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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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VOCA展2022

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全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者らにより推薦された、

40才以下の作家が平面作品の新作を出品し、その優劣を競うガチンコバトル。
それが、VOCA展です。

平面作品とは言っても、壁面に展示できて、

250cm×400cm以内のサイズであれば、出展OK。
絵画や版画、写真に限らず、映像作品も出展OKとなっています。
また、“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす” というルールがあるため、
裏を返せば、その条件を満たしている以上、20cm以内の薄型立体作品もOKということ。
要するに、わりと何でもありな展覧会です (笑)

 

過去には、村上隆さんや奈良美智さん、蜷川実花さんといった、
日本を代表する現代アーティストが、若き日にVOCA展に参加しています。
いうなれば、VOCA展は若手作家の登竜門!
多くの若手作家にとって、VOCA展は憧れのステージといえましょう。

 

来年に30周年を控えた今年の “VOCA展2022” には、

33人 (組) のアーティストが新作を引っ下げ参加しています。

 

 

 

グランプリとなるVOCA賞を受賞したのは、

川内理香子さんの 《Raining Forest》 という作品です。

 

 

 

中央に描かれているのは、ジャガー。

自然のヒエラルキーの最高峰と、

神話の中で位置づけされる火を、人間にもたらすものなのだそう。

 

 

 

特徴的なのは、その描き方。

油絵の具を塗り重ね、その表面を彫り出すように描いています。

ラスコーの壁画に通ずるようなプリミティブさもあり、

色味がどことなく内臓を彷彿とさせるので、身体的でもあり。

画面から発せられるパワーは並々ならぬものがありました。

VOCA賞を受賞するのも納得の一枚です。

 

 

VOCA奨励賞を受賞したのは、

近藤亜樹さんの 《ぼく ここにいるよ》

 

 

 

自分の子どもが 「ここにいる」 ことに対し、

不思議な思いと、感謝の気持ちを込めて描いた作品なのだそう。

そえゆえ、右側のキャンバスには、

自身が毎日飲むコーヒーと、子どもが飲むホットミルク、

その周囲には、たくさんのおもちゃが描き込まれています。

よく見ると、元気100倍のあの人気キャラクターの姿も。

なんとなく、『トイザらス』 のCMを連想してしまう作品でした。

 

さらに、VOCA奨励賞受賞作品はもう一点。

鎌田友介さんの 《Japanese Houses(Taiwan / Brazil / Korea / U.S. / Japan)》 です。

 

 

 

書院造を思わせる写真やら木片やらが置かれています。

作品のテーマは日本家屋、

それも海外にある日本家屋なのだそう。

まず、左側の中央にある3点の写真は、

台湾や朝鮮、ブラジルにある日本家屋を写したもの。

かつて日本人が入植した際に建てられたもので、

老朽化により、保存するか取り壊すかの選択に迫られているそうです。

左下にある木片は、実際に解体された日本家屋の一部とのことです。

そして、右にある図面は、第二次世界大戦中、

米軍がいかに効果的に焼夷弾で日本家屋を焼き尽くせるか、

その実験のために建てられた日本家屋の設計図なのだとか。

しかも、焼夷弾を落とす理想的な角度なども記載されています。

ちなみに、この悪魔のような実験に協力したのは、

フランク・ロイド・ライトの助手であったアントニン・レーモンドとのこと。

レーモンドといえば、戦前も戦後も、日本で多くの建築を設計した建築家。

まさか、そんな裏の顔があっただなんて。

街を焼き尽くす協力をして、そこに建物を建てて・・・。

究極のマッチポンプです。

 

 

なお、大原美術館賞を受賞したのは、小森紀鋼さんの 《絵画鑑賞》

 

 

 

佳作賞を受賞したのは、谷澤紗和子さんの 《はいけい ちえこ さま》 と、

 

 

 

昨年このブログでも紹介した気鋭の作家・堀江栞さんの 《後ろ手の未来》 です。

 

 

 

受賞された皆様、本当におめでとうございます!

これからのさらなる活躍に期待が高まります。

星

 

 

ちなみに。

個人的に一番印象に残ったのは、

野原万里絵さんの 《知覚の標本》 という作品。

 

 

 

こちらは大阪の人々と共同制作された作品です。

参加者は、野原さんが用意した石からイメージしたもの、

例えば、色や形、テクスチャーなどを抽出し、背景部分を制作します。

野原さんは、その背景からインスピレーションを受けたものを描き、仕上げます。

それらを組み合わせたものが、この作品というわけです。

多くの人の作業が組み合わさって作られている。

アート作品というよりも、遺跡を鑑賞している感覚に近いものがありました。

野原さんには、とに~賞を授与したいと思います (そんな賞いらないでしょうが)。

 

 

それと、もう一点印象的だったのが、

本山ゆかりさんの 《Plate(Waltz)》 という作品。

 

 

 

4枚の木製パネルすべてに、天秤が彫り込まれています。

よく見ると、どの天秤も傾きが異なっていました。

それぞれのお皿には何が乗っているのか。

想像力が搔き立てられます。

なお、そんな 《Plate(Waltz)》 の前には、ベンチが置かれていました。

 

 

 

どちらも木製。

どちらもウェーブ。

意図的なのか。たまたまなのか。

さらなる想像力が搔き立てられます。

 

 

 

 

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