現在、Bunkamuraザ・ミュージアムでは、
“ミロ展―日本を夢みて” が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ピカソやダリと並ぶ、20世紀スペイン美術の巨匠ミロ。
国内では、その20年ぶりとなる大回顧展です。
今回のミロ展のテーマは、ずばり 「ミロと日本」。
実は、ミロに関する論文を世界で初めて発表したのは、
本国スペインやヨーロッパの研究者でなく、日本の瀧口修造だったそう。
つまり、日本は世界で初めてミロに目を付けた国と言っても過言ではないのです。
それゆえ。
福岡市美術館が所蔵するミロの大作、
《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》 を筆頭に、
ジュアン・ミロ 《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》 1945年 油彩、キャンバス 福岡市美術館
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
東京国立近代美術館や富山県美術館、ポーラ美術館など、
日本各地の公立私立美術館が数々のミロの名品を収蔵しています。
今展では、それらミロの名品が日本中から大集結!
これほどのベストメンバーを招集できたのは奇跡としか言いようがないでしょう。
さらに、国内だけでなく、スペインからも作品が多数来日しています。
その中でも特に目玉となるのが、《絵画(カタツムリ、女、花、星)》。
国立ソフィア王妃芸術センターが所蔵するミロの傑作です。
ジュアン・ミロ 《絵画(カタツムリ、女、花、星)》 1934年 油彩、キャンバス 国立ソフィア王妃芸術センター
Photographic Archives Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia, Madrid © Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
56年前に日本にやってきたこの大作が、
本展において、2度目の来日を果たしています。
また、再来日といえば、こちらの作品も。
ジュアン・ミロ 《焼けた森の中の人物たちによる構成》 1931年 油彩、キャンバス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
© Fundació Joan Miró, Barcelona © Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
なんとこの絵は、日本で初めて展示された記念すべきミロ作品なのです。
どうでもいいですが、右上に描かれている顔が、
なんとなく、ビートたけしさんに似ている気がしました。
さて、日本がミロのことを好きなように、
実は、ミロのほうも日本のことが好きだったそう。
ジュアン・ミロ 《アンリク・クリストフル・リカルの肖像》 1917年 油彩・コラージュ、キャンバス ニューヨーク近代美術館
© The Museum of Modern Art, New York. Florene May Schoenborn Bequest, 1996 / Licensed by Art Resource, NY
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
その証拠に、初期に手掛けたこちらの肖像画では、
ゴッホが描く肖像画のように、背景に浮世絵を描いています。
しかも、右下にあるミロのサインも、落款を意識しているようです。
また、ミロ自身は、その生涯で2度来日を果たしています。
1度目は1966年に東京国立近代美術館での回顧展の開催にあわせて。
2週間ほどの滞在中に、京都の龍安寺や桂離宮、
信楽や日本民藝館など、日本各地を精力的に巡ったようです。
なお、その間に毎日新聞東京本社も訪ねたそう。
本社ビルの建物竣工を祝い、こんな作品を送っています。
おそらく、「祝毎日」 と書きたかったのでしょう。
微妙にいろいろ違っていますが、ニュアンスは伝わりました。
書の作品なのに、ちゃんとミロの絵のように感じられるのがさすがです。
ちなみに。
1度目の日本滞在後に、ミロが描いた作品がこちら。
ジュアン・ミロ 《絵画》 1966年 油彩・アクリル・木炭、キャンバス ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
Fundació Pilar i Joan Miró a Mallorca Photographic Archive © Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
これはもう完全に書の影響を受けていますね。
異論は認めません。
さらに、1969年に大阪万博の際に2度目の来日。
その後に描かれた作品群がこちらです。
水墨画のような。禅画のような。
ミロといえば、色彩鮮やかなイメージが強いので、
これらのモノクロの作品群が、より新鮮に感じられました。
ミロと日本。
相思相愛な関係が明らかになる良い展覧会でした。
ちなみに。
ミュージアムショップでは、
さまざまなグッズが販売されていましたが。
個人的に一番気になったのは、こちらのトートバッグです。
このダジャレを言うヤツが絶対いるだろうなと思ったら、案の定。
「ミロを見ろ」 は 「ダリってダリ?」 と並ぶ美術ダジャレの2トップです。
┃会期:2022年〜
┃会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
┃https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/