10年来の友人 (・・・と一方的に思っている) で、
Podcastの番組にもゲスト出演してくれた現代芸術家・志村信裕君。
その最新個展 “志村信裕展|游動” が、
先日、KAAT神奈川芸術劇場にて開幕しました!
会場となるのは、劇場内の中スタジオ。
遮音性のある少し重いドアを開けると、
そこには、真っ暗な空間が広がっていました。
その中に、ふわっと浮かび上がるように、
志村君の映像作品の数々が点在しています。
横から映像を投影する作品もあれば、
天井から床に向かって映像を投影した作品や、
ガラス球を通じて下から上に向けて映像を投影した作品も。
展示されていた作品は、全8点。
なんとすべて新作です。
この劇場空間に合わせて、
制作したものばかりなのだとか。
どの作品も印象的でしたが、
特に印象に残っているのが、こちらの作品↓
古びたガラス窓に映し出されていたのは、
水中を漂う無数のクラゲの姿を映した映像です。
初めて目にするシチュエーションなのですが。
作者である志村君が、夢か現実かいずれかで、
このような情景を目にしたことがあるのかもしれない。
直感的に、そんな不思議なシンパシーのようなものを感じました。
また、カーテンに木漏れ日の映像を投影したこちらの作品も↓
カーテンばかりについ目が向いてしまいますが、
よく見ると、床面に青い光が映し出されていました。
この青い光があることで、情景の説得力がグッと増していた気がします。
こうした志村君の作品の数々を目にしているうちに、
“この雰囲気、何かに似ているんだよなァ” と気になりはじめました。
うーん、何だろうな・・・。
と、考えること数分。
あ、俳句だ
極限まで余計なものを削ぎ落として、
観る者の記憶や感情に訴えかけるような情景を表現する。
映像と言葉、素材こそ違いますが、
志村君の作品と俳句に、どこか通ずるものを覚えました。
と、個人的には胸にストンと落ちたところ、
会場の一角で、こんな作品に出合いました。
おそらく樹を映した映像が、古書に投影されています。
その古書をよく見てみると、そこには俳句が掲載されていました。
ちなみに、こちらは、高浜虚子の二女で俳人の星野立子の句集だそうです。
俳句のことが頭に思い浮かんでからの、俳句。
偶然なのか、必然なのかはわかりませんが、
不思議な巡り会わせに、どこか物語めいたものを感じてしまいました。
それも含めて志村劇場なのかもしれません。
なお、今回出展されていた8点の作品は、
もちろん独立した形で鑑賞しても楽しめますが。
それぞれがどことなく共鳴しあっているので、
引きで2、3点の作品を同時に鑑賞してみたり、
会場全体を俯瞰してみると、また違った鑑賞体験が味わえます。
この会場をきめ細やかに作り上げた志村君の演出力に感服。
もし、また日本でオリンピックをする機会があれば、
開会式の総合演出は、是非、志村君に引き受けて頂きたいと思います。