現在、箱根の岡田美術館で開催されているのは、
“The SAMURAI ―サムライと美の世界―” という展覧会。
岡田美術館の日本美術コレクションの中から、
「SAMURAI=侍」 をキーワードに、約30件を紹介する展覧会です。
サムライに関する日本美術と言っても、そのパターンはさまざま。
《競馬図屏風》 のように古代のサムライの風習を描いた屏風絵もあれば、
《競馬図屏風》 桃山~江戸時代初期 17世紀 岡田美術館蔵 (注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
象彦の 《八幡太郎義家奥州征伐図蒔絵料紙硯箱》 のように、
実在する歴史上のサムライが全面にデザインされた蒔絵料紙硯箱、
象彦(八代西村彦兵衛)/瀬川嘯流 《八幡太郎義家奥州征伐図蒔絵料紙硯箱》 明治~昭和時代 19~20世紀 岡田美術館蔵
さらには、下級武士の家に生まれた歌川 (安藤) 広重をはじめとする、
歌川(安藤)広重 《東海道五十三次 小田原》(酒匂川) 天保 4~5 年(1833~34) 岡田美術館蔵
【展示期間:11/9~1/13】
渡辺崋山や浦上玉堂など武士階級の画家、
つまりは、サムライたちが描いた作品も紹介されています。
ちなみに、脱サラ、もとい、脱サムライして、
悠々自適に浮世絵を描いていた印象のある広重ですが。
会場にあったキャプションの解説によれば、
実は、自分の葬儀は武士風で行うようにとの遺言を残していたのだとか。
意外にも、広重の根っこの部分は、サムライだったのですね。
さてさて、今展の出展作品の中で、
特に注目したいのが、こちらの 《平家物語図屏風》 です。
《平家物語図屏風》(部分) 江戸時代前期 17世紀 岡田美術館蔵
『平家物語』 全12巻から一場面を抽出し、屏風に仕立てたもの。
いうなれば、『平家物語』 のダイジェスト版。
『平家物語』 のファスト映画ならぬファスト屏風です。
『平家物語』 をモチーフにした絵画作品自体は、そう珍しくないですが、
この屏風絵の最大の特徴は、王道のエピソードがセレクトされていないこと。
マニアックなシーンもあえて選んで描いている節があるのだそう。
オーソドックスな古典を原点としながらも、オリジナリティを発揮する。
作者不詳の作品とされてはいますが、この作者は、
この時代における三谷幸喜さんのような才能の持ち主だったと思われます (←?)。
また、この作者不詳の人物は、実写化する力だけでなく画力もピカイチ!
総勢約800人もの人物が、緻密な描写で描き込まれています。
どの人物、どの場面も生き生き描かれているので、
端から端まで観ていたら、平気で数十分は経過してしまうことでしょう。
なお、個人的にもっとも印象に残っている場面は、こちらの 「橋合戦」 です。
進軍されないように橋板が外されています。
しかし、そんな状態にも関わらず、
果敢に攻め込む園城寺の悪僧・浄妙坊。
そんな浄妙坊に負けてられないと、背後からやってきたのが、一来法師。
「悪いな、浄妙坊!」 と声をかけ、
浄妙坊の頭に手をかけ、颯爽と飛び越えました。
・・・・・・・・・・・・・・いや、何もこんな飛び越え方しなくても (笑)
橋板が外されていて、ただでさえ、足元が不安定だというのに。
また、印象的だった屏風絵内の一場面といえば、こんなシーンも。
《相馬野馬追図屏風》(部分) 江戸時代中期 18世紀 岡田美術館蔵
福島県相馬市に今も伝わるお祭り、
「相馬野馬追」 の様子が描かれた 《相馬野馬追図屏風》 です。
その中で気になってしまったのが、こちらの場面。
地面に転げ落ちた男性が、
ひしゃくのようなもので頭から水をかけられています。
なんでもこの男性は、奉納するために、
馬を捕らえようとしたところ、馬に蹴られてしまったのだそう。
そんな男性を復活させようと、御神水を頭からかけている場面なのだとか。
いや、水をかける前に、まず薬だろ!
あと、百歩譲って、水をかけるのであれば、ちょろちょろかけるなよ!
さてさて、他にも印象的な作品は多々ありましたが、
思わず二度見してしまったのが、狩野探幽の 《舜王・娥皇・女英図》 です。
狩野探幽 《舜王・娥皇・女英図》 江戸時代 寛文5年(1665) 岡田美術館蔵
画面の中央に描かれているのは、舜王。
中国古代の理想的な帝王とされる人物です。
(その両隣の女性は、先帝である堯 (ぎょう) の娘たちで、ともに舜の妻)
理想的な人物だったとのことですが、そのファッションは個性的。
パッと見、ゼロ戦の擬人化かと思いました。
「艦これ」 的な。
あと、よく見ると、お腹の辺りにキジが描かれています。
アップリケみたいな感じで。
ちなみに。
現在、岡田美術館の1階展示室では、
“特集展示 中国の青磁” が同時開催されています。
中国歴代の青磁の最高峰として珍重され、
日本の私立美術館で収蔵しているのは唯一となる汝窯の 《青磁鉢》 を筆頭に、
《青磁鉢》 汝窯 北宋時代 11~12 世紀 岡田美術館蔵
岡田美術館が収蔵する中国の青磁が全31件が初めて一挙展示されています。
それらの中には初公開のものも!
「全部、青い。」 特集展示です。
┃会期:2021年10月2日(土)~2022年2月27日(日)
┃会場:岡田美術館
┃https://www.okada-museum.com/exhibition/