“CHIBA FOTO” を巡る旅。
後半戦は、そごう千葉店からスタート。
その9階、滝の広場に展示されていたのは・・・・・
千葉市に生まれ、千葉を拠点に活動する宇佐美雅浩さんの新作です。
工場のような場所にたくさんの人物がいます。
どことなく、ここ最近のカップヌードルのCMを彷彿とさせるような、
カオスな印象の作品であるため、CGで制作されているのかと思いきや。
実は、すべて実写で、合成一切なしで制作されているのだそうです。
こちらは、彼のライフワークともいうべき、「Manda-la」 シリーズの最新作。
「Manda-la」 とは、世界を表す物や人を、
1枚の写真の中に、CGを使わず凝縮させた写真作品シリーズです。
最新作となるこの 《USAMI MASAO CHIBA 2021》 は、
宇佐美さんの実の父である正夫氏を主役に制作されたもの。
舞台となっているのは、日本の高度経済成長期を支え、
正夫氏が社員として働いていた川崎製鉄株式会社 (現・JFEスチール株式会社)。
そこに、過去を象徴するOBの社員と、
現役社員、未来を象徴する子どもたちが集まって制作されました。
ところで、近づいてよくよく見てみると、
多数のマネキンが交じっていることに気が付きます。
これはコロナによる影響ゆえ。
実際の人間を密にさせてしまうのは、
感染拡大予防の観点から危険と判断されたそうです。
会場では、当初の予定案も紹介されていました。
こちらと実際に制作された作品を見比べると、
マネキン以外にも、いろいろと異なる点が見受けられます。
一体、撮影時に何があったのでしょうか?
その様子をまとめた映像も会場で観ることができます。
約20分と長めの映像ではありますが、
この映像を観ないと、作品の良さは半減、
いや90%減くらいになりますので、ご注意を。
時間に余裕をもって訪れることをオススメいたします。
最後に訪れたのは、“CHIBA FOTO” のメイン会場ともいうべき千葉市美術館。
こちらでは、4人の作家の作品が展示されています。
なので、どうしても全会場巡れそうもないという方は、
まずは千葉市美術館から訪れてみてはいかがでしょうか。
さてさて、11階の講堂で開催されていたのは、
戦後日本を代表する写真家・北井一夫さんの展覧会。
初期のフォトグラフの作品から、
これまでに発表した50冊近いの写真集とその貴重な原稿、
さらには、デジタルカメラで撮影した最新作まで。
北井さんの半世紀に及ぶ写真家人生を辿れる展覧会となっています。
なお、今さらながら、“CHIBA FOTO” はすべて無料。
これだけの内容、ボリュームで、無料だなんて!
千葉市は自棄をおこしてしまったのではないかと、心配になるレベルです。
ちなみに。
北井さんの展示の中で特に印象に残っているのは、
船橋市内の公団の団地と近くの新興住宅地を取材した 『フナバシストーリー』。
そのうちの1枚です。
もはやコントの衣装のようなヤンキー。
カメラにメンチは切るわ。
足元はスリッパだわ。
千葉の恥ずかしいところが凝縮された1枚でした。
その2階下、9階市民ギャラリーで開催されていたのは、
人物や風景などをミニチュアのように撮影する本城直季さんの展覧会が開催されています。
今展では特に千葉市内の学校をメインに撮りおろし。
コロナ禍での小学校の運動会の様子や、
特別支援学校の生徒たちとのコラボ作品などが展示されています。
また、空から千葉市内を見てみよう、な作品群も。
それらの中には、ZOZOマリンスタジアムを映したものもありました。
選手たちがミニチュアのよう。
エポック社の野球盤のようでした。
「消える魔球」 が投げられるかもしれません。
さてさて、展示は1階にあるさや堂ホールでも。
こちらでは佐藤信太郎さんが、近年手掛けているという 「Boundaries」 シリーズと、
1992年に発表された 「Geography」 シリーズが合わせて展示されています。
「Geography」 シリーズは、幕張の埋立地を映したもの。
写真の平面性を追求した結果、
平面である地面を平面的に撮ることに落ち着いたそうです。
地面と言われなければ、どこかの惑星の表面を空撮したものにも見えます。
もはや写真ではなく、抽象画のようにも見えます。
なお、この作品が、床に置いて展示されるのは初だそうです。
さや堂ホールで作品が展示されているのは、もう一人。
数多くのポートレートを発表してきた蔵真墨さんです。
蔵さんはこの会場で、“千の葉のひとびと” と題し、
昨年から今年にかけて千葉市内で撮り下ろしたポートレートを発表しています。
老若男女、さまざまなタイプの人が撮影されていましたが。
個人的に気になったのは、こちらの人物です。
タイトルによると、「日本の良さを伝えるブラジル人ユーチューバー」 だそうです。
本当に日本の良さを伝えてくれているのか?
ちょっとだけ心配になりました。
また、“千の葉のひとびと” にはこんな作品も。
誰かと待ち合わせをしているのか。
スマホを手にした青年が映し出されています。
と、その後ろに目をやると・・・・・
キムタクのポスターが貼られていました。
彼もまた “千の葉のひとびと” です。
というわけで、“CHIBA FOTO” の会場をすべて巡りました。
ほぼ1日ががり。
決して1日で巡らないといけないというわけではないですが。
千葉市内に住んでいない人からすれば、移動はやや大変かと。
とはいえ、それが唯一のウィークポイントというだけで、
先ほどお伝えした通り、無料とは思えないクオリティの芸術祭でした!
しかも、無料とは思えぬほど、
どの会場も徹底的に創り込まれています。
なんとすべての会場デザインを手掛けているのは、
気鋭のアートデザイナーでグラフィックデザイナーのおおうちおさむ氏。
それも踏まえて、3週間で終わってしまうのがもったいない芸術祭です。