創建100年を記念して昨年より、
明治神宮で開催されている芸術と文化の祭典。
それが、“神宮の杜芸術祝祭”。
現在、そのフィナーレを飾る展覧会、
“気韻生動−平櫛田中と伝統を未来へ継ぐものたち” が開催中です。
その舞台となるのは、明治神宮宝物殿。
平成29年より長期にわたる修復工事を行っていましたが、
修復し終えたばかりの姿が、今回の展覧会で初めてお披露目されています。
それだけでも十分に貴重な機会なのですが。
さらに貴重なのが、大正10年に竣工されて以来初めて、
明治天皇・昭憲皇太后の御物以外のものが展示されているということ。
宝物殿内では、明治天皇が生前に実際に購入された 《唱歌君が代》 を筆頭に、
100歳を越えてなお創作活動を続けた彫刻家・平櫛田中の名品の数々が展示されています。
それに加え、その平櫛田中をリスペクトする現代アーティストの作品も展示されています。
明治神宮宝物殿で、現代アート作品が展示されるのが初めてなら、
そもそも、この空間を使って現代アートの展覧会が開催されるのも初めて!
初めて尽くしのエポックメイキングな展覧会なのです。
そんな歴史的な展覧会だけに、
参加している現代アーティストは超豪華!
舟越桂さんに、
宮島達男さんに、
澄川喜一さんに、
名和晃平さんに、棚田康司さんに、土屋仁応さんに…etc
ベテランから超人気アーティストまで、
アカデミー賞の授賞式ばりの豪華なメンバーが顔を揃えていました。
彫刻作品、立体作品部門の日本代表選手が、
ほぼ全員参加していると言っても過言ではありません!
そんな彼らの作品が、明治神宮宝物殿の空間で観られる。
さらには、宝物殿竣工時に作られた歴史ある展示ケース内で観られる。
二重にも貴重な展示スタイルです。
見逃すと一生後悔するかも。
しかも、入場は無料!
内容が濃すぎるゆえ、さすがに申し訳なさ過ぎて、
お賽銭を普段より気持ち弾んでしまうほどの展覧会でした。
ちなみに。
どの作品も印象的でしたが、特に印象に残っているのは、
金沢に拠点を置くクリエイティブ集団seccaによる 《A↔︎UN》 です。
モチーフとなっているは、もちろん一対の狛犬。
ジグソーパズルのようなピースが組み合わさって、全体が形作られています。
さてさて、このピース。
一見すると、木材のように見えますが・・・・・・・
実は、木材の風合いを再現した “擬木” なのだそうです。
ピクセル感、サイバー感溢れる狛犬の姿。
展示ケース内に設置されたミラー。
そして、木のようで木でない素材。
目の前に作品があるにも関わらず、
なぜか虚像のように感じられる不思議な味わいの作品でした。
虚と言えば、こちらの展示ケースも。
空虚にもほどがあるので、
作品を入れ忘れたのかと、一瞬心配になりましたが。
三沢厚彦さんによるセミをモチーフにした木彫作品と、
須田悦弘さんによるオオイヌノフグリをモチーフにした木彫作品が展示されていました。
展示ケースに対して、
2人の作品の大きさは揃って控えめ。
ただ、やってることは、かなりトリッキー。
あえてお笑いに例えるなら、
4分の出番に対して、1発ギャグを1発だけやるような感じです。
メンタル、強っ!
ちなみに。
今展には、彫刻・立体作家だけでなく、
小林正人さんと原良介さん、2人の画家も参加していました。
鑑賞中、何気なく小林正人さんの作品の裏側に回ってみると・・・・・
キャンバスの裏にシャベルがくっついていました。
“なぜシャベル??”
疑問に思って、その先端を観てみると・・・・・
茶色く汚れているではないですか。
勘の良い方なら、ピンと来たかもしれません。
実は、この絵画は、絵筆でなく、
このシャベルで描かれたものなのだそうです。
あー、なるほど。だから、シャベルが裏側にあったわけですね!
“・・・・・・・・で。なぜシャベル??”
結局、疑問は解決していません。