先日、今年生誕100年を迎えた瑛九の回顧展を、ご紹介しましたが。
(その模様は、こちら⇒http://ameblo.jp/artony/entry-11053916657.html)
今回は、今年生誕130年を迎えた松岡映丘の回顧展をご紹介。
練馬区立美術館で開催中の “松岡映丘 -日本の雅-やまと絵復興のトップランナー” です。
今年は、 “えいきゅう” イヤーなのでしょうか。
重なる時は、重なるものです。
さてさて、まずは、 「松岡映丘って、誰?」 という方のために、簡単にガイドを。
松岡映丘 (1881~1938) は、東京美術学校を首席で卒業した超エリート。
その生涯を通じて、やまと絵の再興に努めた日本画家です。
「今、時代は、洋画っしょ!」
という画家や、
「いや、洋画のスタイルを取り入れた日本画を描くべきっしょ!」
という画家だらけの中で、
「こんな時代だからこそ、古き良き日本画=やまと絵を再興させるべきっしょ!」
と奮闘しました。
例えるなら、漫才やコント全盛のこの時代に、
“めちゃめちゃ面白い落語家になってやる!” と意気込むようなもの。
例えば、《宇治の宮の姫君たち (右隻) 》 や、
《みぐしあげ》
…のような伝統的なやまと絵を残しています。
今の僕らから見れば、だいぶ懐古趣味を感じる作品ですが、
この作品が発表された時から、すでに懐古趣味を感じる作品だったというのが、観賞する上でのポイントです。
しかし、松岡映丘は、単なる懐古趣味人間ではありません。
研究に研究を重ね、伝統的なやまと絵の手法を取りながらも、
今の時代 (=当時) に通じる、いわばネオやまと絵を完成させたのです。
その代表作が、ポスターにも使われている 《千草の丘》
伝統的な古風さも感じつつ、どこか新しさも感じる不思議な一枚です。
色彩は、日本古来の淡い色合い、
でも、描かれているモデルは、何となくモダンな女性。
・・・と思ったら、モデルは、当時の人気スター・水谷八重子なのだとか。
まぁ、つまり、大河ドラマで、上野樹理が、お江を演じているような感覚なのでしょう。
この作品は、当時、
「あの水谷八重子が、やまと絵のモデルになった!」
と、だいぶ話題になったそうで、その時の新聞記事も合わせて展示されていました。
ちなみに、この作品で、松岡映丘は、
それまでのやまと絵にはなかった新しい表現にチャレンジしているそうです。
それは、モデルを正面から描くこと。
旧来のやまと絵では、鼻を正面から描くことを、避けてきたのだとか。
というのも、線だけでは、立体感を上手く表現できないからです。
(西洋画は、絵の具の濃淡で、鼻を立体的に表現できます)
この絵を観る時は、鼻に要注目です。
実は、ここに、松岡映丘の苦心が詰まっているのです。
この他にも、彼の代表作である 《右大臣実朝》 と、
《伊香保の沼》 の2点も、
展示されていま・・・した
10月30日まで
今は、その下絵のみが展示されています。
早く行っておくべきでした。。。
まぁ、 《右大臣実朝》 も 《伊香保の沼》 も無くても、満足いく展示でしたけどねっ!
(↑開き直り)
個人的に印象に残っているのは、三の丸尚蔵館所蔵の 《大三島》
愛媛県の大三島を描いた一枚です。
“神の島” と言われる島だけあって、何とも言えない神々しいオーラが漂っています。
まさに、吸い込まれるような風景画でした。
そして、さらに素晴らしかったのが、《矢表》 という屏風絵。
これまで僕が観た中でも、群を抜いてカッコイイ武者絵でした。
ビックリするくらい画像では伝わらないですが、
是非注目して頂きたいのは、描かれている源義経とその家臣が身に付けている鎧兜。
実は、自らコスプレするほど、鎧兜マニアだったという松岡映丘。
その彼のマニア魂が、もはや執念のように絵に表れているのです。
あまりにスゴすぎて、
“そこまで、頑張って、鎧兜を描かなくても…”
というレベル (笑)
もう一つ、付けくわえるならば、
右隻を頑張りすぎたからでしょうか、左隻が、相対的に寂しくなりすぎていました (笑)
他にも、素晴らしい作品が多数。
どれも、色が綺麗で、ため息が溢れました。
いやはや、A級な美術展です。
3ツ星!
・・・ですが、明日11月23日まで。読者の皆様、すいません。
最後に。余談も余談なのですが。
松岡映丘がお茶の水女子大のために描いた 《明治天皇像》
こちらの作品の横に、参考出展として、
同じくお茶の水女子大所蔵の 《昭憲皇太后像》 (矢澤弦月 画) も展示されていました。
“ん~、誰かに似ているような・・・あ、美白大臣!”
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松岡映丘 -日本の雅-やまと絵復興のトップランナー
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