水の波紋展2021に、東京ビエンナーレ2020/2021に。
現在、都内各地で同時多発的に芸術祭が開催されていますが。
そのお隣の千葉県でも、芸術祭が開催されています。
その名も、“千の葉の芸術祭”。
夜の日本庭園を舞台にしたメディアアート展や、
アーティストやクリエイターによるワークショップなど、
複数のプログラムからなる千葉市では初となる芸術祭です。
その中でも特に注目を集めているのが、“CHIBA FOTO” という展覧会。
写真を表現に用いる12名のアーティストたちが、
今展のために千葉で制作した作品を千葉市内各地の会場で発表するものです。
千葉市のお隣八千代市に生まれ、
大学の4年間は千葉市に通っていただけに、
これは行かないわけにはいきません。
早速、会期初日のプレス取材時に各会場を巡ってきました。
まず訪れたのは、旧神谷伝兵衛稲毛別荘。
日本初の本格ワイン醸造所 「シャトーカミヤ (現・牛久シャトー)」 や、
日本初のバー 「神谷バー」 の創業者・神谷伝兵衛が来賓用として建てた別荘です。
こちらの1階と地下1階を使って展開されていたのは、
金川晋吾さんによる “他人の記録” というプログラム。
まず、1階の大広間に展示されていたのは、
この別荘でかつて女中として働いていた花光志津さんという方の写真の数々。
さらに、この女性が当時書いていた日記を、
ハンドアウトにしたものが設置されていました (持ち帰り可能)。
何も知らずに観れば、ただの古い写真ですが。
日記を読んだ (=彼女の生の声を聞いた) 上で、
改めて写真を目にすると、不思議とドラマのワンシーンのように感じられるのです。
まるで朝ドラを観ているかのような。
また、地下1階の空間では・・・・・
金川さんの親しい人々のポートレートが、
本人らの肉声とともに展示されています。
地下という閉鎖的な空間であることも相まって、
金川さんのプライベートを覗き見しているような気持ちになりました。
なお、別荘の2階を占める和室空間では、
千葉県出身の横湯久美さんの写真展が開催されています。
身近な存在であった祖母の死をきっかけに、
「生き残った者は死者や過去とどのように付き合うのか」 というテーマで、
制作を続けてきた彼女の作品群が展示されていました。
金川さんの展示と、横湯さんの展示は、別物なのですが。
テーマがテーマだけに、なんとなく通じ合っている印象を受けました。
続いては、徒歩で約5分の距離にある 「千葉市ゆかりの家・いなげ」 へ。
「千葉市ゆかりの家・いなげ」 という名前こそ、ダサいですが (←失礼!)。
なんとこちらの家は、あの中国のラストエンペラー愛新覚羅溥儀、
その実弟である溥傑と妻・浩が、新婚生活を送った歴史ある建物なのだそうです。
千葉に長いこと住んでいましたが、稲毛にこんな歴史があったとは!
千葉県民でも知らなかった歴史的事実に出会える。
それもまた “CHIBA FOTO” の魅力の1つといえましょう。
さて、そんな由緒ある建物を舞台に開催されていたのは、
楢橋朝子さんによる “SEA SIDE LINE” という写真展です。
楢橋朝子さんといえば、海や湖に入り、
波間に揺られながら陸地を撮影するシリーズで知られています。
今展でも、稲毛や千葉みなと、検見川といった、
千葉市内の海に実際に入って、写真を撮影したそうです。
1959年生まれの楢橋さん。
そのアグレッシブな姿勢には、ただただ頭が下がる思いです。
僕もまだまだ身体を張らなくては (←?)。
続いての会場も、歴史的な建造物。
千葉市中央コミュニティセンター松波分室(旧大木ナカ邸) です。
この建物を全部使って展開されているのは、
川内倫子さんによる “AS IT IS” という写真展。
メインとなるのは、2016年に出産して以来、撮り続けているという我が子と、
その子育ての最中に出会った自然や光、小さな生き物の美しさを捉えた写真群。
それと、自宅の近所にやってきたツバメの子育てを撮影した新作が合わせて展示されていました。
建物の雰囲気と、川内さんの作品に漂う優しい空気が絶妙にマッチ。
親戚の家を訪れたくらいの居心地の良さがありました。
「今日は泊っていきなさい」 と言われたら、
「あ、じゃあ、お言葉に甘えて」 と即答できるレベル。
会場内では、川内さんの娘を捉えた映像作品もあるのですが。
ずーっと観ていたら、
だんだんと親戚の子どものように思えてきました。
さて、ここから、てくてくと歩いて千葉公園へ。
その一角にある蓮華亭という資料館施設では、
加曾利貝塚からインスパイアされた吉田志穂さんのインスタレーション作品が、
好日亭という茶室では、ダゲレオタイプを用いて、
作品を制作している新井卓さんの写真展がそれぞれ開催されています。
ダゲレオタイプとは、世界最古の写真技術。
詳しく知りたい方は、新井さんの展覧会を紹介した過去記事をご参照して頂けましたら↓
千葉公園からはモノレールで、「市役所前」 駅へ移動。
直結するビルの2階にかつてあった喫茶店が、
清水裕貴さんの作品の舞台となっていました。
写真家だけでなく、小説家としても活躍する清水さん。
今展のために書き下ろした小説 『コールドスリープ』 と、
リンクするような空間をインスタレーション作品として発表しています。
初めて訪れる空間なのですが、
ずーっと昔に一度訪れたことがあるような。
不思議な感覚に陥る作品でした。
・・・・・と、本日はここまで。
“CHIBA FOTO” の後半戦は、
明日の記事でお届けいたします。