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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-

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2017年、2018年と立て続けに、加島美術で展覧会が開催され、

日本美術ファンの間で、ネクストブレイク間違いなしと話題になっていた渡辺省亭。

その公立美術館では初となる展覧会、

“渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-” が、

この春、東京藝術大学大学美術館で開催されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

藤田嗣治、梅原龍三郎、佐伯祐三、岡本太郎…etc

パリに渡った日本の芸術家は数多くいますが、

実は、日本画家として初めてパリに渡った人物こそが、今展の主役である渡辺省亭です。

しかも、パリではドガをはじめ印象派の画家たちとも交流したのだそう。

ドガの目の前でサラサラッと絵を描いてみせ、

それをプレゼントしたところ、ドガは終生その絵を大切に保管していたとのことです。

その貴重な作品が、こちら↓

 

《鳥図(枝にとまる鳥)》 1878(明治11)年 紙本淡彩 一面 クラーク美術館 Clark Art Institute. clarkart. edu

 

 

左下には、『ドガース君』 との文字が見て取れます。

ドガではなく、ドガース。

なんだかポケモンのキャラみたいになっていますが、

Degasという綴りを目にして、「-ス」 を足してしまったのかもしれませんね。

 

と、それはともかく。

この貴重な作品が、今展のために初来日を果たしています!

 

 

 

しかも、メトロポリタン美術館が所蔵する省亭作品も初来日!

 

《百舌鳥に蜘蛛図(花鳥魚鰕画冊)》  絹本着色 一面(全二十一面のうち) メトロポリタン美術館

 

 

さらに、海外組だけでなく、

美術館や個人が所蔵する国内の省亭作品も数多く出展されています。

 

 

 

まさに、満を持しての渡辺省亭展!

日本美術ファンならずとも、

美術ファンであれば、是非抑えておきたい展覧会です。

星星

 

 

国内外から渡辺省亭の名品を集めてきた。

それだけでも今回の展覧会の本気度が伝わってきましたが。

さらに、会場の造作にもその本気ぶりが表れていました。

展示壁を作って、そこに作品をダーッと並べる、

というような、よく見かける展示スタイルではなしに。

最後の展示室では、特注の展示ケースに、

掛け軸の作品を1点ずつ展示するスタイルが採用されていました。

 

 

 

このおかげで、“その他大勢の作品のうちの1つ” ではなく、

1つ1つが特別なオンリーワンの作品のように感じられました。

 

《牡丹に蝶の図》  1893(明治26)年 絹本着色 一幅 個人蔵 

 

《春野鳩之図》  絹本着色 一幅 加島美術

 

 

って、そもそもこの展示室に飾られていた、

《牡丹に蝶の図》《春野鳩之図》 も特別なオンリーワンの作品なのですが。

 

また、こちらの作品の展示スタイルも、

思わず拍手を送りたくなるくらい素敵でした。

 

迎賓館赤坂離宮・七宝額原画 《山翡翠・翡翠に柳》 

絹本着色 一面(全三十図のうち) 東京国立博物館 Image : TNM Image Archives

(注:展示は前期3月27日(土)~4月25日(日)のみ)

 

 

こちらは、国宝の迎賓館赤坂離宮にある豪華なお部屋、

花鳥の間を飾るための七宝額の原画として描かれたもの。

それゆえ、花鳥の間をイメージした特別な展示壁に飾られていました。

 

 

 

これは良き展示!

もともと素敵な作品ですが、

この壁のおかげで、さらに魅力的に感じられました。

ちなみに、赤坂離宮にある実物はパネルで紹介されていましたが、

濤川惣助が制作した七宝額は、省亭の原画とまったく遜色のない仕上がり。

濤川惣助の実力に唸らされたのはもちろん、

こんなにも微妙すぎるほどグラデーションを再現させようとした、

省亭のドSぶり (?) にも唸らされました。

 

 

最後に。

今展で特に印象的だった作品をご紹介いたしましょう。

まずは、写真左の 《群雀ノ図》 です。

 

 

 

加島美術での展覧会でも一度目にしていますが、

やはり改めて観ても、インパクトの強い一枚でした。

スズメをモチーフにした絵史上もっともゾワっとする作品ではなかろうか。

スズメというか、もはや蛾のたぐいに見えました。

 

続いて紹介したいのは、《月夜木菟》 という一枚。

 

《月夜木菟》  絹本着色/一幅/個人蔵

 

 

ミミズクやフクロウをモチーフにした絵も数多くありますが。

この 《月夜木菟》 ほどミミズクがダンディに描かれた絵を僕は知りません。

見れば見るほど、ショーン・コネリーに見えてきました。

 

 

展覧会のタイトルには、“花鳥画” とはありますが、

今展では、省亭が描いた美人画や風俗画も紹介されています。

その中で印象に残っているのが、《塩冶判官の妻》 (写真左) です。

 

 

 

↑この写真ではうまく伝わらないですが、

塩冶判官の妻のヘアスタイルがとにかく変。

サングラスをおでこにかけたみたいなヘアスタイルとなっていました。

ちなみに、写真右に飾られているのは、《室積遊女長》 という作品。

象の描写がとにかくリアル。

シワシワまで余すことなく描いていました。

 

 

 ┃会期:2021年3月27日(土)~5月23日(日)
 ┃会場:東京藝術大学大学美術館
 ┃https://seitei2021.jp/

 

 

 


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