■短編画廊 絵から生まれた17の物語
作者：ローレンス・ブロック、スティーヴン・キング、ジェフリー・ディーヴァー他
出版社：ハーパーコリンズ・ ジャパン
発売日：2019/6/17
ページ数：480ページ
米国を代表する名画家、エドワード・ホッパー （1882‐1967）。
作家ローレンス・ブロックは、ホッパーの作品は、
「絵の中に物語があること、その物語は語られるのを待っていること」 を強く示唆していると語り、
ホッパーの絵から物語を紡ぐこの短編集を考えついた。
彼の呼びかけに集まったのは、スティーヴン・キング、
ジェフリー・ディーヴァー、マイクル・コナリー、リー・チャイルド…といった錚々たる顔ぶれ。
各々の個性を遺憾なく発揮した華麗なる文豪ギャラリーが、ここに幕を開けた―。
（「BOOK」データベースより）
「《ナイトホークス》 や、
《ニューヨークムービー》 といった、
アメリカを代表する画家ホッパーの名画をもとに、
今アメリカで活躍する小説家が生み出した短編17編が収録された短編集です。
参加している小説家の中には、スティーヴン・キングや、
ジェフリー・ディーヴァーといった日本人にもお馴染みのメンバーも。
その他のメンバーも経歴を見るに、華々しい方々ばかり。
よくぞこれだけのメンツを集められたものです。
小説版 『We Are The World』 といったところでしょうか。
本の作りとしては、まず小説のタイトルがあり、そのページを捲ると、
右には小説家の経歴が、左にはホッパーの絵が1点掲載されています。
そして、次のページからは、その絵からインスパイアされた小説が始まります。
画中の人物が主人公となる 『名画たちのホンネ』 スタイルを採るものもあれば、
その絵から想像を膨らませる 『モーソウ美術館』 スタイルを採るものもありました。
ストーリー展開や設定は、もちろん17本すべてバラバラでしたが。
ホッパーの画風ゆえでしょうか。
全体的には、ハードボイルド風のものが多かったような気がします。
17編ある短編のうち、まず何といっても印象に残っているのは、
どんでん返しに定評のあるジェフリー・ディーヴァーによる短編です。
元となったのは、こちらの作品↓
この1枚の絵から、あんなストーリーを思いつくだなんて。
さすがの一言。
僕も絵から妄想を働かせるのは得意な方ですが、
あの発想に関しては、逆立ちしたって出てこないです。
それから、ホラーの帝王スティーブン・キングの短編も。
この何気ない日常の光景を、ホラーに仕立ててしまうだなんて！
中野京子さんの 『怖い絵』 は、一見すると怖く感じられない絵を、
真実を明らかにすることで、その裏側に秘められた怖さを浮き彫りにしますが。
スティーブン・キングの場合は、怖くない絵を力技 （？） で怖いものに変えています。
こういうパターンの 『怖い絵』 も面白いですね。
個人的には、《夜のオフィス》 をもとにした、
ウォーレン・ムーアによる短編も印象に残っています。
主人公は、絵の中に描かれている女性。
この女性は、雇い主の弁護士に恋心を抱いていたのですが、
不意の事故で亡くなってしまったため、今は幽霊としてこのオフィスにいるという設定です。
確かに、そう言われると、女性が幽霊に感じられてきました。
というか、顔はジョーカーみたいです。
ちなみに、この短編集はすでに続編も出版されているのだとか。
その名も、『短編回廊 アートから生まれた17の物語』。
こちらは、ホッパーのように1人の画家に限定せず、
ゴッホの 《星月夜》 や北斎の 《神奈川沖浪裏》 のように、
小説家たちが、好きな名画を1点選び、それをもとに短編を仕上げているそう。
このシステムの短編集、是非、日本でも刊行して欲しいものです。
（星4.5）」
～小説に登場する名画～
《海辺の部屋》
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