現在、代官山ヒルサイドフォーラムでは、
“マリー・ロージー展” という展覧会が開催されています。
こちらは、フランス生まれのアーティスト、
マリー・ロージー (1961~) の日本初となる展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
出展作品は、約70点。
これらはすべて日本初公開です。
逆説的ではありますが、
彼女の作品の特徴は、特徴がないこと。
・・・・・と言っても、無個性というわけではありません。
作風があまりにも多彩すぎて、
一言ではとても言い表せられないのです。
スピード感がありすぎて、もはや手ブレ画像のようにも見える作品もあれば、
写実的なタッチとドローイングが共存するシュールな作風のものや、
フランシス・ベーコンをどこか彷彿とさせるポートレート、
さらには、《真珠の耳飾りの少女》 など古典絵画をモチーフにした作品も。
また、彼女は描くモチーフも多彩で、人物に限らず、
猫や犬などの動物や、海辺や池といった風景も描いています。
作風やモチーフこそ、バラバラですが。
一つだけ確実に言えるのは、
1枚としてわかりやすい作品はありません。
どの絵も、どこか謎めいてミステリアス。
どの絵も、一筋縄でいかない複雑さがあります。
まるで難解なフランス映画を観ているよう。
ただ、難解だからといって拒否反応が起きるわけではなく。
むしろその逆で、気になって気になって、
ついつい作品に引き込まれてしまうのです。
観れば観るほど、想像力が刺激される。
それが、マリー・ロージー作品です。
ちなみに。
作品だけを観ていた状態では、
彼女に対して、どこか近寄りがたい印象を受けていましたが。
実際の彼女の写真を見るに、笑顔がとてもチャーミングな人物でした。
ちょっと牧瀬里穂っぽいです。
実は、マリー・ロージーは画家の活動と並行し、
30年近くにわたって、パリの公立小学校で美術教師を続けているのだそう。
どうりで笑顔が優しげなわけですね。
なお、彼女の写真に映り込んでいるのは、
“近代絵画の父” ポール・セザンヌの肖像画。
というのも、マリー・ロージーとセザンヌには深い関係が。
なんとマリーはセザンヌの玄孫 (=孫の孫) に当たるのだとか!
偉大な芸術家のDNAを受け継いでいるというのは、
普通に考えたら、相当なプレッシャーがかかっているはず。
しかし、それをまったく感じさせないのも、彼女の魅力です。
高祖父のセザンヌと似たようなモチーフを選んでも、
単なる模倣ではなく、必ず現代風にアップデートを図っています。
↑どういうシチュエーションなのかは、
マリー・ロージー本人に聞いてみないとわかりませんが。
個人的には、テーブルの上の静物たちと、
テーブルクロスが超高速移動しているように見えました。
もしかしたら、テーブルクロス引きを、
超スーパースローカメラで撮影したら、こんな感じになるのかもしれません。