現代アーティストとアーティゾン美術館の学芸員がコラボし、
年1回の予定で、新たな視点による展覧会を構成していく 「ジャムセッション」。
昨年の “鴻池朋子 ちゅうがえり” に続く、
第2弾として現在開催されているのは・・・・・
“M式「海の幸」-森村泰昌 ワタシガタリの神話” という展覧会。
名画や有名人になりきるセルフポートレイト作品で知られる森村泰昌とのコラボ展です。
ゴッホの自画像を筆頭に、レンブラントやフリーダ・カーロ、
マリリン・モンローや三島由紀夫、MJなど、さまざまな人物の姿に扮してきた森村さん。
森村さんが今展で扮するのは、こちらの洋画家です。
明治を代表する画家・青木繁。
28歳という若さで夭折した人物です。
なお、この 《自画像》 の段階で、
すでに (?) 森村さんに似ている気がしますが。
森村さんがこの 《自画像》 に扮すると、こんな感じに↓
「でしょーね!」 と言いたくなるほどの再現度でした。
さて、今展覧会のメインとなるのは、
青木繫の代表作 《海の幸》 を題材にした完全新作です。
《海の幸》 からどのようなインスピレーションを受け、
どのようにして自分なりの作品へと昇華させていったのか。
展覧会では、そのプロセスを余すことなく紹介すべく、
《海の幸》 をはじめとする青木繫作品に対する森村さんの研究成果や、
新作のために制作されたジオラマやスケッチ、資料なども展示されています。
それらをたっぷりと目にしたところで、
いよいよ森村さんの最新作 《M式「海の幸」》 と対面することとなります。
ただ顔やポーズが似ているというだけでなく、
画面全体に漂う雰囲気まで、《海の幸》 と瓜二つ。
完全に 《海の幸》 になりきっていました。
さてさて、実は 《M式「海の幸」》 は全10点からなる連作。
《海の幸》 になり切った 《M式「海の幸」第1番:假象の創造》 から始まり、
明治、大正、昭和、平成と各時代のトピックをモチーフにした歴史群像劇となっています。
全10点で登場する人物は、85人。
もちろんすべて森村さんが演じています。
個人的に一番印象に残っているのは、
平成をテーマにした 《M式「海の幸」第8番:モードの迷宮》。
コギャルやメイドに扮する森村さん。御年70歳。
パッと見は、「森村先生何やってんすか」 なのですが、
しばらく我慢して観ていると (←?)、だんだん可愛らしく思えてくるから不思議なものです。
荒木師匠を彷彿とさせる真ん中の女性なんて、
こういう顔立ちの人が実際当時ジュリアナで踊っていたような気さえします。
なお、今作はコロナ禍での作業ということもあり、アシスタントは使わず、
メイクや衣装もすべて森村さん自分一人で制作せざるを得なかったそう。
一人85役どころか、スタッフ作業も含めると一人100役くらいこなした超大作です。
ちなみに。
シリーズの最後を締めくくる10点目、
《M式「海の幸」第10番:豊穣の海》 がこちら↓
なぜ、遮光器土偶?
なぜ、全身金色??
その理由は一切説明がありません。
さて、よく見ると、手には謎の棒を持っています。
この棒を伸ばしていくと、おそらく 《M式「海の幸」第1番:假象の創造》 の銛に繋がるのでは?
第10番が再び第1番へと連環する。
ループ構造の作品なのかもしれません。