■ナチスの愛したフェルメール
監督・脚本:ルドルフ・バン・デン・ベルグ
出演:ユルン・スピッツエンベルハー、リゼ・フェリン
2016年製作/115分/オランダ・ベルギー・ルクセンブルク合作
1945年5月29日、オランダの画家メーヘレンが、
ナチス国家元帥ゲーリングにフェルメールの絵画を売った罪で逮捕される。
ナチス協力者及びオランダ文化財略奪者として、
長期の懲役刑を求刑された彼は、「全て自分が描いた贋作だ」 と驚きの事実を告白する。
時は遡り1920年代、若き画家メーヘレンは自身の作品を、
レンブラントやフェルメールら古典派の画風の継承だと批判されてしまう。
自分が描いた贋作を “本物” として流通させ、
批評家たちを見返してやろうと考えたメーヘレンは、
独自の工夫を凝らして研究家をも認めさせる贋作を生み出していくが……。
(映画.comより)
「これまで芸術家を主人公にした映画は数多く観てきましたが。
実在の贋作者の生涯を描いた映画に、初めて出合いました。
主人公は、“20世紀最大の贋作者” と呼ばれるハン・ファン・メーヘレン。
フェルメールの贋作をつかませ、
ナチスに一泡吹かせたことから、英雄視された人物です。
この一件はもちろん知っていましたが、
どうしてメーヘレンが贋作者となったのか。
その闇落ちの理由を知らなかったので、興味深く拝見しました。
・・・・・・・が、しかし。
『パルプ・フィクション』 や 『メメント』 を意識したのか、
時系列がバラバラのため、ストーリーがなかなか頭に入ってきませんでした。
(特に映画の前半!)
なお、メーヘレンが贋作者となった理由は、
自分を貶した美術評論家に復讐を果たすため、というもの。
フェルメールの真作だと鑑定させた上で、
「実は、自分が描いたものだ」 と告白するつもりだったのだとか。
なんと小さい理由なのでしょう!
しかし、それよりも、何よりも。
メーヘレンが復讐を誓う美術評論家の妻を演じるリゼ・フェリンの美しいこと美しいこと。
メーヘレンが主人公の映画であるにも関わらず、完全にメーヘレンを食っていました。
日本版のDVDのジャケットなんて、リゼ・フェリンしか登場してませんし。
ちなみに。
元の映画のビジュアルでは、ちゃんとメーヘレンも登場しています。
日本で紹介する際には、
メーヘレンは必要なしと判断されたのでしょうね。
映画史上最も影の薄い主人公かもしれません。
さてさて。
映画のストーリーは、ほぼ史実に基づくとありましたが。
リゼ・フェリンが演じた美術評論家の妻は、
実際には存在していたのか、かなり怪しいところ。
というのも、メーヘレンは彼女に想いを寄せており、
その証拠に、フェルメール風の贋作 《エマオの食卓》 に描かれた、
キリストの目は、彼女を意識して描いたと本人に告げるシーンがあるのですが。
実際の作品は、目を開けていません。
しかも、まぶたが厚め。
どう見ても、可憐な女性の目元には思えません。
なお、 ボイマンス美術館が約54万ギルダーで購入した 《エマオの食卓》 は、
現在は、フェルメールではなく、メーヘレンの作品として同館に所蔵されているそうです。
ちなみに。
映画の鑑賞後、気になって、
メーヘレンの贋作をいろいろ調べてみました。
どの作品も、本物のフェルメール作品にはほど遠かったです。
『格付けチェック』 の問題のほうが、よっぽど難しいですよ。
騙す方が100対0で悪いのは重々承知していますが。
これに関しては、騙される方も騙される方です。
(星3つ)」
~映画に登場する名画 (?) ~
《キリストと姦婦》