岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」 を問うための賞。
それが、岡本太郎現代芸術賞。通称TARO賞。です。
国籍、年齢の制限はなし。
プロアマ問わず誰でも応募可能となっています。
さらには、表現の技法も一切制限なし!
高さ5m×幅5m、もしくは、奥行き5m以内であれば、平面でも立体でもOKです。
記念すべき、25回目となる今回は、
昨年からは、若干減少し、578点の応募があったそう。
その中から厳正な審査を経て、24名 (組) が入選を果たしました。
なお、彼ら彼女らの作品は、川崎市岡本太郎美術館にて、
例年よりも会期が長く、約3か月にわたって展示されるようです。
さてさて、昨年は当時高校3年生だった大西茅布さんが、
史上最年少でグランプリに当たるTARO賞を受賞し、大きな話題となりましたが。
今年受賞されたのは、刺繍作家の吉元れい花さんです。
刺繡作家がTARO賞を受賞するのは史上初。
さらに、女性の年齢に触れるのはデリカシーがないですが、
吉元れい花さんは史上最年長でのTARO賞受賞者となるそうです。
昨年のM-1では、錦鯉が優勝し、
最年長チャンピオンとして話題となりましたが。
TARO賞も同じようなことが起きていました。
なお、吉元さんがTARO賞に応募したのは今回が3回目。
しかも、前回からだいぶ年月が空いてしまったとのこと。
なので、当初は、ノーマークな存在だったそう。
ところが、結果としては、作品の圧倒的パワーにより、
ダークホース的に、満場一致でTARO賞を受賞することに。
M-1でいえば (←?)、ミルクボーイ的なチャンピオンでもあるようです。
ちなみに。
吉元さんは、刺繍作家になる前はダンサーだったそう。
まるで即興ダンスを踊るように、
アグレッシブに針を動かして刺繍しているそうです。
それゆえ、表側ではそうは感じられませんが、裏側はこんな状態に。
刺繍作品では裏側を見せるのはタブー、
刺繍作家にとっては恥部とのことですが、
吉元さんは今回の作品で、あえてその裏面も曝け出したのだとか。
隠されるべきものを、堂々と曝け出す。
なんとなく 『全裸監督』 に通ずるものがありました。
さて、準グランプリに当たる岡本敏子賞を受賞したのは、三塚新司さん。
作品名は、《Slapstick》。
バルーンで作られた巨大なバナナの皮は、
それ以上に巨大なナニモノかが転倒したことを暗示しているのだそう。
パッと見、バカバカしい作品かと思ってしまいましたが、
実はシンプルながら、深いメッセージが込められた作品です。
なお、この 《Slapstick》 以外にも、今回の受賞作の中には、
堀川すなおさんの 《絵画:バナナ#550-554“バナナ#3.(28)F.観察;日本人#1”読み;val2010-11
ドローイング:“バナナ#3.(28)F.観察;日本人#1”解;バナナ#570-605.21》 や、
人体をリンゴに喩えた張安迪さんの 《皮・肉・芯》 といった作品も。
いつになく、フルーツ率の高いTARO賞でした。
原油とそれに群がる人々を、チョコレートファウンテンに例えた、
角文平さんの 《Fountain》 というインスタレーション作品もありましたし。
もしかしたら、審査員の中に、
甘党の人物がいるのかもしれません。
なお、特別賞に輝いたのは、藤森哲さんの 《往日後来図》 や、
伊藤千史さんの 《書店レジ前の平台》 を含む全4作品でしたが。
個人的には、メキシコ在住の岡田杏里さんのカラフルでパワフルな作品や、
この数年の出来事を絵巻物風に描いた因幡都頼さんの 《幸辛物語》 が強く印象に残りました。
《幸辛物語》 の中には当然、コロナ関連のモチーフも。
それらに混じって、あの人も描かれています。
現実世界では小さなマスクでしたが、
この作品の世界線では、大きなものとなっていました。