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重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風

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現在、根津美術館で開催されているのは、

“重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風” です。

展覧会の主役はもちろん、この作品↓

 

重要文化財 鈴木其一 《夏秋渓流図屛風》 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵

 

 

鈴木其一の 《夏秋渓流図屏風》

昨年、其一の作品として初めて重要文化財に指定された作品です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

2019年に東京都美術館で開催された “奇想の系譜展” にも出展されていたこの作品。

ビビッドな色使い、かつダイナミックな構図ゆえに、

これまでは 「奇想」 や 「異色作」 というキーワードで紹介されることが多かったですが。

 

「実は、狩野派や円山応挙といった王道の画風からも大きな影響を受けていた?!」

 

という新鮮な切り口で紹介しているのが、今展のキモです。

 

・・・・・とはいえ、どこがどう狩野派?

どこがどう円山応挙風なのでしょうか??

 

 

例えば、《夏秋渓流図屏風》 に描かれている樹にご注目くださいませ。

これらは、ヒノキです。

実は、ヒノキは狩野派の絵でよく描かれるモチーフなのだとか。

 

左)山本光一 《檜に白鷺図》 日本・江戸~明治時代 19世紀 千葉市美術館蔵 

右)狩野常信 《檜に白鷺図》 日本・江戸時代 18世紀 個人蔵

 

 

また例えば、水の流れにご注目。

画面奥から手前に向かって、迫りくるかのように、

まるで4Dシアターのような臨場感で、川が流れています。

これは、円山応挙の晩年の傑作 《保津川図屏風》 に通ずるものがありますね。

 

重要文化財 円山応挙 《保津川図屏風》 日本・江戸時代 寛政7年(1795) 株式会社千總蔵

 

 

もちろん、狩野派や円山応挙だけでなく、

其一は、琳派の影響も大いに受けています。

こちらは、師である酒井抱一による 《青楓朱楓図屏風》

 

酒井抱一 《青楓朱楓図屏風》 日本・江戸時代 文政元年(1818) 個人蔵

 

 

原色が際立つビビッドな色使いや、

右隻が夏で左隻が秋という屏風の構成は、

完全に 《夏秋渓流図屏風》 と一致しています。

 

 

さらに、今展では、狩野探幽に学んだ狩野派の画家で、

尾形光琳が師事したとも伝えられる山本素軒の 《花木渓流図屏風》 も出展されていました。

 

山本素軒 《花木渓流図屏風》  日本・江戸時代 17~18世紀 個人蔵

 

 

一説によれば、其一はこの山本素軒の屏風を観ていた可能性が高いとのこと。

確かに、言われてみると、《花木渓流図屏風》 の中には、

ヒノキや笹、ユリなど、《夏秋渓流図屏風》 に描かれた植物がたくさん登場しています。

この屏風絵が 《花木渓流図屏風》 に与えた影響は少なくないでしょう。

 

 

・・・・・・・と、それらの仮説を踏まえてみると、《夏秋渓流図屏風》 は、

決して其一のオリジナリティが溢れた奇想の作品というわけではなく、

さまざまな画風がリミックスされた作品であった事実が浮かび上がってきます。

 

 

 

関係性をまとめると、こうなります↓

 

 

 

重要文化財指定記念特別展 鈴木其一・夏秋渓流図屏風” という、

その展覧会タイトルから、《夏秋渓流図屏風》 1点豪華主義の展覧会かと思いきや。

狩野派や円山応挙、琳派の名品揃い、

かつ、名画の秘密を解き明かすミステリ要素のある展覧会でした!

シンプルな展覧会タイトルに騙されませんように (←?)。

星星星

 

 

なお、《夏秋渓流図屏風》 の秘密に迫る第1章に続く第2章では、

日本全国から集結した鈴木其一の作品の数々が一堂に会しています。

それらの大半が、個人蔵。

普段は公開されていない希少なモノばかりです。

 

こちらの 《七夕花扇使図》 も個人蔵の作品。

 

鈴木其一 《七夕花扇使図》 日本・江戸時代 19世紀 個人蔵

 

 

毎年7月7日、七夕の日に、近衛家から宮中に、

7種類の秋の花を束ねた 「花扇」 なるものが献上されていたそうです。

この絵に描かれているのは、その花扇を届ける一行の先頭の女性。

よく見ると、水色と紺色、白のストライプの不思議な布をまとっています。

もしかしたら、届け物をする際のこの衣装を意識して、

佐川急便のユニフォームがデザインされているのかもしれません。

信じるか信じないかはあなた次第です。

 

 

また、個人蔵作品には、こんなものもありました。

表側から観ると、こんな感じですが・・・・・・・

 

鈴木其一 《秋草・波に月図屏風》 日本・江戸時代 19世紀 個人蔵

 

 

裏側から観ると、こんな感じ。

 

 

 

表側の絵が少し透けて見えています。

江戸時代に、マジックミラー的なものがあったとは。

その斬新な発想に驚かされました。

 

 

最後に紹介したいのは、晩年の其一が描いたとされる 《群鶴図屛風》 です。

 

鈴木其一 《群鶴図屏風》 日本・江戸時代 19世紀 個人蔵

 

 

画面全体をこれでもかと覆うように飛び交う鶴の群れ。

中国の街中の映像で見かける自転車の大群を彷彿とさせるものがあります。

よくよく見れば、急旋回する鶴もちらほら。

ぶつからないかと心配になってしまうほどです。

この絵のキャプションに、こんな一文がありました。

 

「メリハリのある背景と相まって、必要以上に画面が混雑した印象になるのを回避している。」

 

混雑の捉え方は、人それぞれですね。

 

 

 ┃会期:2021年11月3日(水・祝)~12月19日(日)

 ┃会場:根津美術館

 ┃https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

 

 



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