ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで開催中の展覧会、
“浜口陽三、ブルーノ・マトン展―ひとつ先の扉” に行ってきました。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
こちらは、フランスを拠点に活動した浜口陽三の銅版画作品約20点とともに、
浜口陽三 《2匹の蝶》 1977年頃 メゾチント、紙 15.5×15.4cm
フランス人芸術家ブルーノ・マトン (1938~2020) の銅版画を紹介する展覧会です。
日本の文化や芸術、特に工芸に関心を抱き、
1990年代以降、日本をたびたび訪れていたというブルーノ。
日本の美術館や芸術祭などで作品を発表した機会はあるようですが、
これほどの規模で彼が取り上げられるのは、都内の美術館では初めてとのことです。
銅版画を手掛けるようになった頃の初期のシリーズは、
洒脱で、シュルレアリスムのように謎めいている作風でしたが。
続く 「隠された音叉」 シリーズでは、作風が一変。
どこかホッパーを彷彿とさせるような。
どこかハマスホイを彷彿とさせるような。
どこかヴァロットンを彷彿とさせるような。
ブルーノ・マトン 《チェスクラブ 「隠された音叉」より》 1994年 アクアチント、紙 25.0×24.8cm
ブルーノ・マトン 《熱上昇「隠された音叉」より》 1994年 アクアチント、紙 19.8×19.8cm
しかし、彼らの作風と決定的に違うのは、
画面に人が描き込まれていないのにも関わらず、
人の気配、それも温かい気配が感じられるという点です。
こんな素敵な作家がいたのですね!
今まで知らなかったことを後悔するほどに、
ブルーノ・マトンの作品の虜になってしまいました。
“もっとブルーノの作品を!”
はやる気持ちを抑えながら、先に進むと、
「隠された音叉」 シリーズから15年後、2010年代の作品が展示されていました。
・・・・・・あれ?え??同じ人??
ブルーノ・マトン 《「Composition」より》 2011年 エッチング+彩色、紙 10.5×16.6cm
これはこれで味わい深いのですが、
あまりのキャラ変ぶりに、戸惑いは隠せませんでした。
シンプルをストイックに追求した結果、
これ以上削ぎ落せないという極限に辿り着いたのでしょうか。
禅の境地のようなものを感じる作品でした。
日本人作家よりも日本人らしい作品と言いましょうか。
今展は、浜口陽三とブルーノ・マトンとの二人展と聞いていましたが、
浜口陽三とブルーノ (前) とブルーノ (後) の三人展といっても過言ではありません (←?)。
ちなみに。
展覧会のラストに待ち受けていたのは、
「なぞなぞ・絵と言葉のかくれんぼ」 というコーナーです。
こちらは、ブルーノの小さな線のシリーズを目にして、
ブルーノ・マトン 《無題》 2004~2005年 エッチング、紙 9.7×14.3㎝
谷川俊太郎さん、大岡亜紀さんの2人の詩人が、
思い浮かんだ言葉を同じ空間で紹介するというもの。
なお、会場の一角には、こんなコーナーも。
ブルーノの小さな線のシリーズを観て、
鑑賞者が頭に浮かんだ言葉をシェアする参加型のコーナーです。
谷川さんや大岡さんらプロの言葉を観た後に、
自分なんかが言葉を書くなんて、おこがましいものがありましたが。
せっかくなので、自分も頭に浮かんだ言葉を短冊に書いて結んできました。
館の人に撤去されない限り、短冊はかけられているはずです。
さてさて。
展覧会を観終わったら、併設されているカフェ ミュゼアッシュ (Cafe Musee H) へ。
美術館に来たら、必ず食べて帰るのが、
ヤマサの黒蜜風醤油をバニラアイスに混ぜ込んだマーブル醤油アイス。
ここでしか食べられない絶品のメニューです。
今回ももちろん、マーブル醤油アイスを食べようと・・・・・思ったのですが!
展覧会のイメージに寄せて作られたプチガトーのセットに、心を奪われてしまいました。
なお、このプチガトーは田園調布のプチカヌレ専門店COMME PARIS[コムパリ] のもの。
額縁をイメージしたオシャレなお皿は、
ガラス作家・小池志麻さんが今回のために制作したオリジナルとのこと。
目も舌も楽しめる、まさに芸術的な一皿です。