2019年より長期休館していた白金台の松岡美術館が、
先月、約2年8か月ぶりに無事に再オープンを果たしました!
外観は特に以前と変わっていません。
そして、内部の光景も、以前と同じままです。
厳密にいえば、1階ロビースペースに新たに、
古代ローマ時代の貴重な彫刻 《アルテミス》 が常設されていましたが。
目に見えた変化は、それくらいなものです。
とはいえ、この長期休館中、
松岡美術館は何もしていなかったわけではありません!
コレクション作品の一斉調査に加え、
もともとの館内のイメージをなるべくそのままに保ちつつ、
空調や天井、壁といった設備をクリーニングしたそうです。
さらに、館内照明もすべてLED化されました!
確かに、明らかにリニューアル前より、
展示室内が明るい印象になっていました。
以前は、どれだけ晴れの日に訪れても、
なぜか空間全体が軽くセピア色っぽく感じられていましたっけ (※個人の感想です)
まるで昭和のブラウン管テレビから、
最新の8Kテレビの映像になったような。
それほどの劇的ビフォーアフターです。
ちなみに。
副館長さん曰く、リニューアル前より、
作品がくっきり色鮮やかに見えるようになったそう。
例えば、こちらの仏像。
かつて表面に彩色されていた跡が残っていたことに、
現在の照明のもとで観て、初めて気が付いたそうです。
さて、そんな新生・松岡美術館の開幕を飾るのが、
“再開記念展 松岡コレクションの真髄” という展覧会。
約1800点に及ぶ松岡美術館コレクションの中から、
創設者である松岡清次郎が特に愛した屈指の名品ばかりを紹介する展覧会です。
本展の核となるジャンルは、3つ。
1つは、古代ギリシア・ローマの大理石彫刻群。
日本の私立美術館ではなかなかお目にかかれない、
貴重な古代ギリシア・ローマの大理石彫刻が一挙展示されています。
2つ目の核となるのは、日本画コレクション。
横山大観や下村観山といった明治以降の日本画を中心に紹介しつつ、
江戸琳派の酒井抱一といったオールドマスターの作品も展示されていました。
なお、3月8日より始まる後期には、
室町時代の重要文化財、伝周文 《竹林閑居図》 も出展予定とのこと。
約2年にも及ぶ修復後、初公開となるそうです。
そして、何より今展のハイライトともいえるのが、
松岡清次郎が特に力を入れて蒐集した東洋陶磁のコレクション。
展示されているのは、松岡美術館が所蔵する、
東洋陶磁コレクションの中でも特Aクラスの名品ばかり!
これほどまでにベストメンバーを一挙公開するのは、開館以来初とのことです。
中でもとりわけ見逃せないのが、《青花龍唐草文天球瓶》。
松岡美術館設立のきっかけとなった記念碑的な作品です。
この作品を収蔵するまでには、こんなエピソードがあります。
1974年4月、サザビーズのオークションに、
この 《青花龍唐草文天球瓶》 が出品されました。
どうしても落札したかった清次郎は果敢に攻めます
が、しかし、競りの相手はポルトガルの銀行王。
金に糸目を付けぬ相手に、さすがに負けてしまいました。
さて、その数か月後のこと。
落札した銀行王が、ポルトガルの政変により逮捕されてしまいます。
そこで、サザビーズより、2番手だった清次郎に、
購入する権利が移ったことを伝える電報が届きました。
その提示された価格に手数料が上乗せされていることを知った清次郎は、
商人の技を駆使して値下げ交渉し、見事希望額での購入に成功したのです。
と、値下げしたと言っても、その購入額は当時、
中国の美術品の落札価格としては歴代1位だったそう。
また、その同じ1974年に、別のオークションにて、
清次郎は 《青花双鳳草虫図八角瓶》 も落札しています。
こちらの落札価格は、当時の中国美術品の歴代2位とのこと。
そんな名品を2点も手に入れた以上、
多くの人に観てもらいたいと清次郎が設立したのが、松岡美術館なのです。
なお、この2つの中国陶磁の名品が、
同時に展示されるのは、実に7年ぶりとのこと。
奇跡の競演、見逃し厳禁です。
ちなみに。
今回のリニューアルに当たって、
新たなミュージアムグッズも誕生しています。
それが、こちらのマグネットとコースター。
どちらもこだわり抜かれた逸品です。
思わず 《青花龍唐草文天球瓶》 コースターを衝動買い。
1枚1200円とコースターとしては、ややお高めですが、
布地は丁寧に染められているので、クオリティを考えたら納得です。
何億もする 《青花龍唐草文天球瓶》 の本物と比べると、断然安いですし。