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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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サーリネンとフィンランドの美しい建築展

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つい先日まで、世田谷美術館にて、

フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトと、

その妻であるアイノ・アアルトの大々的な展覧会が開催されていましたが。

 

 

 

この夏、パナソニック汐留美術館では、

あのアアルトも憧れた建築家の展覧会が開催されています。

その名も、“サーリネンとフィンランドの美しい建築展” です。

 

 

 

展覧会の主役となるのが、

『MEN'S NON-NO』 のモデルばりにポーズを決めたこの人物。

 

建築家エリエル・サーリネンの肖像写真
Photo: Daniel Nyblin/ Finnish Heritage Agency, 1897

 

 

フィンランドの国民的建築家、エリエル・サーリネンです。

日本での知名度はアアルトに負けているかもしれませんが、

本国フィンランドでは、『フィンランディア』 で知られる作曲家シベリウスと並んで、

国の歴史に残る英雄2トップに数えられているほどの人物なのだとか。

 

 

展覧会の会場では、そんなサーリネンの代表作の数々が、

模型や図面、関連資料を交え、時系列に沿って丁寧に紹介されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております)

 

 

のちに国民的建築家になる彼が手掛けた最初の大きな建築が、

1900年のパリ万博のためのこちらのフィンランド・パビリオンです。

 

 

 

当時ヨーロッパで流行していたアール・ヌーヴォー様式に、

フィンランドの文化的、民族的ルーツを融合させたこのサーリネンの建築は、

独立を求めていたフィンランドの人々を大いに勇気づけたといわれています。

 

そして、その翌年に発表されたのが、こちらの建物。

 

 

 

ホーンテッドマンションか何かのように見えますが、

実はこちらは、ポホヨラ保険という会社のビルだそうです。

その保険会社とは直接関係はないですが、建物の至るところに、

クマやフクロウ、妖精、悪魔の石像などが彫刻されているとのこと。

建物とは直接関係ないのに、建物のあちこちに動物や妖怪をデザインするだなんて。

まるで、築地本願寺や大倉集古館を設計した伊東忠太のようです。

というわけで、僕の中でサーリネンは、

『フィンランドの伊東忠太』 と呼ぶことにしようと思います (←?)。

 

なお、外観は、ややおどろおどろしい印象を受けましたが、

ポホヨラ保険会社ビルディングの内部はこんな感じになっているのだそう。

 

ポホヨラ保険会社ビルディングの中央らせん階段
Photo ©Museum of Finnish Architecture/ Karina Kurz, 2008

 

 

実に映えるらせん階段です。

曲線の美しさといい、素材の取り合わせの妙といい。

旧千代田生命保険ビル (現・目黒区総合庁舎) を彷彿とさせるものがあります。

というわけで、僕の中でサーリネンは、

『フィンランドの村野藤吾』 と呼ぶことにしようと思います (←??)。

 

 

ちなみに。

初期のサーリネンは、学校でともに学んだ2人の建築家、

ゲセリウスとリンドグレンと共同の設計事務所で活動していました。

3人は特に仲が良かったそうで、事務所どころか生活の場も一緒だったそう。

そんな3人のためのアトリエ兼住居が、こちらのヴィトレスクです。

 

ゲセリウス・リンドグレン・サーリネン建築設計事務所

《ヴィトレスク、リンドグレン邸の北立面(左)、スタジオの断面が見えるリンドグレン邸の南妻面(右)》
1902年 フィンランド建築博物館

 

ヴィトレスクのサーリネン邸のダイニングルーム
Photo: Ilari Järvinen/Finnish Heritage Agency, 2012

 

 

展覧会会場には、ヴィストレスクの一角を、

1分の1のスケールで再現したコーナーもありました。

 

 

 

あまりにも再現が本気すぎて。

一瞬にして、美術館がある汐留から、

ヴィストレスクのあるフィンランドにワープしたような感覚に陥りました。

建築好き、北欧好きであれば、

この空間を味わうだけでも一見の価値ありですよ!

星

 

 

さてさて、後年には建築家として単身アメリカに渡ったサーリネン。

 

 

 

彼がデザインした高層ビルは、アメリカに衝撃を与え、

当時、サーリネン風デザインのビルがアメリカに氾濫したほどだったそう。

そんな、後年まで建築家として一線で活躍したサーリネンですが。

実は、その才能は建築の分野に留まらず、

家具やテキスタイルのデザインでも、いかんなく発揮されています。

 

エリエル・サーリネン 《椅子「コティ」》 1897年 製作:フイッティネン村の家具職人
フィンランド・デザイン・ミュージアム

 

 

 

さらに、建築家になる前は、

画家を目指していたというサーリネン。

そんな彼が描く透視図は、

もはや絵画作品のレベルの域に達していました。

 

エリエル・サーリネン 《スール=メリヨキ邸、広間の透視図》 1902年 フィンランド建築博物館
 

 

1建築家が描いた建築の透視図というよりも、

ディズニー映画の設定原画を鑑賞している感覚に近かったです。

 

ちなみに。

サーリネン展とは直接関係はないですが。

パナソニック汐留美術館内のルオー・ギャラリーでは、

ルオーの生誕150周年を記念して、スペシャルなフォトスポットが爆誕していました。

 

 

 

お誕生日パーティーのように壁に飾りが付けられた、

ルオーの代表作 《マドレーヌ》 とともに写真が撮影できます。

余談ですが、改めて観てみると、マドレーヌの顔や首は、

赤や黄色、オレンジといった暖色系の色で構成されているのですね。

サーモグラフィ画像のよう。

たぶん体温は36.5℃を超えてます。

 

 

 ┃会期:7月3日(土)~9月20日(月・祝)

 ┃会場:パナソニック汐留美術館

 ┃https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210703/

 

 

~読者の皆様へのプレゼント~
“サーリネン展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、7月15日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。





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