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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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日本画のゆくえ-継承と断絶・模倣と創造

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現在、栃木県立美術館で開催されているのは、

“日本画のゆくえ-継承と断絶・模倣と創造” という展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

幕末から明治にかけて、

日本は大きな転換期を迎えました。

それは、美術界も然り。

西洋絵画が本格的に導入されました。

その西洋絵画 (洋画) に対する概念として、

それまで日本で伝統的に描かれていた絵画が、

日本画と呼ばれるようになったのです。

 

さて、そんな 「日本画」 が明治に誕生してから、早100数十年。

時代は大正、昭和、平成を経て、令和となりました。

栃木県立美術館は、今こそすべての日本国民に問います。

 

「日本画って何?」 と。

 

確かに、改めて考えてみると難問です。

洋画が導入された頃は、

明確に、洋画と日本画の違いはあったでしょうが。

日本画の画材を使っていれば、日本画なのか。

アクリル絵画を使っていても、日本的なモチーフを描いたら日本画ではないのか。

そもそも、フランスやイギリスなど他の国では、

自国の絵画を 「フランス画」「イギリス画」 とわざわざ呼んではいません。

考えれば考えるほど、「日本画」 というものがよくわからなくなります。

というか、そもそもこの定義はもう必要ないのでは?

 

そういったことを考える機会になればと、

開催されたのが、今回の展覧会なのです。

・・・・・とだけ聞くと、なんだか小難しい展覧会のように思われるかもしれないですが。

決して、そんなことはありません!!

 

本展では、現在活躍する11人の気鋭の日本画家の作品が紹介されています。

世代や性別もバラバラなら、

モチーフやスタイルもバラバラです。

 

 

 

比較的オーソドックスな日本画もあれば、

「えっ、これも日本画なの?」 と新鮮な驚きのある日本画もありました。

 

 

 

まさに、11人11様。

全員がそれぞれの個性を発揮していました。

11人のバランスも絶妙で、キャスティングが素晴らしかったです。

しかも、栃木県立の美術館の展覧会であるのに、

栃木県出身・在住の作家を選んでいないところにも好感を覚えました。

2020年は最下位、2021年は41位と、

「都道府県魅力度ランキング」 では振るわない栃木県ですが。

この日本画の展覧会の魅力度は、

確実に、かなり上位にランクインすることでしょう!

星星

 

 

さてさて、どの出展作家も、お世辞抜きで素晴らしかったですが、

個人的にイチオシしたいのは、大阪出身の高村総二郎さんです。
かのアンディ・ウォーホルが、作品のモチーフに、

アメリカの国民食であるキャンベルスープを選んだのにちなんで、

なんと高村さんが日本画のモチーフに選んだのは・・・・・

 

 

 

日清のカップヌードルです。

パッと見、全然、日本画っぽくないですが、

ちゃんと日本画の画材、技法で描かれています。

高村さん曰く、特にこだわりのポイントは、

このちゃんと閉じられていない蓋なのだそう。

 

 

 

ここ最近、猫耳システムとなりましたが、

ちょっと前までは、シールを貼るシステムでしたよね。

でも、あのシールをわざわざ剥がして、ここに貼り直すのはめんどくさい。

そんなカップヌードルあるある (?) を絵で再現したそうです。

なお、この作品を所蔵しているのは、

日清食品ホールディングスとのこと。

さすが、CM攻めてるだけはあります。

 

また、高村さんはこんな作品も出展しています。

 

 

 

タイトルは、《国宝 東求堂 同仁斎》

京都の銀閣にある国宝の書斎 「同仁斎」 を、実物大で再現した作品です。

本物そっくりですが、本当に畳ではなく、岩絵具で描かれています。

この作品と対をなすのが、《借家 高村邸 居間》

 

 

 

当時、高村さんが住んでいた家の畳を再現した作品です。

同じ四畳半でも、こんなに経年劣化が早いものなのですね。

畳の変色っぷりや、テレビが置いてある場所の跡の再現度の高さたるや!

リアル 『四畳半神話大系』 です。

 

 

そして、次に推したいのが、浅葉雅子さん。

デビュー以来、新しい日本画の発表を続けている作家です。

浅葉さんが特に衝撃を受けたという、

菱田春草の 《落葉》 を自分なりにアップデートした作品も素敵でしたが。

 

 

 

浮世絵の人物が時空を超えて、現代を旅する姿を描く。

そのありそうでなかった作品世界の発想力にノックアウトされました。

 

 

 

ちなみに。

今展のラストでは、出展作家全員が、

「栃木のイメージ」 をテーマに制作した新作が紹介されています。

 

 

 

栃木県内の実際の光景をモチーフにした作品もあれば、

とちおとめや日光東照宮の三猿をモチーフにしたものも。

どの作品も見ごたえがありましたが、

個人的には、木村了子さんの作品がヒットでした。

木村了子さんといえば、イケメンをモチーフに日本画を描くアーティスト。

 

 

 

その木村さんが、今回の新作では、

あえてイケメンを封印して、餃子を描いています。

 

 

 

さらに、表装は描き表装となっており、

益子焼に多大な影響を与えた人間国宝の陶芸家、

濱田庄司の 《柿青釉白格子描大鉢》 を写したものなのだそう。

しかし、まぁ、観れば観るほど、美味しそうな餃子です。

気づけば、頭の中は餃子のことでいっぱいになっていました。

イケメンはもちろん、餃子を魅力的に描かせたら右に出る者はいない。

それが木村了子さんです。


 



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