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Comic:1 『ジェリコー』

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■ジェリコー

 

 作者:中原 たか穂
 出版社:KADOKAWA 
 発売日:2021/12/22
 ページ数:260ページ

1816年、フリゲート艦 “メデューズ号” がモーリタニア沖で座礁する。

急ごしらえの救命ボートの筏は150名近くを乗せ、

13日間漂流したあげく他の船によって発見されたが、生存者はわずか15名にすぎなかった。
時のフランス復古王政政府はこの事件をひた隠しにしたが、

漂流期間中、筏の上では殺人、食人を含む様々な非人間的行為が行われたことが明るみに出てしまう。
ショッキングなこの事件を題材に大作を描き、

サロンでスキャンダルを巻き起こしたのはテオドール・ジェリコー。

彼はいったいこの事件に何を見たのか。

「起こったことを精確に描く」 ため、死体をアトリエに置き観察するなど、

常軌を逸した行いに世間は戦慄するが、ジェリコーは人間の本性を暴き出そうとする、

その真摯なまでの信念に突き動かされていく。

19世紀初頭、ロマン主義、印象派などに先駆けて、

「近代絵画の先駆者」 といわれる画家の、人間の本質へと迫る半生を描く。
(「BOOK」データベースより)

 

 

「この企画で芸術家を主人公にした漫画を紹介するのは、なんだかんだで初めてですね。

 たくさんいる画家の中から、なぜテオドール・ジェリコーを主役に?

 めちゃくちゃ気になったので、

 書店の新刊コーナーで見かけて即買いしました。

 この1巻でストーリーが完結しているというのもありがたい限りです。

 

 ジェリコーについては、なんとなく知った気になっていました。

 彼の代表作である 《メドゥーズ号の筏》 についてもまた然り。

 

 ところが、この漫画を読んで、あくまで知った気になっていただけで、

 ジェリコーに関しても 《メドゥーズ号の筏》 に関しても何も知らなかったことを痛感させられました。

 

 金持ちの家に生まれ、暮らしに何一つ不自由がなく、

 その上、自他ともに認めるほどのイケメンだったジェリコー。

 勝ち組も勝ち組だった人生が、

 美術の世界との出会いによって、大きく狂うこととなります。

 美術に憑りつかれて、ジェリコーがダークサイドへと堕ちていく様は、

 絵のタッチこそ全然違いますが、まるで 『笑ゥせぇるすまん』 を読んでいるかのようでした。

 

 なぜ、ジェリコーは、グロテスクなまでに、

 人間の黒い部分、本性を描き出そうとしたのか。

 漫画ではその一つの理由として、

 伯母との只ならぬ恋の顛末が紹介されていました。

 昼ドラよりも、ドロドロ。

 Netflixのドラマくらいドロドロしていました。

 

 返す返すも残念なのは、

 ジェリコーが32歳というこの世で若さを去ったこと。

 漫画には弟弟子として、ドラクロワも登場しますが、

 もし、ジェリコーがあと少し長生きしていたら、ドラクロワは今ほど評価されていなかったかも。

 《民衆を導く自由の女神》 も誕生していなかったかもしれません。

 

 とにもかくにも、この漫画を読むと、

 怖いもの見たさもありますが、無性にジェリコーの絵画が見たくなります。

 ざっくり調べてみたところ、日本で大々的に、

 ジェリコー展が開催されたのは、1987年のただ1回だけのよう。

 この漫画がもっと話題になって、ジェリコー展が再び日本で開催されますように。

  スター スター スター スター ほし(星4.0)」

 

 

~小説に登場する名画~

《メドゥーズ号の筏》

 

 

 

 


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