諸橋近代美術館から車で約15分の距離にあるはじまりの美術館。
築約140年の大きな酒蔵をリノベーションし、
2014年に開館したアール・ブリュットを軸とする美術館です。
ちなみに、このはじまりの美術館という館名には、
「人々と美術が出逢うはじまりの場になって欲しい」 や、
「震災からの復興、新たなスタートを切る」 というような意味が込められているのだそう。
さらには、館名には、こんな意味もあるのだとか。
美術館のロゴの太字部分に、ご注目くださいませ。
なるほど!
“はじまり=START” という言葉には、
“ART” という文字が含まれているのですね。
さてさて、そんなはじまりの美術館で現在、
開催されているのは、“(た)よりあい、(た)よりあう。” という展覧会。
「頼る」「頼り合う」 をテーマにした展覧会で、
仙台に拠点を持つ3つの共同体からなるやわらかな土や、
スイスにあるアール・ブリュットコレクションに、
アジアでは初となる永久収蔵を果たしたみずのき美術館など、
全部で6人 (組) のアーティストの作家が紹介されています。
その中には、会津漆器のブランド 「めぐる」 も。
「めぐる」 は、心地よい肌触りや口当たり、
抱き上げたくなる優しいかたちを追求した漆器ブランドとのこと。
観客がそんな衝動に襲われても大丈夫なように (←?)、
実際に手に触れることができる漆器も展示されていました。
当たり前ですが、やきものを手に取る感覚で、
「めぐる」 の漆器を持ち上げてみると、その軽さに驚かされます。
そして、そのすべすべつやつやした触り心地に、癒されること必至!
「めぐる」 が追求した優しいかたちに、
優しい気持ちにさせられること請け合いです。
ちなみに。
会場内には、漆器づくりの工程を描いたイラストがいくつも展示されていますが。
これらのイラストは、2020年のVOCA展で、
大原美術館賞を受賞した浅野友理子さんの手によるもの。
現在も絶賛取材中だそうで、会期中にイラストが増える可能性もあるそうです。
今回紹介されている6人 (組) の中で、
個人的に特に印象に残っているのが、笑達 (しょうたつ) さん。
似顔絵作家として、京都で約18年間、路上で活動していたそうですが。
昨年2020年に和歌山県へ移住。
土地に息づく風土や霊性に導かれ、
このような古代壁画を想起させる絵画を描き始めるようになったそう。
初めて観るのに、どこか懐かしい。
いな、どこか超懐かしい。
前前前世の記憶を呼び戻されるような絵画作品ですした。
続いて印象的だったのが、平野智之さん。
東京都町田市にある 「クラフト工房 La Mano」 に所属する作家です。
彼は、施設職員の美保さんをモチーフにした作品を制作しています。
平野さんにとって、美保さんなる人物はまさにミューズ。
美保さんが施設を辞めた現在も、
美保さんシリーズは制作し続けられているそうです。
展覧会では、そんな平野さんによる 『美保さん絵かき歌』 も紹介されていました。
途中までは、オーソドックスな絵かき歌でしたが・・・。
フィニッシュの2フレーズがなかなかのカオス!
味はおとめ風??
すじをしいたら??
最後の最後で、美保さんを見失ってしまいました (←?)。
展覧会の会場はもちろんのこと。
カフェ兼フリースペースも穏やかな空気が流れていた、はじまりの美術館。
良い意味で美術館らしくない、ゆったりとした時間が流れる空間でした。
居心地の良さに特化したら、日本の美術館でトップクラスです。
ちなみに。
そんな居心地の良いはじまりの美術館の中でも、
ダントツに居心地が良かったのが、こちらの一角。
その名も 《けんじの部屋》 です。
出展作家の一人であるしらとりけんじさんによる
インスタレーション作品、あるいは滞在プロジェクトです。
こちらの人物が、そのしらとりけんじさんご本人。
しらとりさんはこれまで、現在住んでいる水戸を拠点に、
全盲の美術鑑賞者 「白鳥建二」 として美術館で鑑賞を行なってきたのだそう。
今展には、ひらがな表記でアーティストとしての参加しています。
期間中は、水戸から郡山に完全移住しているとのこと。
美術館が開館している間は、
基本的には常に、この 《けんじの部屋》 に滞在しているのだとか。
なお、《けんじの部屋》 の天井を見上げると、
彼が約15年撮影してきた約40万枚の写真が投影されています。
しらとりさんはとても穏やかな方で、
話しかけると、何でも優しく答えてくれました。
是非、訪れる方は、写真を眺めながら、
しらとりさんとの会話もお楽しみくださいませ。
ちなみに。
《けんじの部屋》 には大量のお酒がありました。
けんじは、かなりのお酒好き。
最後に。
はじまりの美術館のすぐ近くで、
こんなグラフィティを発見してしまいました。
まさかバンクシーが郡山に?!