重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝を中心に、
染織や漆芸、金工といった伝統工芸の作家・技術者などで構成された団体。
それが、1955年に発足した日本工芸会です。
その一角を担う日本工芸会陶芸部会が設立されて今年でちょうど50年。
それを記念して、現在、パナソニック汐留美術館では、
“未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展” が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
出展されている作家のほとんどが、もちろん陶芸部会所属の作家です。
1955年に初の人間国宝となった富本憲吉や荒川豊蔵といった陶芸界のレジェンドや、
富本憲吉 《色絵金銀彩四弁花染付風景文字模様壺》 1957年 東京国立近代美術館蔵
荒川豊蔵 《志野茶垸》 1957年 東京国立近代美術館蔵
前田昭博さんや十四代今泉今右衛門といった現在の陶芸界を牽引するトップランナー、
前田昭博 《白瓷壺》 2012年 東京国立近代美術館蔵
十四代今泉今右衛門 《色絵雪花薄墨墨はじき萩文鉢》 2019年 個人蔵
さらには、和田的さんら実力派ニューカマーも余すことなく紹介されています。
和田的 《白器 ダイ/台》 2017年 茨城県陶芸美術館蔵
その数、驚異の137名!
空前絶後の規模となる陶芸展です。
よくぞこれほどの豪華メンバーの、
それも力作を集めたものだと、ただただ驚くばかり。
まるで陶芸家の百科事典のような展覧会でした。
日本陶芸界の巨匠の作品から、
日本陶芸界の期待のホープの作品まで。
あらゆるバリエーションの作品が取り揃えられているだけに、
陶芸にそこまで興味がないという方でも、どれか一つくらいは気に入る作品が見つかるはず。
ちなみに。
個人的にお気に入りだったのは、
井戸川豊さんの 《銀泥彩磁鉢》(手前)です。
おそらく世界で唯一であろう、
カイワレをモチーフにした陶芸作品です。
鉢の形状や線彫りもカイワレから着想を得ているのだとか。
カイワレがこんなにも主役を張るのは、
O‐157騒動で、菅直人総理が必死の形相で大量に食べてた以来ではないでしょうか。
それから、日本工芸会と勢力を二分する存在として紹介されていた日展、
その代表作家である板谷波山の 《葆光彩磁和合文花瓶》 も印象的でした。
なんとなく。あくまで、なんとなくですが。
吉野家の丼を彷彿とさせるものがありました。
そのせいで、無性に牛丼が食べたくなって、
鑑賞後は、新橋駅前の吉野家に直行しました。
と、見ごたえたっぷりの展覧会だっただけに、
唯一残念に感じられたのが、こちらの展示ケースです。
横に長いのは良いのですが、
なぜか高さがあまり取られておらず。
椀型や壺型の作品の見込みを観ようとすると・・・・・
展示ケースの上部に邪魔されてしまうのです。
見えそうで見えない。
焦らしプレイを駆使する展覧会でした。