと。
むき出しの感情をそのまま投げつけられたような。
暴力的ながら、かつカリスマ性を感じる作風は、
Adoの 『うっせえわ』 を初めて聴いた時くらいの衝撃を受けました。
さて、準グランプリに当たる岡本敏子賞を受賞したのは、モリソン小林さん。
作品のタイトルは、《break on through》 です。
標本のように収められた植物が、
フレームの枠から飛び出し、壁や床一面に広がっています。
植物の生命力を感じずにはいられない。
このインパクトある光景を作り出していることだけでも、十分に驚きましたが。
さらに、驚かされたのが、この植物の正体。
植物みたいな姿してるだろ。
ウソみたいだろ金属なんだぜ。それで。
金属とわかった上で改めて観ても、植物にしか見えないから不思議です。
なお、今回、特別賞を受賞したのは5人。
その中で特に印象的だったのは、
唐仁原希さんの 《虹のふもとには宝物があるの》 という作品です。
西洋の古典絵画や現代のRPG、
児童文学やアニメ、『みんなのうた』 など、
さまざまなものがミックスされたような独特の世界観が確立されていました。
特に気になったのは、王子らしき人物が描かれたこちらの1枚。
お腹の部分をよーく見てみると・・・・・
ニベアらしきものをしのばせていました。
これだけファンタジックな世界でも、
保湿には魔法や薬草ではなく、ニベアが効果的なようです。
それと、もう1つ特別賞で印象的だったのが、
小野環さんによる 《再編街》 という作品です。
台座の上に乗っていたのは、
団地らしき建物群や室内模型のようなもの。
さて、突然ですが、ここで問題です。
これらのオブジェは一体何で作られているでしょう?
ヒントは、昭和の後期あたりに、多くの家にあったものです。
正解は、こちら。
百科事典や美術全集。
今ではインターネットが普及しているので、
すっかり場所だけを取る無用の長物となってしまいました。
そんな百科事典や美術全集を素材にしてアートを制作。
なんてサステナブルなのでしょう!
さてさて、会場には他にも、
岡本太郎現代芸術賞らしい作品が多数出展されていましたが。
個人的に一番ハマってしまったのが、
原田愛子さんによる 《餅田餅男の最期》 という映像作品です。
映像とは、作者本人が餅料理を作る様子が流れています。
一見すると、ただの料理動画のようなのですが、
そこに映し出されるテロップには、なぜか刑罰についての解説が。
例えば、『百敲きの刑』 のパート。
この映像では、小豆餅を作る様子が、
百敲きの刑に見立てて、紹介されています。
そんな刑罰を執行されたお餅が、こちらです。
他にも、釜茹での刑のお雑煮、串刺しの刑のみたらし団子、
火炙りの刑の磯部餅、生き埋めの刑のきなこ白玉などの映像がありました。
餅料理と刑罰を結び付けるそのセンスに思わず脱帽!
この発想はなかった。
嫉妬するレベルです。
ちなみに。
すあまは、引き廻しの刑とのこと。
すあまの作り方と引き廻しが全く結びつかなかったのですが。
この動画だけは、他の動画とはテイストが違いました。
購入したすあまを袋に入れて、
キックボードで市内を走り回った後に食べるという内容。
なんだそりゃ (笑)
なお、作家自身によるキャプションには、
すあまにだけ 「※」 があり、詳しく言及されていました。
とりあえずわかったのは、
原田さんがすあま好きだということ。
いや、知らんがな。