現在、“ユージーン・スタジオ 新しい海” が絶賛開催中の東京都現代美術館。
その1フロア上の展示室にて、同時開催されているのが、
“クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]” という展覧会です。
クリスチャン・マークレー (1955~) は、
アメリカ生まれスイス育ちの元ミュージシャン。
音楽界では、ターンテーブル奏者のパイオニアとして知られる人物です。
80年代以降は徐々に美術作品を発表するようになり、
今では、サウンド・アーティストとして世に知られています。
今展は、そんなクリスチャン・マークレーの日本では初となる大規模展覧会。
初期の作品から最新のインスタレーション作品までが紹介されています。
そんな展覧会のオープニングアクトを飾るのは、
《リサイクル工場のためのプロジェクト》 という作品。
2005年に東京のリサイクル工場にて、
使用済みの電気製品を使って制作された作品です。
この画像では全然伝わらないでしょうが、展示空間は、
ユージーン・スタジオ展の静謐な空間とは対照的でノイジー!
Adoの 『うっせぇわ』 よりも、うっせぇ作品でした。
展覧会の冒頭がこんな感じだったので、
終始、騒々しい展覧会なのかと思いきや。
うるさく感じたのは、この空間だけでした。
古今東西の映画から音にまつわるシーンを集めた映像作品、
《ビデオ・カルテット》 以外は、音を発する作品はほとんどありません。
・・・・・・・サウンド・アーティストの展覧会なのに。
というのも、クリスチャン・マークレーが美術界で頭角を現すきっかけとなったのが、
80年代前半に断続的に制作された 《リサイクルされたレコード》 という作品だったのだそう。
複数のレコード盤を切断し、その断片を、
まるでパズルのように組み合わせた作品です。
現在のデジタルの時代では、「音を切り貼りする」 とはよく言いますが。
アナログの時代に、物理的に本当に音を切り貼りしていた人がいたとは!
これらのレコードに針を落としたら、どんな風な音楽が再生されるのか、非常に興味をそそられました。
そんなマークレーのリミックスの才能は、
コラージュ作品でもいかんなく発揮されています。
主に日本の漫画から叫ぶ人の顔を抽出し、それをリミックスした 《叫び》 シリーズや、
漫画に登場するオノマトペを組み合わせ、掛け軸に仕立てた作品群、
さらに、叫ぶ顔とオノマトペを組み合わせた、
リミックスのリミックスともいうべき最新シリーズでも、その才能は健在です。
それらの作品の中で特に印象に残ったのが、
初期のコラージュ作品である 「ボディ・ミックス」 シリーズ。
指揮者やロック歌手といった男性の上半身と、
セクシーな女性の下半身とを組み合わせたシリーズです。
普通に考えたら、違和感アリアリなのですが、
どの作品も絶妙に上半身と下半身がマッチしています。
パッと見、違和感ナシナシです。
中には、こんな作品も↓
こちらも違和感ナシナシ。
・・・・・・・・いや、やっぱり違和感アリアリだ。
クリスチャン・マークレーではなく、
そもそものジャケット写真がふざけています。
上半身裸でフルートを型にかける男。
どんなシチュエーションだよ。