年間に多くの公募展が開催されていることから、
「公募展のふるさと」 とも称されている東京都美術館。
そんな東京都美術館が2017年より毎年行っているのが、
公募団体で活躍している作家を紹介する展覧会シリーズです。
その名も、 「上野アーティストプロジェクト」。
5年目となる今年は、“Everyday Life : わたしは生まれなおしている” と題して・・・・・
6名の女性作家がフィーチャーされています。
うち3名は、現役で活躍している作家、
うち3名は、すでにお亡くなりになった物故作家です。
なんとなく、この 「上野アーティストプロジェクト」 シリーズは、
現役で公募展に出展されている作家を紹介する企画かと思い込んでいたので。
今回のセレクションは意外ながらも、新鮮な驚きがありました。
なお、今展では、
「現役作家×物故作家」 の組み合わせで紹介されています。
つまり、3ペアが紹介されています。
例えば、常盤とよ子×小曽川瑠那さんペア。
常盤とよ子は、日本における女性写真家の草分けの一人。
横浜生まれで、特に横浜の赤線地帯の女性を撮った写真で注目を集めた写真家です。
会場では。赤線地帯で働く女性を捉えたものだけでなく、
もっと全般的に “働く女性” を被写体にした写真が紹介されています。
それらの中には、こんな写真もありました。
お尻を出しているのに、完全に報知されている男性。
れっきとした看護婦さんをモデルにした写真なのですが、
シチュエーションがシチュエーションだけに、そういうプレイにも見えてきました (←?)。
・・・・・と、それはさておき。
常盤さんと併せて紹介されていたのは、ガラス作家の小曽川瑠那さんです。
写真とガラス、と、表現手段はもちろん、
活躍された年代も、作品のモチーフも全然違いますが。
不思議と、繊細な印象ながら、芯の強さを感じるという点では通じるものがありました。
また例えば、丸木スマ×川村紗耶佳さんペア。
丸木スマは、《原爆の図》 で知られる画家夫妻、
丸木位里・俊の母で、70歳を過ぎて初めて絵筆をとり、
「おばあちゃん画家」 として、親しまれていた人物です。
息子たちがプロとはいえ、丸木スマはアマもアマ。
とはいえ、81歳で亡くなるまで、
約9年の間に700点以上 (!) もの作品を残したそうです。
お世辞にも上手いとは言えませんが、
プロには決して出せない味がありました。
そんな丸木スマと併せて紹介されていたのは、
水性木版画の技法で和紙に作品を何度も摺り取る川村紗耶佳さん。
もちろんプロの作家です。
どことなくアンニュイな表情。
そして、腕の異常な太さ。
有本利夫を彷彿とさせるものがありました。
腕どころか、首回りも肩幅も大きいのですが、
不思議と、威圧感のようなものは感じられません。
ぼる塾の田辺さんのような印象。
少しくらいのことなら、「まぁねー」 で、
受け流してしまうような、芯の強さがありました。
ちなみに。
個人的に最も印象に残った組み合わせは、桂ゆき×貴田洋子さんのペアです。
貴田さんは、青森生まれの現代津軽こぎん刺し作家。
津軽こぎんと聞くと、「ザ・伝統工芸」「ザ・民藝」 という印象がありますが。
貴田さんは、その伝統的な技法は受け継ぎながらも、
現代的な感性で、現代ならではの津軽こぎん作品を発表しています。
鳥は、まるでタングラムパズルのようですし、
全体的なイメージは、8ビットのファミコンゲームのようでした。
そんな前衛的な津軽こぎん作家と、
対比するように紹介されていたのは、
日本における前衛女性画家の先駆者・桂ゆき。
どの作品も、時代を先取る先駆性がありましたが。
中でも特に時代を先取っていたのが、こちらの作品です。
1970年に発表された 《マスク》 という作品。
50年も早く、現在のコロナの状況を予測していたのかもしれませんね。