現在、日本民藝館で開催されているのは、“棟方志功と東北の民藝” という展覧会。
こちらは、タイトルずばり東北の民藝にフォーカスを当てたもので、
日本民藝館創設者の柳宗悦が東北各地で蒐集した品々を中心に紹介する展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
地元を愛する人々に怒られるのを覚悟でカミングアウトしますが、
なんとなく 「東北地方=地味で面白みが少ない」 という印象を抱いていました。
それゆえ当然、東北の民藝は、地味で面白みが少ないに違いないと決めつけていましたが・・・。
いやはや、まったくそんなことはなかったです!
むしろポップ。
かつ、スタイリッシュ。
北欧デザインに近いものを感じました。
あ、よくよく考えたら、東北地方も北欧も気候的には近いのか。
ということは、ライフスタイルやデザインに対する価値観も。
日本の北欧、それが東北地方なのかもしれないですね。
会場では、東北地方ならではの民藝が数多く紹介されていましたが。
個人的に印象に残ったのが、バンドリです。
バンドリとは、主に庄内地方で見られる背中当てとのこと。
農作業や山仕事に欠かせないもので、
荷物を背負う際に背中の負担を減らすクッションの役割をしていました。
なお、これらバンドリは、男性が意中の女性のために制作したのだそうです。
なんとなく、都はるみの歌のせいで、北の女性は (←?)、
着てはもらえぬセーターを寒さこらえて編んでる印象がありましたが。
実は男性も、着てはもらえぬバンドリを寒さこらえて編んでいたのですね。
お互いさまだったようです。
他にも派手過ぎてコーデに困りそうな帽子や、
どことなく名和晃平さんを彷彿とさせる湯釜など、
印象的な民藝品が多々展示されていましたが。
不思議なことに、赤べこや三春駒といった、
東北を代表する郷土玩具はありませんでした。
実は、柳宗悦はそういったお土産物として作られるものにはほぼ興味がなかったのだとか。
ただ、そんな柳が唯一蒐集したとされるこけしがこちらです↓
あの柳のお眼鏡にかかっただけに、風格もひとしお。
どこぞの古代遺跡で出土した遺物くらいの風格を漂わせていました。
なお、今回の展覧会では、東北が生んだスーパースター、
棟方志功の版画 (板画) 作品もフィーチャーされています。
それらの中には、東北を舞台にした大作 《東北経鬼門譜》 も。
今年4月にリニューアルされたばかりの新館展示室、
その常設展示ケース内にて、ドーンと展示されていました。
『肉筆画>>>版画』 と思い込んでいるすべての人に観てほしい作品です。
さすが 「わだばゴッホになる」 と宣言した人物の作品だけあって、ものすごい迫力!
版画 (板画) の概念が、いい意味で吹き飛ぶ作品です。
ちなみに。
今回も例によって、展覧会とは別に、
小企画が同時にいろいろ開催されています。
それらに展示されていた民藝の品々の中で、
特に気になったものをいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、大津絵の 《梅に鶯図》。
大津絵なので、絵の上手さは期待していませんが・・・。
それにしても、この梅はどうなのよ。
やっつけ仕事にもほどがあります。
似せる気がまったく感じられません。
梅というよりも、フジテレビのマークです。
やっつけ感があったといえば、こちらの中国の中皿も。
等間隔って何かね?
シンメトリーって何かね?
いろいろと問いたくなる絵柄のお皿でした。
自由奔放にもほどがあります。
ちなみに、このお皿のすぐ近くに展示されていたのは、こんなお皿。
なんというか、ザラザラッとした印象。
もとの絵柄が掠れてしまったのかと思いきや、
キャプションには、《回教文字文皿》 とありました。
回教、つまりイスラム教。
アラビア文字をデザインに取り入れたお皿だったのですね。
斬新なデザインです。
斬新なデザインのお皿は、わが日本にも。
瀬戸の 《鉄絵緑差蕨文行燈皿》 です。
蕨と言われれば、蕨に見えますが。
パッと見は、回虫か触手、
はたまた、人食いワームに思えました。
食欲が湧く気はしません。
最後に紹介したいのは、美濃の 《灰釉狛犬 阿》 です。
腕、長っ!
ハーレーダビッドソンかと思いました。
全力で散歩を拒否する犬のようにも見えます。