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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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平木コレクションによる 前川千帆展

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現在、千葉市美術館で開催されているのは、

“平木コレクションによる 前川千帆展” という展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 


近代日本を代表する創作版画家・前川千帆 (せんぱん)

その44年ぶりとなる大々的な回顧展です。

星星

ちなみに、創作版画とは、明治期後半から昭和初頭にかけて起こった版画界のムーブメント。

浮世絵や新版画のように、版画を分業で制作するのではなく、

「自画・自刻・自擦」 をモットーに掲げ、版画家一人で制作する版画のことです。

まぁ、いわゆる僕らが図工の時間に習った、いわゆる普通の版画ですね。

 

さてさて、恩地孝四郎や平塚運一と並んで、

「創作版画家の御三家」 と称されていた前川千帆。

残念ながら、現在での知名度は今ひとつですが、

若き日は、漫画家として人気を誇っていたのだそう。

 

 

 

しかし、思うところがあり、人気漫画家という地位を捨て、

創作版画家としての活動に専念するようになったのだとか。

その代表的な作品シリーズの一つが、『野外小品』 です。

 

 

 

こちらは、野外における現代人をテーマにしたシリーズ。

 

 

 

モノクロでシンプルな小品ながら、

存分に個性を発揮している初期の傑作です。

 

また、温泉好きだった千帆のライフワークともいうべきシリーズが、

日本各地の温泉地をモチーフに、昭和16年より制作し始めたという 『版画浴泉譜』。

 

 

 

温泉地をモチーフとした木版画というと、

入浴剤の 「旅の宿」 が思い浮かびますが、

その発売よりも前に、温泉地を木版画で表現した作品があったのですね。

なお、こちらの 『版画浴泉譜』 は、5作目まで制作されたそう。

 

 

 

そのタイトルは、『続続続続版画浴泉譜』 です。

『前前前世』 的な。

 

 

ちなみに。

温泉と言えば、こんな作品もありました。

 

 

 

あえて誰もいない浴場の様子を描いた 《浴場B》 です。

シンプルな構図ながら、温泉の温度や匂い、湯気の湿気、

源泉がチョロチョロチョロと流れる音が、画面から伝わってきました。

視覚だけでなく、五感で楽しめる一枚です。

 

 

他にも印象的な作品が多々ありましたが、

じわじわくるものがあったのが、lこちらの 《少女》

 

 

 

仲良くおしゃべりする少女2人を背中越しに描いた一枚です。

一瞬素通りしそうになりましたが、

よくよく見てみると、少女2人の胴が長っ!

腰、低っ!!

プロポーションが昆虫のようです。

 

 

また、もう一つ印象的だったのが、日本版画協会第2回展および、

「巴里に於ける日本現代版画展覧会準備展覧並第三回展」 に出品されたという一枚。

 

 

 

《とうもろこしを食う婆》 です。

なんでまた、こんな謎のシチュエーションの絵を、

千帆はわざわざパリの展覧会に出品しようと思ったのか。

とうもろこしを食う、とタイトルながら、

婆はとうもろこしを一粒摘み、それを不思議そうに見つめています。

食べろよ。

 

 

最後に紹介したいのは、『版画浴泉譜』 と並んで、

千帆のライフワークだったという 『閑中閑本』 シリーズです。

 

 

 

憧れのお菓子だけを思いつくままに列挙した巻や、

鳴子温泉のこけし屋で目にした制作工程をレポートした巻など、

さまざまなテーマで制作された、今でいうZINEのようなもの。

絵も字もすべて千帆による木版画です。

未完のものを含め、全27冊が制作されています。

 

千帆が死の直前まで制作していたという  『閑中閑本』。

出来ることなら、実際にパラパラめくってみたいなァと思っていたら、

展覧会のラストに担当学芸員さん個人蔵のもの (本物) が特別に展示されていました。

なんと自由にめくっていいとのこと!

 

 

 

こちらは  『閑中閑本 第十一冊 神籤吉吉凶帖』。

延暦寺に伝わるというおみくじの原型の偈文を、

千帆流にアレンジしたものが紹介されている一冊だそうです。

せっかくなので、おみくじを引く感覚で、

ランダムに 「えいっ!」 とページを開いてみました。

 

 

 

凶。

 

何をしても失敗つづきで安心できない。

折角月が出たかと思ふと雲が邪マをして、

犬にまで馬鹿にされるといふまことによくないみくじである。

 

 

犬にまで馬鹿にされるだなんて・・・。

ページをめくらなきゃよかった。

 

 



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