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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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特別展「空也上人と六波羅蜜寺」

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今年2022年は、日本において記録上初めて、

ひたすら 「南無阿弥陀仏」 と念仏をとなえた空也上人没後1050年の節目の年。

その御遠忌にあわせて、現在、東京国立博物館では、

空也上人が開山した六波羅蜜寺に伝わる至宝を一堂に会す、

“特別展「空也上人と六波羅蜜寺」” が開催されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

展覧会の目玉は、何といっても、

教科書でもお馴染みの 《空也上人立像》

東京で公開されるのは、実に半世紀ぶりなのだそうです。

 

重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真 城野誠治

 

 

6体の阿弥陀仏がエクトプラズムのように口から飛び出している。

このオリジナリティ溢れるお姿は、

一度観たら忘れないほどの強烈なインパクトがあります。

 

重要文化財 空也上人立像 (部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真 城野誠治

 

 

なお、6体の仏は、空也上人が 「南無阿弥陀仏」 ととなえたところ、

その声が阿弥陀如来の姿に変わったという伝承を表しているのだそう。

若干、空也上人自身も、ビックリしているようにも見えます。

 

ちなみに。

彫像の発した言葉が、ビジュアル化されている例は、

日本はもちろん、世界的に見てもほぼ類がないのだとか。

それだけでも充分独創性がありますが、

「南」「無」「阿」「弥」「陀」「仏」。

それぞれ1文字ずつ仏化 (?) させたところに、強く独創性を感じました。

普通に考えたら、6文字目の 「仏」 だけを仏にしそうなものですが。

 

と、最初はやはり、つい口元ばかりに目が向いてしまいましたが。

改めて、全身をマジマジと観てみると、

その徹底された写実表現に圧倒されました!

 

重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

 

まさに今、念仏をとなえながら、

一歩ずつ足を踏みしめている途中のような。

存在感だけでなく、動きまで、ありありと感じられるのです。

口から仏が飛び出しているところばかりが、

クローズアップされがちな 《空也上人立像》 ですが。

純粋に彫刻作品として観ると、そのポテンシャルの高さは相当なもの。

日本にある彫刻作品 (写実部門) の中でも、

5本の指に入るレベルなのではないでしょうか。

台座も仏像の台座というよりも、彫刻作品のそれのようでしたし。

 

重要文化財 空也上人立像 (部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

 

なお、お寺に安置されている際は、

ほぼ正面からのお姿しか見えませんが。

今展では360度全方向から鑑賞することができます。

 

重要文化財 空也上人立像 (部分) 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

 

後ろから観ると、思いのほか、

お腹を引っ込めているのがわかりました。

あの 「南無阿弥陀仏」 は、腹から声を出していたのですね。

 

平安京に疫病が蔓延した際に、

疫病退散を命じられたという空也上人。

自らの命を顧みず、「南無阿弥陀仏」 と唱えながら、人々を介抱したのだそうです。

それだけに、《空也上人立像》 が上京したのを機に、パンデミックが収まるかも。

そんな期待も高まる展覧会です。

星星

 

 

さてさて、会場には、《空也上人立像》 以外にも、

六波羅蜜寺所蔵の仏像 (それもほぼ重要文化財!) が多数展示されています。

 

image

 

 

 

それらの中には、なんと 《空也上人立像》 の作者、

康勝の父に当たる、仏師の最高峰・運慶の肖像彫刻や、

 

重要文化財 伝運慶坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

 

 

 《空也上人立像》 と同じく教科書でもお馴染みの 《伝平清盛坐像》 も!

 

重要文化財 伝平清盛坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

 

他の展覧会だったら、間違いなく主役級の作品なのに、

本展に関しては、完全に 《空也上人立像》 の脇侍と化していました。

 

ちなみに。

個人的にもっとも印象に残っているのは、

こちらのちょっとユーモラスな 《閻魔王坐像》

 

重要文化財 閻魔王坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

 

完全に首がめり込んでいます。

もし、いずれ自分が死んだ際に、

あの世で、こんな姿の閻魔様に出逢ってしまったら。

笑ってはいけないと思えば思うほど、

プッと吹き出してしまうかもしれません。

とに~ OUT!

即地獄行きです。

 

 

 ┃会期:2022年3月1日(火)~2022年5月8日(日)

 ┃※事前予約(日時指定券)推奨

 ┃会場:東京国立博物館 本館特別5室

 ┃https://kuya-rokuhara.exhibit.jp






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