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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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つくる・つながる・ポール・コックス展

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現在、板橋区立美術館で開催されているのは、

“つくる・つながる・ポール・コックス展” という展覧会。

 

 

 

フランスを中心に世界中で活躍するアーティスト、

ポール・コックスの日本の美術館では初となる大規模展覧会です。

もし、ポール・コックスの名前に耳なじみがなくとも、

彼の作品は、一度は目にしたことがあるかもしれません。

というのも、彼は、キリンや無印良品など、

日本の企業との仕事も多くこなしているのだそう。

ちなみに、北陸新幹線開業のCMにも起用されています。

 

 

 

本国フランスでは特にポスターの仕事を多く手がけているようで、

展示室の壁一面に、これまでに彼がデザインしたポスターのごく一部が紹介されていました。

 



 

抽象的でポップなカラーのこちらのポスター。

 

 

 

おもちゃとか、幼稚園の入園案内とか、

子どもに関する何かしらのポスターかと思いきや。

よく見ると、下部に 『OPERA (オペラ)』  の文字があります。

こちらはなんとナンシーにあるオペラ座のポスターなのだそう。

なんという斬新なセンス!

日本のオペラのポスターなんて、

指揮者か劇場内の写真が使われがちで、どれも似たりよったりだというのに。

ポール・コックスのセンスはもちろん、

これを良しとするオペラ座にもセンスを感じます。

フランスの文化度の高さに圧倒させられました。

 

 

展覧会ではポスターの他にも、

ポールが手掛けた絵本や舞台美術の仕事も紹介されていましたが。

 

 

 

展覧会の目玉は何といっても、今展のために制作された新作の風景画。

幅6mを越える大作 《レ・ボー・ド・プロヴァンスの庭》 です。

 

 

 

色合い的には、モネの晩年の頃の睡蓮の絵や、

昔のムラサキスポーツのショッパーを彷彿とさせるものがありますが。

 

 

 

描かれているのは、アルル近郊にある公園の景色なのだそう。

緑の部分はおそらく柳、紫の部分はおそらく藤の花とのことです。

大作になればなるほど、その物理的なサイズ感により、

どうしても圧迫感、重厚感のようなものが加わってしまうものですが。

この 《レ・ボー・ド・プロヴァンスの庭》 に関しては、

もちろん迫力はあるものの、肩ひじ張らない洒脱な印象も受けました。

耳を澄ますと、ポール・コックスの鼻歌が聴こえてくるような。

楽しんで描いたであろうことが、画面全体から伝わってくるようでした。

 

なお、こちらの展示室では、《レ・ボー・ド・プロヴァンスの庭》 以外にも、

ポール・コックスが近年特に力を入れているという風景画の数々が紹介されています。

 

 

 

 

どの絵もきっとサラサラッと描かれているのでしょうが、

どの絵ももれなくセンスがいかんなく発揮されています。

 

 

 

構図といい、トリミングといい、色使いといい。

センスがキレッキレ。

もし自分が絵を描く仕事をしていたら、

このセンスの塊のような作品群を目にして、

打ちひしがれていたであろう予感がします。

一般人の一アートファンでよかった。

そう心から安堵する展覧会でした。

星星

 

 

ちなみに。

展覧会タイトルに “つくる” だけでなく、“つながる” とあるのは、

ポール・コックスが参加型インスタレーションも多く発表していることに由来します。

今展でも、新作の参加型インスタレーションが発表されていました。

 

 

 

その名も、「えひらがな」。

棚に並べられているスタンドは、

それぞれひらがな1文字に対応しています。

 

 

 

例えば、こちらの平安貴族のような女性は・・・・・

 

 

 

『を』 に対応しています。

 

 

 

これらを並べて、自分だけの新しい言葉を作る。

そんな参加型インスタレーションです。

 

なお、用意されているスタンドは、全部で118点。

ポール・コックス自身がすべての単語を選び、

このためにすべてイラストを描きおろしたのだそう。

フランスと日本とで、絵のニュアンスが違うものもあり、

言葉作りせずとも、イラストを眺めているだけでも十分楽しかったです。

例えば、『ふ』 の富士山。

 

 

 

すそ野がびろーんと広がっていました。

日本人であれば、こんな風に富士山を描かないかと。

 

あと、『へ (=屁)』 の描き方も印象的でした。

 

 

 

日本の漫画では見ないタイプの屁の表現。

「ぷっ」 というよりも、「ぼふっ」 という感じ。

出した本人も確認せずにはいられないようです。

 




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