現在、板橋区立美術館では、
“館蔵品展 はじめまして、かけじくです” が開催されています。
こちらは、絵本、池袋モンパルナスと並んで、
板橋区立美術館の3本柱となる江戸美術をテーマとしたもので、
その中でもさらに、「かけじく」 に焦点を当てた展覧会となっています。
それゆえ、会場には掛軸の作品がズラリ勢ぞろい。
1点モノの掛軸 (?) もあれば、
2点や3点でワンセットとなっている対の掛軸も紹介されています。
さらには、普段の展覧会ではなかなか目にすることができない、
掛軸を保管するための箱や同封されている書状も特別に展示されています。
ちなみに。
一見すると、ただの木の箱に思えますが。
質の高い箱は、寸分狂わず制作されているため、
仮に水の中に入れても、内部に一切水が入ることはないのだとか。
名もなき江戸の箱職人の超絶技巧があったからこそ、
こうして令和の時代に、当時と同じような状態で掛軸を鑑賞することができるのですね。
また、展覧会では、詳細なパネルで、
掛軸の各部分の名称や作り方なども紹介されています。
さらに、掛軸作りに欠かせない道具や材料の数々も。
これまで掛軸は数えきれないほど観てきましたが。
この展覧会を通じて、掛軸について知ってるようで、
実は知らないことだらけだったことを痛感させられました。
なお、この展覧会を観ると、絵そのものよりも、
その周囲の軸装に目が向いてしまうこと必至です。
例えば、川村碩布の 《群亀図》 という作品。
画面全体に亀がぎっしりと描かれており、
普段の自分であれば、間違いなくそこばかり注目してしまうはずですが。
作品の横に、こんな紹介があったので・・・・・
無数の亀よりも、総縁や筋廻し、
一文字のほうを真剣に観てしまいました。
他の作品もまた然り。
普段以上に、軸装がどうなっているのか気になってしまいました。
まさに “はじめまして” な感覚です。
印象的な軸装は多々ありましたが、一番印象に残ったのは、
江戸幕府御用絵師も勤めた狩野章信の 《内裏雛図》 の軸装。
クッキーの缶や紅茶の缶にありそうな、
なんとなくイギリスっぽい洋風なデザインです。
お雛様というモチーフとは、あまりあっていないような・・・・・とそれはさておき。
実はこちらは、そういう柄の布ではなく、
すべて手描きされたものなのだそうです。
よくもまぁ。
ちなみに。
今展は、館蔵品展ということで、
入場料がなんと無料となっています!
無料ということは、二軍メンバーで構成されているのでは?
そう疑っている方もしれませんが。
いえいえ、英一蝶や河鍋暁斎をはじめ、
酒井抱一、鈴木其一、柴田是真といった、
江戸美術のスター絵師の作品が数多く紹介されています。
また、伝 佐竹曙山や小田野直武といった、
秋田蘭画の作品も少なくない点数が出展されており、
王道の狩野派から奇想派まで、
さまざまなタイプの江戸美術を堪能することができます。
さらに嬉しいことに、写真撮影もOK!
なんとも太っ腹な展覧会です。
最後に。
今回の出展作品の中で一番インパクトがあった作品をご紹介いたしましょう。
インパクトが強すぎて、他の作品の印象をすべてかっさらってしまうくらいの迫力がある作品。
作者不詳の 《蘭人少年像》 です。
山田孝之に似た作品があるとは聞いていましたが、
実物を観てみたら、想像以上に山田孝之に似ていました。
似すぎていたのかもしれません。
というか、もう本人でしょ。
若き日の篠山紀信を演じた山田孝之です。
全裸写真家。