現在、世田谷美術館で開催されているのは、
“塔本シスコ展 シスコ・パラダイス” という展覧会です。
画面の左に映りこんでいるのが、今展の主役である塔本シスコさん。
パッと見、本人に見えますが、
塔本シスコさんは2005年に亡くなっています。
こちらは、シスコさん自身が手描きした着物に、顔写真をくっつけたもの。
正直なところ、マジで一瞬あの世から舞い戻ってきたのかと思ってしまいました。
ビビらせないでくださいよ、セタビさん。
ところで。
「・・・・・・塔本シスコって誰??」 と思っている方も多いことでしょう。
簡単にその人生を紹介しますと。
塔本シスコは、大正2年に熊本で生まれました。
芸名のようですが、なんと本名。
育ての親である養父が長年の夢であった、
サンフランシスコ行きにちなんで、「シスコ」 と名付けたのだそう。
20歳の時に、シスコは塔本末藏と結婚し、一男一女に恵まれます。
しかし、シスコが46歳の時に、夫が事故死。
さらに、シスコ自身も脳溢血に倒れるなど、体調不良の状態が続きます。
転機が訪れたのは、53歳の時のこと。
画家で息子の賢一が家を出たのをきっかけに、
賢一が残した画材を使って、見よう見真似で絵を描き始めたそうです。
ちなみに、家にあった賢一の油絵具の表面を、
包丁で削ぎ落とし、その上から自分の絵を描いたのだとか。
いや、息子の絵を取っておこうとしなかったんかい!
その頃に描かれたのが、こちらの作品↓
よーく見ると、虫がうじゃうじゃいます。
虫が苦手な人はご注意を。
さて、絵を描くようになってからは、
4畳半の自宅兼アトリエで、ひたすら絵を描いていたそう。
その創作活動は、91歳で亡くなるその前年まで続いたそうです。
今展の会場には、そんなシスコが描いた約200点以上が集結!
過去最大規模の展覧会となっています。
その作品数の物量にも圧倒されますが、
作品1点1点の持つフリーダムなパワーにも圧倒されること請け合いです。
例えば、こちらの作品。
シスコの周りに、エビのようなシャコのような謎の生命体が集まっています。
どうやらその正体は公園にやってきたハトとのこと。
ハトと言われても、ハトには見えないですが、
「それがどうした?!」 というようなあっけらかんとした魅力があります。
なぜなら、シスコの目には、そう見えていたのですから。
花や動物、人物、子どもの頃の思い出など、
シスコが描くモチーフはさまざまで幅が広いですが。
全体的に共通しているのは、それらのモチーフが、
画面を覆いつくすかのように、うじゃうじゃ増殖して描かれていること。
この作風は、思わず草間彌生さんを連想させるものがあります。
なんてことを思っていたら、カボチャを描いた作品もありました。
観たことないタイプのカボチャ。
草間さんの作品よりも、草間ってます (←?)。
ちなみに、シスコが特によく描いていたモチーフは、飼い猫のミーィだそう。
会場にはたくさんのミーィの絵がありましたが、
不思議なもので、一つとして同じ猫には思えませんでした。
中でも特に衝撃的だったミーィの絵がこちら↓
猫というよりも、UMA。
たぶん南米辺りで目撃された。
家畜の血を吸いとるタイプの。
また、ミーィの次くらいによく描かれていたのが、丸山明宏なる人物です。
丸山明宏。
そう、のちの美輪明宏さんです。
美輪さんのファンだったかどうかは不明だそうですが、
シスコの作品には、たびたび 「丸山明宏」 が登場しているそう。
こちらの2点の作品のタイトルも 《丸山明宏》 でした。
美輪さんの背後がオーラのようになっています。
美輪さん本人よりも、シスコのほうがオーラが見えていたのでは?
プロの絵かそうでないかで言えば、まぁ、プロではないですよね。
なのですが、プロの器用な絵よりも、
シスコの絵には惹きつけられるものがあります。
一言で言うなら、「オモウマい絵」 といったところでしょうか。
まだまだ世の中どんよりとしたムードですが、
それらを一蹴してしまうくらいのパワーがありました!
これを機にシスコブームが来るかも?
この秋、注目の展覧会の一つです。