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■白光
作者:朝井まかて
出版社:文藝春秋
発売日:2021/7/26
ページ数:498ページ
「絵師になります」
明治5年、そう宣言して故郷の笠間 (茨城県) を飛び出した山下りん。
画業への一途さゆえに、
たびたび周囲の人々と衝突するりんだったが、やがて己に西洋画の素質があることを知る。
工部美術学校に入学を果たし、西洋画をさらに究めんとするりんは、
導かれるように神田駿河台のロシヤ正教の教会を訪れ、宣教師ニコライと出会う―。
日本初のイコン画家、画業に捧げた生涯。
(「BOOK」データベースより)
「展覧会などで彼女の作品を目にした記憶はありませんが。
日本初のイコン画家・山下りん。
その名前くらいは知っていました。
ただ、『イコンを描く=敬虔で穏やかな人物』 と、勝手に決めつけていました。
あと、名前だけ見ると、アイドルグループのメンバーっぽいので、可愛らしい印象を抱いていました。
が、しかし!
この小説を通じて、彼女になんとなく抱いていた偶像 (?) が脆くも崩れ去りました。
こんなにも芸術家肌の人物だったとは!
キャラの濃い人物だったとは!
茨城県の笠間に生まれた山下りん。
どうしても絵描きになりたいと、
母や兄の猛反対を押し切り、家出同然で東京へと旅立ちます。
時は明治5年。
今のように車もなく電車もなく、
4日かけて山道を歩いて、東京へと向かいます。
その過酷な行程の描写は、まるで冒険譚のよう。
波乱の画業の幕開けです。
ただ、東京への行程は、
彼女の冒険譚においては序の口にすぎません。
というのも、やがて彼女は、本場でイコンを学ぶため、
日本人女性としては初めて極寒のロシアへと渡ることとなるのです。
このあたりから、読書中、僕の脳内では、
山下りん=イモトアヤコでお届けされるようになっていました。
よく言えば、一途。悪く言えば、頑固。
その性格が災いして、留学先のロシアでは、
イコンを教える修道女たちと、たびたび衝突します。
何を言われても折れない山下りん。
当初は、応援しながら読んでいましたが、
あまりにも自分を主張しすぎるので、途中から読んでて応援する気持ちが薄れてきました。
いや、もう少し大人になれよ、と。
正直なところ、あと一歩のところで読むのを辞めようかとも思いましたが。
なんとか踏みとどまって、最後まで読みました。
結句、読み進めて良かったです。
ロシアでの辛い時期が、ちゃんと物語終盤で回収されました。
これから読まれる方も、どうぞ途中で投げ出しませぬよう。
山下りんもさることながら、
彼女を取り巻く人物にも魅力的なキャラクターがちらほら。
例えば、山下りんの師匠となる洋画家・中丸精十郎。
名前や作品は何度か目にしていましたが、
こんなにも飄々とした人物だったとは知りませんでした。
ドラマ化するとしたら、ムロツヨシあたりが適役でしょう。
それから、ニコライ堂の名前にもなっている宣教師のニコライ。
山下りんの人生にとって最も重要な人物である彼は、
人柄も良く、ユーモアもあり、東北弁なまりの日本語を話す人物として描かれていました。
ドラマ化するとしたら、ダニエル・カールあたりが適役でしょう。
なぜ、イコンは伝統的な描き方をされているのか。
当然、エルミタージュ美術館を有するロシアだって、
ルネサンス美術以降のスタイルを目にしているわけです。
にもかかわらず、あえて稚拙にも見えるような伝統的なスタイルで描かれています。
そのことに対して、西洋美術を学びたい若き日のりんは反発しました。
しかし、のちに彼女は、イコンは美術品ではなく、
人々の信仰の対象であったのだと、気が付きます。
イコンにおいては、美を求めることが正しいわけではなかったのですね。
そう考えたら、数年前にスペインでおばあちゃんによって、
修復されたあのキリスト像も・・・・・いや、あれはまた別の話ですね。
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~小説に登場する名画~
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