“いちはらアート×ミックス2020+” の旅の締めは、市原湖畔美術館へ。
こちらで開催されていたのは、“戸谷成雄 森―湖:再生と記憶” という展覧会。
国内外で活躍する現代彫刻家のレジェンド、戸谷成雄さん (1947~) の展覧会です。
戸谷さんといえば、チェーンソーで木材を刻み、
その表面に灰を塗るという独創的な作品で知られる彫刻家。
彼はその作品群を、「森」 シリーズと名付けています。
そんな戸谷さんの 「森」 シリーズの中から、
今展では、特に代表作というべき 《双影景》 や、
《地霊Ⅳ》 が出展中。
吹き抜けのある巨大空間に、
ダイナミックに配置されていました。
チェーンソーで作られた作品とだけ聞くと、
荒々しく、暴力的な印象を受けるかもしれませんが。
戸谷さんの作品は、むしろその逆。
理知的で哲学的な雰囲気を帯びています。
動ではなく、静。
まさに森のような気配を漂わせています。
さてさて。
今展には、《双影景》 や 《地霊Ⅳ》 の他にも、
どこか先住民族の壁画を彷彿とさせる幅3m×高さ4mの 《水根II》 や、
雷に打たれた樹の姿をモチーフにしたという 《雷神-09》 といった、
超大型の作品も出展されていました。
そのスケール感に圧倒されること必至!
物理的な大きさもさることながら、
歴史の重みのようなものも感じられます。
美術品というよりは、何かしらの遺跡のよう。
一人の人間が作ったというよりは、
何かしらの古代文明が作り上げたかのような、印象を受けることでしょう。
なお、個人的にもっとも印象的だった作品は、
1つの展示室をまるまる使って展示されていた新作 《視線体―散》 です。
展示室の中央に鎮座 (?) するのは、立方体の彫刻。
その全ての面がチェーンソーによってえぐり取られていました。
また、おそらく何かしらの規則にのっとって、
壁一面にびっしりと設置されているのは、無数の木片。
観れば観るほど、ボルダリングジムに思えてきました。
作品に手を触れるのはもちろん禁止ですが、
無性に手や足を木片にかけてみたい衝動に襲われました。
ちなみに。
市原湖畔美術館には何度も訪れていますが、
日没近くの時間帯に美術館を訪れるのは、今回初めて。
夜になると、外壁がライトアップされることや、
KOSUGE1‐16の 《Heigh-Ho》 が光るのを初めて知りました。
初めて知ったと言えば、こちらの作品も。
木村崇人さんの 《星ぶどう》 という作品です。
突然ですが、皆様、木漏れ日はどんな形をしていると思いますか?
葉と葉の隙間の形なんて、木や葉の重なり方によってそれぞれ。
そう、思っている方もいらっしゃるでしょうが、
実は、木漏れ日はもれなく、丸い形をしているのだそうです。
その理由は、太陽が丸いから。
ピンホールカメラと同じ原理で、
葉と葉の隙間を通じて、太陽の形が投影されているのだそう。
ということは、光源の形が変われば、木漏れ日の形も変わるわけです。
その原理を応用したのが、この 《星ぶどう》 という作品。
ぶどう棚の上から星形のライトを照らすことで、
地面に無数の星がきらめく木漏れ日が投影されるそうです。
残念ながら、冬場のためぶどう棚に葉は一枚もな無く、
美術館の方が、簡易的にその様子を再現してくれました。
なんてロマンティックで、なんてエモい作品なのでしょう!
なお、美術館の開館時から野外に設置されているとのことですが、
僕も含め、多くの人がこの作品の存在に気付いていないようです。。。
というのも、作品の見た目は、単なる電灯のようだから。
日中に目にしたところで、夜にこんな光景が生み出されようとは、誰が想像できようか。