「絵とことば」 をテーマにする美術館PLAY! MUSUEMで、
現在開催されているのは、“みみをすますように 酒井駒子” という展覧会。
『よるくま』 や 『きつねのかみさま』、 『ぼく おかあさんのこと…』 などなど、
数多くの人気絵本で知られる酒井駒子さんの初となる大規模な展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は一部可能。この記事に使われている写真は特別に許可を得て撮影したものです。)
その絵本は海外でも評価が高く、『金曜日の砂糖ちゃん』 は、
世界最高峰の絵本原画展、ブラティスラヴァ世界絵本原画展で金牌賞を受賞。
また、2005年に出版された 『ゆきがやんだら』 は、
ニューヨーク・タイムズの 「2009年の子供の絵本最良の10冊」 にも選ばれています。
会場では、そんな酒井さんの代表的な絵本から厳選された約200点の原画が、
「ある日」 や 「くらやみ」 「こども」 といった6つのキーワードに分けて紹介されています。
今回の展覧会で何よりも特筆すべきは、その会場デザイン。
担当したのは、京都を拠点に活動する気鋭のフランス人建築家ユニット・2m26です。
酒井駒子さんの世界観を最大限に引き出すべく、
人工的な素材をなるべく使わず、自然素材を使うことにこだわったのだそう。
展示に使われている木材のフレームや、
木材を使った壁掛けの展示ケースは、すべて今展のためのオリジナル。
“もともとこういう風に飾られていたのでは?”
と思ってしまうくらいに、めちゃしっくり来ていました。
さらに、目と心を奪われたのが、林を想起させるようなこちらの展示ケース。
酒井さんの原画に、なるべく (物理的に) 近づいて観て欲しい。
そこから、この覗き込むスタイルの展示ケースを発想したのだそうです。
高さはあえてバラバラに設定しているとのこと。
それゆえ、モノによっては、中腰になったり、しゃがみ込んだり。
気づけば、まさに “みみをすますように” 作品に近づく自分がいました。
今までにない鑑賞体験です。
なお、中には、かなり高さがあるものも。
さすがにこの展示ケースは、
身長が2m26ないと覗き込めないだろ・・・・・と思いきや。
裏に回ったら、内部が展示ケースとなっていました。
このパターンもあるのですね。
あやうくジャンプするところでした (←?)。
ちなみに、中に入っているのは、
酒井さんの所有するオブジェだそうです。
さてさて、見たことがない展示ケースが多すぎて、
そこばかりに、ついつい目が向かいがちでしたが。
もちろん展覧会の主役は、酒井駒子さんの原画です。
印刷されたときには抜け落ちてしまうような、
絶妙なニュアンスの魅力が原画にはあります。
まるで小さく震えているかのような。
繊細ではかなげな原画はどれも、
愛おしさを感じずにはいられませんでした。
それに加えて、原画にはちょっぴり切ない感じもあり。
柔らかさの中に包まれた芯の強さのようなものも感じられました。
恋しさとせつなさと心強さと。
酒井さんの原画には、その3拍子が揃っています。
観れば観るほど、心が洗われました。
酒井駒子さんの原画を観れば、
自然と優しい気持ちになれるはず。
ストレスや不安を抱えている人にこそオススメしたい展覧会。
いろいろデトックスできますよ。たぶん。