今年2022年は寅年。
ということで、赤坂にある虎屋の本店へ。
寅年のお正月だけに、ガラス面には、
立派な虎柄の凧がディスプレイされていました。
そんな虎屋本店の地下1階にある虎屋 赤坂ギャラリーで、
現在開催されているのが、“とらやと楽しむ寅年” という展覧会です。
5世紀 (!) にも及ぶ歴史の中で、
さまざまな形で虎のモチーフを使ってきたという虎屋。
そんな虎屋の虎にまつわるエピソードの数々を紹介する展覧会です。
虎屋と聞いて、大半の方が頭にまず浮かべるのは、
おそらく、虎がデザインされたこの手提げ袋ではないでしょうか。
実はこの手提げ袋には元ネタ (?) となるものがあったのだとか。
それが、こちらの安政5年 (1776) 製の雛井籠です。
雛井籠とは、雛菓子用の井籠のこと。
中に直径1.5㎝ほどの小さな菓子を入れ、宮中などに納めていたそうです。
昭和45年、この雛井籠に描かれた虎が、
工芸家の永井鐵太郎によって、手提げ袋のデザインに取り入れられたそう。
以来、若干の変更を加えながらも、手提げ袋は、
現在もなお虎屋のアイコンとして使われ続けているのです。
そんなに歴史のある手提げ袋だったのですね。
ちなみに。
会場では、虎屋が所有する中でもっとも豪華な井籠、
元禄11年 (1968) 製の 《竹虎青貝井籠》 を再現したものも紹介されていますした。
再現とはいっても、単なるレプリカではなく。
現代の職人が高い技術力で忠実に再現したものです。
きっと日本一ゴージャスなお菓子のパッケージなのではなかろうか。
蓋を開けたら、お饅頭で隠すことなく、
ダイレクトで小判がびっしり入っていそうな気がします。
さて、パッケージと言えば、こんなものも。
こちらは、虎がデザインされた掛紙で、
今もなお印籠杉箱に入った羊羹に掛けられているそうです。
さて、その掛け紙の左下にご注目。
そこには、『鉄道人寫 (=旧字の写)』 のサイン。
さらに、落款には 『鐵齋』 とあります。
そう、こちらの掛け紙の虎を描いたのは、
日本最後の文人と謳われる巨匠・富岡鉄斎です。
そんなビッグネームによる虎の絵だったとは!
もし、印籠杉箱入りの羊羹を戴く機会があったら、
掛け紙は捨てずに、大切に保存しておこうと思います。
展覧会では他にも、虎をモチーフにした和菓子の数々や、
かつて店舗にディスプレイされていたという福島県の三春張子の虎などが紹介されていました。
虎と関わり深いお菓子メーカーといえば、
アメリカにトニー・ザ・タイガーのケロッグ社がありますが。
いやいや、日本には約500年の歴史を誇る虎屋があるじゃないか!
と、なぜかちょっとだけ誇らしい気持ちになれる展覧会でした。
なお、ディスプレイや展示品に若干の違いはありますが、
東京ミッドタウン店ギャラリーでも、“とらやと楽しむ寅年” が開催されています。
最後に、ちょっとした虎ビア・・・もとい、トリビアを一つ。
虎屋のロゴマークの 『虎』 の字の中は、「七」 ではなく、「土」。
少なくとも延宝2年 (1674) から、この異字が使われているそうです。
いやはや、今回の展示で教えてもらうまで、『虎』 の字だとばかり思い込んでいました。
普段から、もっと虎視を耽々とさせねば。