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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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3.11とアーティスト:10年目の想像

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現在、水戸芸術館 現代美術ギャラリーでは、

“3.11とアーティスト:10年目の想像” という展覧会が開催されています。

 

 

 

もう10年なのか。まだ10年なのか。

東日本大震災のあの日から、

まもなく10年の月日が経とうとしています。

 

東北地方ほど甚大ではなかったものの、水戸市も震災の影響は少なくなく、

水戸芸術館もパイプオルガンのパイプが落下・破損するなどの被害を被ったそうです。

その翌年の2012年には、震災を受けてアーティストが行った、

様々な活動を紹介する展覧会 “3.11とアーティスト:進行形の記録” が開催されました。

 

今回の展覧会は、その続編にあたるもの。

震災の記憶を現在へ、または、後世へ、

語り継ごうとする7組の作家の作品を紹介する展覧会です。

 

 

 

紹介されていた作品の数々を通じて、

何よりも実感させられたのは、復興はまだまだ終わっていないということ。

これは、本当に言い訳でしかないのですが。

現状、東京では、被災地の最新情報を知る機会がほとんどないため、

“報じられない=もうほとんど復興している” と、なんとなく思い込んでいました。

この展覧会を通じて、そういう辛い現実、悲しいニュースから、

自然と目を背けていただけだったことを突きつけられたような気がします。

3.11を忘れない。

そう誓ったこと自体を、忘れていたのではなかったか。

10年目という節目の年に、

大切なことに気づかせてくれた展覧会でした。

今こそ観るべき展覧会です。

星

 

 

また、ただ単に震災から10年ということだけでなく、

もう一つ、今こそこの展覧会を観るべき理由があります。

それは、10年前の放射能を巡る風評被害と、

現在のコロナ感染者に対する差別や偏見が、恐ろしく似通っているということ。

 

こちらは、高嶺格さんによって制作された、

《ジャパン・シンドローム水戸編》 という2012年の映像作品です。

 

 

 

シンプルな舞台上で演じられていたのは、

食料品店や飲食店などで、放射能の影響について客と店員が交わすやり取り。

どの寸劇にも、その根底には、目に見えない放射能に対する不安がありました。

実は、これらのやり取りは、原発事故後に、

客と店員との間で実際に交わされていた対話を、そっくり再現したものなのだそう。

『放射能』 という言葉を 『コロナ』 に置き換えたら、

現在の会話としても、まんま成立する感じだったのが印象的でした。

時代が10年経っても、人というのは、何一つ進化していないのでしょうね。

こんな時だからこそ、過去の災害から学ぶ必要があるのではなかろうか。

 

 

さてさて、全体的には、ドキュメンタリータッチの作品が多かったですが。

中には、このような絵画作品も。

 

 

 

パッと見、震災とは関係ないような気がしますが。

 

 

 

よく見ると、どの絵にも、帰還困難区域と、

そうでない区域を隔てる境界線が描き込まれていました。

作者は、震災以降、福島を何度も取材しているという加茂昂さん。

モチーフがモチーフだけ、こんな感想は適切でないのでしょうが。
絵画としては、純粋に美しいと感じました。

しかし、そう感じるのは、所詮この地と関係ない人間だからなのかと。

この地に住んでいた皆様にとっては、そんな単純な感想ではないはずです。

報道で知ることも、もちろん大事なのですが、

アート作品を通して想像する、思いを巡らすのも、

同じくらい大事なことだと、改めて考えさせられました。

 

 

ちなみに。

今回の展覧会のラストを飾るのは、

Chim↑Pomが立案者となった “Don’t Follow the Wind” です。

 

 

 

“Don’t Follow the Wind” とは、

2015年3月11日より開催されている展覧会。

アイ・ウェイウェイや宮永愛子さんをはじめ、

国内外12組のアーティストが参加しています。

会場となっているのは、帰還困難区域内のとある民家。

当然、規制が解除されるまで、

実際の展覧会を観覧する事はできません。

水戸芸術館では、そんな展覧会の出品作品の一部や関連作が展示されていました。

 

 

 

 

その中で特に心に・・・いや、耳に残ったのが、

グランギニョル未来の 《グランギニョル未来2020》 という映像作品です。

 

 

 

映像の内容よりも何よりも。

グランギニョル未来のメンバーの一人、

山川冬樹さんらしき人物が、独特のイントネーションで、

 「ごめ~ん。ごめ~ん」 と連呼するのが気になって仕方ありませんでした。

あまりに耳に残りすぎて、それまで観た作品の印象がすべて吹っ飛んでしまったほど。

いや、「ごめ~ん」 で済むか!

 

 

 

 

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