現在、Bunkamura ザ・ミュージアムにて、
開催されているのは、“マン・レイと女性たち” という展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
アメリカに生まれ、ダダイストとして、
シュルレアリストとして、パリで活躍。
写真にオブジェに映画に、とマルチな才能を発揮し、
自らを “万能の人” ダ・ヴィンチに例えたマン・レイの展覧会です。
死後45年経った今でも、世界的な人気を誇るマン・レイ。
これまでも彼にスポットを当てた展覧会は、
日本においても何度も開催されてきましたが。
今展では、マン・レイのミューズとなった女性たちに着目!
さまざまな女性が登場する展覧会となっています。
マン・レイと関わりある女性の中で、
まずパッと思い浮かぶのが、“モンパルナスの女王” ことキキ。
キスリングや藤田嗣治といった画家たちのモデルでも知られる女性です。
マン・レイとキキは7年にわたって同棲生活を送っていたようで、
その期間中に、注文仕事ではなく、
キキを被写体にした写真を多く撮影しています。
そんな数あるキキの写真の中でもっとも有名なのが、《アングルのヴァイオリン》。
《アングルのヴァイオリン》 1924年 ゼラチン・シルバー・プリント(後刷) 個人蔵
/ Photo Marc Domage, Courtesy Association Internationale Man Ray, Paris / © MAN RAY 2015 TRUST /
ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 G2374
キキの背中をヴァイオリンに見立てた作品です。
サイズ感的には、ヴァイオリンよりもコントラバスっぽい印象を受けますが。
キキがアングルの 《泉》 の女性に似ていたこと。
余技を意味する 「アングルのヴァイオリン」 というフランスのことわざがあること。
それらをひっくるめて、この意味深なタイトルが付けられたそうです。
さてさて、自由奔放で男性にモテたキキに対して、
マン・レイは嫉妬にかられるようになり、たびたび衝突。
やがて同棲生活は破局を迎えました。
そんな失意のマン・レイのもとに現れたのが、こちらの女性。
《リー・ミラー》 1930年 ゼラチン・シルバー・プリント(後刷) 個人蔵
/ Photo Marc Domage, Courtesy Association Internationale Man Ray, Paris
/ © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 G2374
リー・ミラーです。
その類まれなる美貌で、少女時代からモデルとして活躍。
しかし、写真家になる決意をし、単身パリへ。
そして、当時写真家として活躍していたマン・レイのもとを訪ねるのです。
その時の第一声は、
「リー・ミラーといいます、あなたの新しい弟子です。」 だったとのこと。
「弟子にしてください」 ではなく、「新しい弟子です」。
さすが美人。
男に何も断られたことがない人生を歩んできたのでしょう。
なお、マン・レイは弟子としてでなく、
助手として迎えることを即決したそうです (←美人に弱い!)。
さて、そんな助手となったリーが
ある日、暗室作業をしている時のこと。
足元を走るネズミかなにかに驚いたせいで、
思わず暗室の電気を付けてしまったのだそう。
当然、写真の現像は失敗に終わるわけですが、
その報告を受けたマン・レイは、失敗を責めることなく (←美人に弱い!)。
これはこれでアリだなと面白がり、その現象の研究をはじめます。
こうして誕生したのが、ソラリゼーション。
《カメラをもつセルフポートレート(ソラリゼーション)》 1932-35年頃 ゼラチン・シルバー・プリント(ヴィンテージ) 個人蔵
Courtesy Association Internationale Man Ray, Paris / © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 G2374
現像時に露光をあえて過多にすることにより、
モノクロの写真作品の白と黒が反転する現象です。
マン・レイの代名詞というべき写真技法を生み出したのは、
彼の親父でもなく、そして、お袋でもなく、そう・・・リーでした。
そんなリーによって生まれたマン・レイの代表作がもう一つ。
《天文台の時刻に―恋人たち》 1934 / 1967年 リトグラフ(多色) 個人蔵
/ Photo Marc Domage, Courtesy Association Internationale Man Ray , Paris
/ © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 G2374
空の上に巨大な唇が浮かぶ印象的な一枚です。
この唇の主が、何を隠そうリー・ミラー。
リーと破局したマン・レイが、リーを想いながら、
2年という月日をかけて完成させたという大作です(注:本展ではリトグラフを出展)。
なお、マン・レイは、この作品に対して、
唇全体が抱き合う恋人のようだ、と語ったとのこと。
そう言われれば、そう見えますが、
失恋を引きずりすぎるにもほどがありますよ。
さてさて、展覧会では、この2人以外にも、
マン・レイと恋愛関係にあった3人が紹介されていました。
計5人。
同じ芸術家でも、ピカソや藤田嗣治は、
女性をとっかえひっかえしているイメージがありますが、
その生涯で多くの女性と付き合いながらも、マン・レイにはそんなイメージはありません。
おそらく、女性との別れ方が他の芸術家と違って、キレイなものだったのでしょう。
逆に、マン・レイの好感度が上がる展覧会でした。
ちなみに。
展覧会では、マン・レイが愛した女性以外だけでなく、
“モードの女王” ココ・シャネルやフランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーヴ、
さらには、ミューズに限らず、
シュルレアリストとして親交のあったダリなど、
時代を代表するスーパースターたちが続々登場。
いかに、マン・レイの交友関係が華やかだったか実感させられました。
マン・レイノヨウナモノニワタシハナリタイ。
そんな憧れに似た気持ちを覚える展覧会でした。
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