先日は、駐日スペイン大使館へ行ってきました。
現在、こちらでは、スペインが誇る天才建築家、
アントニ・ガウディをフィーチャーした展覧会が開催されています。
その名も、“SDGsの先駆者 アントニ・ガウディ 形と色‐150年前からのヒント‐” です。
展覧会のテーマは、SDGs (エスディージーズ)。
「持続可能な開発目標」 です。
最近よく目にする単語ながらも、
なんとな~くしか理解は出来ていませんが。
ひとつ確実に言えるのは、
ガウディが活躍した150年前には、SDGsという言葉はなかったはず。
ガウディがSDGsの先駆者とは、一体、どういうことなのでしょうか。
まず会場で紹介されていたのは、
ガウディが改築を手がけた邸宅カサ・バトリョ。
その窓を40%縮小再現した模型です。
注目すべきは、窓ガラスの下に設けられた格子状の何やら。
実は、これらはスライドできるようになっており、
隙間を作ることで、外気を取り入れられる仕組みになっています。
こうした窓や中庭スペース、
さらに、屋上には換気塔が設けられているカサ・バトリョ。
一見、奇抜で造形的なデザインに思えますが、
実は、空気の通り道を計算し尽くした建築だったのです。
また例えば、観光客にも大人気のグエル公園。
その中央大階段の上に、カラフルなトカゲがいるのですが。
実は、ガウディの当初の計画では、
濾過した雨水を貯めた貯水槽の水が、
このトカゲの口から流れ出すようデザインされていたのだとか。
なるほど。
雨水を最大限に活用しようとしていたのですね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
自然の空調システムしかり。
雨水を活用した循環システムしかり。
確かに、ガウディが天才であったのはよくわかりました。
が、しかし、これはSDGsなのか・・・??
もちろんエコで、地球に優しくはあるものの、
この時代には、現代のような空調や水道設備が存在してないわけで。
ガウディ以外の建築家も、何かしら工夫を凝らしていたでしょうし。
ガウディがもし現代に生きていたら、
普通に空調や水道設備を活用していたかもしれないですし。
「ガウディがSDGsの先駆者」 というのは、
いささか、こじつけであるような印象を受けました。
極めつけは、サグラダ・ファミリア聖堂の随所にみられる複雑な造形とSDGsについて。
解説パネルには、こう記載されていました。
「ガウディの建築は一見すると複雑な造形にみられがちですが、
それらの多くは幾何学の組み合わせによってできています。
職人たちは困惑しましたが、ガウディは幾何学を教えるのではなく、
点と点を結ぶ直線の切り方法を伝えることで、
職人たちはそれらの形を苦も無く切り出すことができたと言われています。
サグラダ・ファミリア聖堂にはそれらの形がよく見られ、まさに材料の適材適所や、
シンプルな原理で複雑な造形を生み出す仕組みを考えたガウディの眼差しは、当時も、
そして現代においても先端的で革新的なデザインの創出方法としてSDGs的といえるでしょう。」
・・・・・・・SDGsって何かね?
ちなみに。
トカゲの表面もそうですが、
ガウディは、自身の建築にしばしば、
トレンカディスという技法を取り入れているそう。
トレンカディスとは、使われなくなったお皿や花瓶を割って、
その破片を組み合わせて貼り付けるガウディ独自の技法です。
この技法は、完全にSDGs。
風とか水とか余計なトピック (?) は言及せずに、
最初からトレンカディス推しにすれば、良かったのに (笑)
なお、ガウディはただ適当に陶器の破片を貼っていたのではなく。
日光が当たるところと影になるところで、
色合いのバランスを変えるなど、こだわりがあったそうです。
実は、サグラダ・ファミリア聖堂のファサードも、
トレンカディスで着彩される予定だったそうですが。
ガウディの突然の事故死により、実行されていないのだそうです。
そこで、東京工芸大の久原泰雄教授が考案したのが、
《AIガウディ・サスティナブル・アーキテクチャ》 という作品。
ガウディの既存の建築物から導出した色彩をAIに覚えさせ、
サグラダ・ファミリア聖堂のファサードを着彩させてみるという作品です。
非常に興味深い作品でした。
ただ、作品の内容よりも気になったのは、
それぞれの色彩につけられたネーミングのセンス。
“シャガールみたいな青い夜” みたいに言わんでも。
ちょっとポエミーでした。