1970年に川島町に開館した遠山記念館。
日興證券の創立者・遠山元一が蒐集した美術品を展示公開する美術館です。
そんな遠山記念館では現在、
“特別展 遠山記念館の50年” が開催中。
こちらは、遠山記念館の開館50周年を記念して開催されるもので、
所蔵する重要文化財、重要美術品、名物を一挙公開する展覧会です。
(注:会期中、展示替えあり)
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
それらの中にはもちろん、
2019年の京博での展覧会にも出展された・・・・・
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 頼基像》 の姿も。
(注:展示は4/3~4/30まで)
また、源頼朝の数少ない自筆書状の1つや、
英一蝶の代表作とされる 《布晒舞図》 もあります。
さらには、重要美術品の青江正恒の刀や、
名物は名物でもただの名物ではなく、「大名物」 とされる 《文琳茶入 銘 玉垣》 も。
まさに蔵出し!
これほどまでに大盤振る舞いなのは、
開館して以来、初めての機会なのだとか。
ベスト of ベストの遠山記念館コレクション展です。
出展されていた作品の中で印象的だったものを、いくつかご紹介いたしましょう。
まずは、今回が初の全巻展示となる重要美術品 《遊行縁起絵巻》 から。
踊念仏でお馴染みの一遍上人、
またの名を、遊行上人の縁起を描いた絵巻です。
オリジナルのものは、おそらくどこかにあるとのこと。
こちらの絵巻は、それを模写したものなのだそうですが。
おそらく、そのオリジナルとは違って、
ユルいタッチになっていると考えられているそうです。
模写した絵師の腕が今一つだったのか。
はたまた、あえてヘタウマ風に模写したのか。
その真相は藪の中。
とりあえず、こちらの箇所に関しては・・・・・
結構な密が発生していました。
なんで、こんなギュウギュウに押し込められているのでしょう??
続いて印象的だったのは、江戸時代後期に、
大阪で活躍した文人画家・岡田半江の 《春靄起鴉図》。
19世紀中頃の作品とは思えないくらいに、
淡く絶妙なな色合いが鮮やかに残っていました。
グラデーションの繊細な美しさも目を惹きます。
蟻みたいな犬も可愛かったです。
ところで。
重要文化財や重要美術品の指定を受けていない、
無印 (?) の作品だって、見逃せないものばかりです。
例えば、黒田清輝の 《裸婦習作》。
こちらは、黒田清輝がフランス留学時代に描いた裸婦図とのこと。
例の腰巻事件を巻き起こすことになる 《朝妝》 や、
黒田の代表作 《智・感・情》 よりも遥か前に描かれたもの。
つまりは、日本最古級のヌード画です。たぶん。
その部分が評価されたならば、
いずれ重要文化財に指定されるかもしれません。
また、開館に出資したお礼に、碌山美術館から譲られたという、
荻原守衛 (碌山) の 《デスペア》 も、久しぶりに日の目を浴びています。
デスペア。すなわち 「絶望」 をテーマにした作品です。
完成にいたるまで、絶望的に時間がかかったといわれています。
碌山が叶わぬ恋心を抱いていた相馬黒光 (=新宿中村屋の創業者) が、
旦那の浮気に悲しみ、苦しんでいる姿をモチーフにしたという説もあるとのこと。
なお、この不思議なポーズは、
黒光の次女が泣く際にするポーズを参考にしたのだそう。
何もそんなに絶望的に泣かずとも。。。
なお、当時、この作品が出展された際には、
「あまりに卑猥すぎる!」 と炎上してしまったそうです。
どうやら、当時の人々にとっては、
このアングルからの眺めが卑猥に感じられたのだとか。
た、確かに・・・!!
そんな人々の批判に対し、碌山はこう笑い飛ばしたそうな。
「だったら、その部分に紙でも貼っておけ!」 と。
たぶん、そっちの方がエロいです。
ちなみに。
本来は昨年が50周年で、昨年開催される予定でしたが、
コロナのせいで、今年2021年の春に延期されたのだそう。
そんなタイミングでの東京での緊急事態宣言。
埼玉でのこの展覧会は、どうぞ無事に最終日まで開催を続けられますように。