Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

ちょっと未来の行動を完全に予言されたという奇跡。

$
0
0

美術の世界には、奇跡を起こしたヒーローが数多く存在する。
もしも、そんな彼らにヒーローインタビューを行ったなら・・・?

 

 

インタビュアー (以下:イ) 「放送席、放送席。
                 こちらには、キリストさんの一番弟子で、

                 初代ローマ教皇でもあるペテロさんにお越しいただいております」

 

ペテロ(以下:ペ) 「あ、どーもー。ペテロでーす」

 

イ 「あれ、意外とフランクな感じの方なんですね。

  一番弟子とうかがってましたので、

  てっきり、もっと生真面目な感じの方なのかと」

 

ペ 「全然そんなことないよ。

  あれだったら、俺のこと、“ぺーやん” って呼んでくれてもいいし」

 

イ 「いや、それはさすがに呼べないですけど」

 

ペ 「俺ね。一応、一番弟子ってことになってるけど、

   キリストさんには、マジでよく怒られてたからね」

 

イ 「そうなんですか?」

 

ペ 「そうなのそうなの。

   最後の晩餐で有名なあの日のことなんだけどさ、

   食事の前に、キリストさんが急にたらいに水を汲んでね。

   何すんだろう、と思ったら、俺ら弟子の足を洗うって言うわけよ」

 

ティントレット 《弟子の足を洗うキリスト》

 

イ 「師匠自らですか?」

 

ペ 「俺らも、くりびつてんぎょういたおどろ。

   「キリストさん、そんなことしないでいいです」 って断ったわけ」

 

イ 「普通に考えたらそうなりますよね」

 

ぺ 「でも、師匠は俺らの足を洗うんだってきかないもんだからさぁ。

   俺は師匠にこう言ったわけ」

 

イ 「はい。何て言ったんですか?」

 

ぺ 「「あ、じゃあ、ついでに手と頭も洗ってくださーい」 って」

 

イ 「えっ?は?」

 

ぺ 「そしたら、キリストさん怒っちゃって。

   「俺は足しか洗わん」 だって」

 

イ 「そりゃ、そうなりますよね。

  どのタイミングで調子に乗ってんですか?」

 

ぺ 「調子に乗ったといったら、キリストさんが海の上を歩いたあの時も」

 

イ 「今さらっとすごいこと言いましたね。

  キリストさんって海を歩けるんですか」

 

ぺ 「ある夜、俺が船に乗ってたら、海の上に誰か立ってるわけ。

   くりびつてんぎょういたおどろ」

 

イ 「そのギャグ好きですね・・・」

 

ペ 「最初は幽霊かと思ったんだけど、よく見たらキリストさんだったのよ。

   で、それ見てたらさ、俺も海の上を歩きたくなっちゃって」

 

イ 「え?ペテロさんも海の上、歩けるんですか?」

 

ぺ 「いや、普通に溺れたし」

 

ロレンツィオ・ヴェネツィアーノ 《溺れるペテロを救うキリスト》

 

 

イ 「歩けないんかい!」

 

ぺ 「もちろん歩いたことなんてなかったけど。

   なんか歩けそうな気がしたのよ」

 

イ 「典型的な、調子に乗ってやらかすタイプの人間ですね」

 

ぺ 「まぁ、でも、あの例の一件以来、俺も猛省してさ。

   調子に乗らないように、心を入れ替えたんだから」

 

イ 「なるほど。それが例の奇跡の話ですね」 

 

ぺ 「そうなんだよ。最後の晩餐をみんなで食べてた時に、

   「この中に一人裏切り者がいる!」 って言ったってのは有名でしょ」

 

イ 「はい。それは聞いたことがあります」

 

ぺ 「さらに、「この後、自分は捕まる。でも、弟子はみんな逃げる」 って続けたの。

  さすがに、俺ら、キリストさんを見捨てて逃げるわけないじゃん」

 

イ 「ですよね」

 

ぺ 「しかも、キリストさん、俺にこんなことも言ったわけ。

  「お前は、鶏が鳴く前に、私のことは知らないと3回言うだろう」 って。

  いやいや、いくら俺がお調子者でも、マジでそんなことしないから!

  まぁ、1回くらいなら言うかもだけど、3回はいくらなんでも」

 

イ 「弟子なら、1回も言っちゃダメですよ。

  で、結局のところ、どうなったんですか?」

 

ぺ 「キリストさんは捕まったでしょ。

   で、俺らみんな逃げたでしょ」

 

イ 「当たってるじゃないですか!」

 

ぺ 「だって、怖かったんだもん。

   でもさ、その後、俺勇気を出して、

   キリストさんが捕まえられている屋敷に忍び込んだわけ」

 

イ 「おー、エラいですね!」

 

ぺ 「だろ?それで、そーっと助けようとした次の瞬間に、

  召使いの女に見つかって、「あなた、キリストと一緒にいた人よね?」 と聞かれたの」

 

カラヴァッジョ 《聖ペテロの否認》

 

イ 「何て答えたんですか?」


ぺ 「キリスト?ちょっと何言っているのかわからない」

 

イ 「早速、1回目!」


ぺ 「そしたら、別の召使いの女が出てきて、

   「この人、絶対キリストと一緒にいた人だ」 って騒ぎ始めて」

 

ヘラルト・ファン・ホントホルスト 《聖ペテロの否認》


イ 「そこはさすがに認めましたよね」

 

ぺ 「キリスト?なんだそれ?うめぇのか?」

 

イ 「孫悟空か!」


ぺ 「さらに、もう一人出てきてさ。

  「確かに。お前はキリストの仲間だ。言葉のなまりではっきり分かる」 とか言うわけ」

 

イ 「え?もしや・・・」

 

ぺ 「キリストなんてマジで知らないです!

  キリスト・・・いや、神に誓って知らないです!」

 

イ 「やっぱり!何で正直に言わないのかなぁ」

 

フランシスコ・コランテス 《聖ペテロの否認》

 

ぺ 「そしたら、そのタイミングで、鶏の鳴き声が聞こえてきて。

   あっ、キリストさんが、そういえば、そんなこと言ってたような」

 

イ 「今頃気づいたんですか」

 

ぺ 「あぶなかったー。あと1回、知らないって言ってたら、

   完全にキリストさんの予言通りになってたところでした」

 

イ 「ちょっとちょっと!何しれっと1回ごまかしてんですか?

  あなた、ちゃんと3回知らないって言ってましたから」

 

ぺ 「そうでした?」

 

イ 「そうでした」

 

ぺ 「てへぺろ」

 

イ 「は?」

 

ぺ 「てへぺろペテロ」

 

イ 「ずっと調子乗ってんな、この人。

  もうインタビュー終わり終わり!こちらからは以上!放送席にお返しいたします」




1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles