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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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木彫り熊の申し子 藤戸竹喜

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これまでに、不染鉄や吉村芳生、メスキータ、南薫造など、
知る人ぞ知る芸術家にスポットを当てては、評判を生んできた東京ステーションギャラリー。

そんな 「芸術家再生工場」 ともいうべき東京ステーションギャラリーが、

この夏お送りするのは、“木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ という展覧会です。

 

 

 

「藤戸竹喜・・・・・・・誰?人名??」

 

多くの人が頭を?マークで満たしたことでしょう。

今回も安定の知る人ぞ知る感 (?) です。 

 

藤戸竹喜 (ふじとたけき 1934~2018) は、

北海道に生まれ、北海道でその生涯を閉じた木彫家。

藤戸の父は、北海道お土産の定番の木彫り熊の職人でした。

父親のもとで、12歳の頃から熊を彫り始めたという藤戸。

その指導はとても厳しかったようで、

木の塊をいきなり渡されては、それを自分なりに削ります。

その出来が気に入らなければ、父はポイと火にくべてしまう。

そんな繰り返しの中で、藤戸は熊彫りの技を習得していったのだとか。

15歳の頃に、熊彫りの実演を始めるようになり、

その後、30歳で独立するまで熊だけを彫り続けたそうです。

そんな独立の頃に制作された木彫り熊がこちら。

 

 《怒り熊》 1964年、(一財)前田一歩園財団蔵

 

 

お土産物とは思えないほどのレベルです。

もし、こんな迫力溢れる熊が、テレビの上に置かれていたなら、

そっちばかりが気になって、テレビの内容が入ってこない気がします。

もし、こんな迫力溢れる熊が、

初めて訪れる家の玄関に置かれていたなら、

堅気の家じゃないのかもと頭をよぎってしまう気がします。

 

 

さてさて、今展は、そんな藤戸の東京では初となる展覧会。

会場では、そんな初期の作品から、

晩年の作品まで、代表作約80数点が展示されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

熊オンリーなのかと思いきや、

フクロウやキツネといった動物たちの木彫も。

 

 

 

さらには、熊を狩る側の人間をモチーフにした彫刻もありました。

 

 

 

どの作品も、実に生き生きと表現されており、

何の予備知識がなくても、十分に感動的でしたが。

藤戸の制作スタイルを知った上で、その作品を観ると、

感動と同じくらいに、いや、それ以上に驚きが押し寄せるはずです。

 

まずは、こちらの 《鹿を襲う熊》 という作品をご覧くださいませ。

 

《鹿を襲う熊》 1977年、個人蔵

 

 

必死に逃げる鹿。それを追う熊。

緊迫感や躍動感といったものが、

全体から、ひしひしと感じられる逸品です。

ところで、この作品はどうやって作られているのでしょうか?

熊を彫って、鹿を彫って、木の枝の部分を彫って、

最終的に、それを組み合わせて台座の上に乗せて。

そう思った方もいらっしゃるかもしれませんが、

なんと、この作品は一つの木の塊を彫り抜いて制作されているのです!

つまりは、一木造り!

しかも、藤戸は作品を制作するにあたって、

デッサンを描いたり、ましてやマケットを制作することはなかったそう。

さらに、木の塊には簡単に印を付けるだけ。

あとは、頭の中にあるイメージのみで、

一気呵成に作品を作り上げてしまうのだとか。

 

《木登り熊》 2017年、個人蔵

 

 

天才かよ!

いや、もはや超能力者かよ!

どういう風に作られているのか、

言わんとすることは、なんとなーくは理解できますが。

具体的に、何がどうなって、どうやったら、

どう頭と手を使ったら、こんな精巧な作品が、

それも360度どこから観ても破綻のない作品ができるのか。

凡人の頭では、まったくわかりませんでした。

マジ神 (カムイ) です。

 

 

どの作品も衝撃的に素晴らしかったですが、

中でももっとも衝撃的だったのが、《川の恵み》 という大作です。

木彫りの熊というと、鮭を咥えている印象がありますが、

その定番のシチュエーションを藤戸が作ると、こういう風になります。

 

《川の恵み》 2000年、鶴雅リゾート(株)蔵

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

もし、自分が熊の木彫り職人だったら、

この作品を目の当たりにした日に、引退を決意すると思います。

それくらいに圧倒的な力量を感じる作品!

細部まで精緻に作られているので、

ずーっと永遠に観ていられる気がしました。

 

それと、もう一つオススメしたいのが、《狼と少年の物語》 です。

 

 

 

80歳を過ぎた藤戸が、絶滅したエゾオオカミをモチーフに、

「動物とアイヌと和人の物語を残したい」 と制作した連作で、

全19点の彫刻でオリジナルストーリーが構成されています。

 

 

 

1点1点の作品のクオリティの素晴らしさは、当然のこととして。

物語自体も素晴らしかったです。

正直なところ、あと少しで涙が流れるところでした。

(人前だったので、頑張って涙をこらえました)

 

とにもかくにも。

感情が大きく揺さぶられる展覧会でした!

今一番オススメしたい展覧会です。

星星星

自宅や親せきの家に木彫りの熊がある人は、

もしかしたら、それが若き日の藤戸作品という可能性が万に一つもあるので、

それを早急に確認することもオススメしたいです。

 

 

ちなみに。

展覧会の一角には、藤戸自身が収集した木彫り熊コレクションもありました。

 

 

 

さらには、東京ステーションギャラリーから、

徒歩数分の丸の内オアゾにも三沢厚彦さんの木彫りの熊がありました。

(パブリックアートなので、正確にはFRP製ですが)

 

 

 

この夏、札幌では熊が相次いで目撃されているようですが、

東京駅界隈でも、たくさんの熊を目にすることができるようです。

 

 

 ┃会期:7月17日(土) ~ 9月26日(日)

 ┃会場:東京ステーションギャラリー

 ┃https://mimt.jp/kokuhou12

 

~読者の皆様へのプレゼント~
“藤戸竹喜展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、7月30日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 



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