寺田倉庫株式会社が主催する現代アートのアウォード、
それが、TERRADA ART AWARD。
いつの時代にも存在する “一握りの天才” を見出すためのアウォードです。
条件は、「作家としての展示発表歴が1年以上10年未満」 であること。
日本語でコミュニケーションさえ取れれば、国籍は関係なし。
発表する形式も、絵画や写真、映像などの平面作品に限定せず、
彫刻やインスタレーション、パフォーマンスや音楽でも現代アートであれば何でもありです。
毎回、多くの現代アーティストがエントリーしており、
今年2021年は、国内外1346組からの応募があったのだとか。
その中から厳選な審査を経て、見事ファイナリストに選ばれた5組の作品が、
現在、寺田倉庫の “TERRADA ART AWARD 2021 ファイナリスト展” 特設会場で公開中です。
さて、このTERRADA ART AWARDは、M-1グランプリとは違って (?)、
ファイナリストの中からチャンピオンを決める大会というわけではありません。
その代わり・・・・・・・
5組のファイナリストの中から1組に、
一般投票を通して、オーディエンス賞が与えられます。
ファイナリストに選ばれた時点で、
すでに5組全員に賞金300万円が授与されていますが。
オーディエンス賞に選ばれると、さらに追加で100万円が授与されます。
・・・・・・・・・・・これは責任重大。
100万円がかかってるとなると、気軽な気持ちで投票できなくなりました。
皆様の生活がかかっているわけですし、ここはひとつ、
M-1の審査員くらいの意気込みで、真剣に審査することにいたしましょう。
1人目は、川内理香子さん。
ネオン管を使った立体作品が、
どこか人間の動脈を彷彿とさせるものがありました。
空間もピンクのトーンで統一されており、
全体的には体内をイメージしているのかもしれません。
ただ、個人的に気になってしまったのが、こちらの針金を使った立体作品。
手や足を表しているのかもしれませんが、
物質感的に、どうしても泡だて器のようにしか思えず。
全体的な統一感から、この作品だけが浮いてしまっているように感じられました。
92点。
2人目は、久保ガエタンさん。
江戸時代に、天王洲の近くで鯨が打ち上げられたという事実に着想を得た作品。
「世界でもっとも孤独な鯨」 とされる52ヘルツの周波数で鳴く鯨の声を、
会場外にある桟橋に転送し、海中スピーカーによって音を流し続けているそう。
また、海中マイクによって拾った海の中の音を会場に転送し、
その音声を映像変換するスペクトログラムという手法で会場に映し出すというもの。
やってる内容はとても面白かったのですが、
全体的な空間の見た目は、ゴチャゴチャしていたような。
見た目だけ言えば、若干文化祭の出し物っぽかったです。
置いてあった椅子は、パイプ椅子でしたし。
95点。
3人目は、スクリプカリウ落合安奈さん。
落合さんは2019年にベトナムのホイアンという街で、
日本の方角を向いて立っているという江戸時代の商人の墓と出合ったのだそう。
詳しいことはわかっていないそうですが、そのお墓には様々な言い伝えがあるのだとか。
彼にはホイアンにベトナム人の婚約者がいたようなのですが、
江戸時代の鎖国政策によって強制的に日本に帰国させられてしまったとのこと。
しかし、国境を超えるほどの愛の持ち主だったようで、
なんとかベトナムに戻って婚約者に再会したとかしなかったとか。
そんな一人の日本人男性のお墓を出発点にして、
人と人を隔てる物理的、精神的境界線を考えさせる映像インスタレーションです。
内容としては重くなりそうテーマなのですが、
重さを感じさせず、しなやかに見せる手法に好感を抱きました。
海の映像が投影されるカーテンが、時どき風に揺れる演出など、
空間全体や映像そのものへの細部へのこだわりも随所に感じられます。
トータルバランスが素晴らしい!
98点。
4人目は、持田敦子さん。
そう広くないスペースに、らせん階段を無数に配置したインスタレーション作品です。
見た目のインパクトは、5作品中ピカイチ!
仮設感丸出しながら、実際に人が乗っても大丈夫なように設計されています。
なので、下から上から、いろんな目線で楽しむことができる作品です。
寺田倉庫のこの空間とのマッチしてましたが、
この螺旋階段で空間を埋めるというアイディアは、
もっと広い空間のほうが、よりマッチするような。
あるいは、和風建築のような全く異色の空間のほうが、
これ以上のインパクトがあって、面白いことになりそうな気がしました。
まだまだ伸びしろを感じる作品。
階段でいえば、3段目くらい。
94点。
5人目は、山内祥太さん。
人間とテクノロジーの恋愛模様をテーマにしたパフォーマンスインスタレーション。
こちらの 「皮膚の服」 を通じて・・・・・
人間とテクノロジーが一体化するという作品です。
パフォーマンスの光景は、まるで 『攻殻機動隊』 のような、
はたまた、『マトリックス』 シリーズのような、近未来感がありました。
技術力のスゴさは、ひしひしと感じましたが。
なにゆえ、テクノロジーのアイコンが、ゴリラだったのか??
パフォーマーの女性とゴリラの動きが連動していたところで、
『シェイプ・オブ・ウォーター』 のような種族を越えた愛は特に感じませんでした。
90点。
・・・というわけで、僕個人としては、
スクリプカリウ落合安奈さんに一票。
果たして、オーディエンス賞に誰が選ばれるのか興味津々です。
ついでに、この記事を通じて、僕に審査員のオファーがあるかどうかも興味津々です。