現在、菊池寛実記念 智美術館では、
“中里隆 陶の旅人” という展覧会が開催されています。
唐津焼の名門、中里太郎右衛門十二代の五男として生まれ、
現在は、「隆太窯(りゅうたがま)」 と名付けた窯を拠点に作陶を続ける中里隆さんの展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
中里さんの作品の一番の特徴は何といっても、
「これぞ中里さんの作品だ!」 という特徴がないこと。
逆説的ですが。
一つのスタイルに決して縛られることなく、
多彩なスタイルの作品を生み出しています。
作品によって、あまりに印象が違い過ぎて、
とても一人の人間によって製作されたとは思えないほど。
それゆえ、展覧会は個展というよりも、
グループ展のような雰囲気がありました。
なぜ、中里さんの作品がこんなに多彩なのか。
そのヒントが、キャプションにありました。
例えば、こちらの 《天目釉波文堤瓶》。
そのキャプションには、「アンダーソンランチ窯」 とあります。
また例えば、こちらの 《蒼釉高脚鉢》 と 《青白磁高脚鉢》。
そのキャプションには、「ロイヤルコペンハーゲン」 とありました。
実は中里さんは、唐津に常に留まって制作するのではなく、
国内外の窯業地を訪れては、その地の技法や素材で創作をしているのだそう。
なるほど。だから、「陶の旅人」 なのですね。
会場内のパネルでは、中里さんがこれまでに旅した窯業地の一部が紹介されていました。
アナザースカイだらけ。
こんなにも世界各国を巡っては、
その地で作品を制作していたのですね。
それは作風の幅が広がるのも納得です。
また反対に、中里さんを訪ねて隆太窯を訪れる旅人も多いのだとか。
長い作家人生の中で多くの交流があったそうですが、その中には意外な人物も。
それは、38歳という若さでこの世を去った伝説の洋画家・有元利夫。
亡くなる数年前に、ご夫婦で数日ほど、
中里さんの自宅に滞在したのだそうです。
その縁で、展覧会には有元利夫の油彩画が特別に出展されていました。
さらに、スカート部分の制作を中里さんが、
それ以外の部分と絵付を有元利夫が担当した合作も出展されていました。
有元利夫ファンとしては、嬉しいサプライズ。
まさか智美術館で、有元作品に出会えるとは。
中里さんのおかげです。
さてさて、展覧会のラストでは、ライフワークのように、
制作に挑み続けているという大壺も展示されていましたが。
菊池寛実記念 智美術館での展覧会としては珍しく、
向付や皿、酒器といった普段使いの器も数多く紹介されていました。
それだけに、思わず触ってみたくなる、手に取ってみたくなること必至!
手を後ろに組んで鑑賞されることをオススメいたします。
ちなみに。
出展作品でもっとも印象に残っているのが、こちらの 《絵唐津向付》。
真ん中に描かれているのは、たぶん鳥。きっと鳥。
でも、しばらく見続けていたら、
ゲシュタルト崩壊を起こしました (笑)
虫にも見えてきましたし、たまごっちのキャラのようにも見えます。
展覧会にはさらに、これを超える (?) ゆるキャラも。
《唐津南蛮鴨徳利》 です。
こういう徳利を鴨徳利というのですね。
はじめて知りました。
もちろん鴨のようにも見えますが、
土下座しまいと必死に耐える大和田常務のようにも見えます。