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建部凌岱展 その生涯、酔たるか醒たるか

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現在、板橋区立美術館で開催されているのは、

“建部凌岱展 その生涯、酔たるか醒たるか” という展覧会。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

ある時は画家。ある時は俳人。またある時は国学者。

小説家としても活躍した江戸中期のマルチアーティスト、

建部凌岱 (たけべりょうたい 1719~1774) の大々的な回顧展です。

 

「建部凌岱・・・・・・・・誰??」

 

おそらく100人中100人がそう思ったことでしょう。

しかし、江戸後期のベストセラー 『続近世畸人伝』 においては、

「全体胆勇有リ、才抜群」「生涯酔たるか醒たるかしるべからざる人」 と評されたほどの有名人。

昭和11年には、建部凌岱の出身地である青森県弘前市にて、

遺墨展が開催され、秩父宮夫妻が観覧に訪れ、話題となったそうです。

 

ちなみに。

その遺墨展の出展目録が、こちら。

 

 

 

開かれたページに掲載されている 《紅梅群鵲》 という絵は、

現在は残念ながら行方不明ですが、当時は青森県有数の大地主・津島家が所蔵していたそう。

日本文学が好きな人であれば、青森県の津島家と聞いて、ピンと来たことでしょう。

そう、太宰治の生家です。

実は、太宰治の自伝的小説 『津軽』 にも、

建部凌岱が描いた絵が登場しているのだとか。

 

その昭和11年の展覧会を最後に、

すっかり忘れ去られてしまった感のある凌岱。

今回の板橋区美での建部凌岱展は、

それ以来、実に86年ぶりの展覧会となるそうです!

星星

 

 

出展作品は、個人蔵を含む約80点。

それらを、俳画や山水画といったジャンルごとに紹介しています。

 

 

 

とりわけ凌岱が描いたのが、花鳥画。

鳥が好きだったようで、さまざまな鳥を描いています。

 

 

 

当時最先端であった中国の絵画を学ぶべく、

誰よりも早く長崎へと遊学した経験のある凌岱。

沈南蘋風の花鳥画ももちろん描いていますが、

 

 

 

そうでもない (?) 作風の花鳥画も多く残しています。

 

 

 

職業絵師ではないので、

いい意味で、細かいことに気にしない凌岱。

そこが魅力の一つといえましょう。

 

ちなみに。

制作年を残していないため、どれが初期の作品で、

どれが晩年の作品なのか、ハッキリとは断定できないそうですが。

おそらく最晩年の作と考えられているのが、

本展のメインビジュアルに選ばれた 《海錯図》

 

 

 

サワラやトビウオ、シュモクザメなど、

約50種類70尾の海の生き物たちが描かれた屏風絵です。

 

 

 

現代でこそ、水族館や海中の写真や映像があるので、

魚が泳いでいる姿は当たり前のように思い浮かべられますが。

江戸時代中期にはもちろんそんなものは無いわけで。

これだけ生き生きと魚の泳ぐ姿を描くには、

相当の技術と想像力が必要だったことでしょう。

なお、どの魚も味がありましたが、

やはり一番インパクトがあったのは、アカエイ。

 

 

 

実際のエイの顔も、人間の顔みたいではありますが。

さすがに鼻やほうれい線は無いだろうに。

このエイに関しては、ウケ狙いしているような気がします。

 

そんな凌岱が描いたエイの絵は、他にも。

 

 

 

これはもう確信犯ですね。

完全に笑かしにいってます。

 

そうそう。魚と言えば、展覧会では、

凌岱の弟子である楫取魚彦 (かとりなひこ) の作品も紹介されていました。

 

 

 

魚彦という画号だけに、魚を多く描いたそう。

なお、本名は伊能景良。

日本全国を測量したあの伊能忠敬の親族に当たる人物であるようです。

 

そんな楫取魚彦が描いた不思議な一枚が、《酒泉猩々図》

 

 

 

ムックみたいな謎の生命体が、

滝壺でお酒を酌み交わしています。

シュールにもほどある一枚。

師匠の凌岱よりも、よっぽどこちらの方が、「酔たるか醒たるか」 です。

 

 

ちなみに。

本展に出品されていたすべての絵画や資料の中で、

個人的にもっとも印象に残っているのが、こちらの手紙。

 

 

 

凌岱の兄嫁に当たる “そね” という女性が描いた手紙です。

一体どんな内容の手紙なのでしょうか?

 

実は、『あじさいの唄』 で知られる漫画家、

森栗丸先生が、本展のために凌岱の生涯を完全漫画化!

展覧会の会場で、その原画も紹介されています。

 

 

 

それらの中に、先ほどの手紙にまつわるエピソードも。

 

 

 

今でいえば、不倫LINEが流出してしまったようなものでしょうか。

なお、この手紙は凌岱の兄の家系で、

代々大事に受け継がれて、今に至るそうです。

まさかこの手紙が、何百年も先に美術館で晒される日がこようとは・・・。

皆さま、不倫する際には、くれぐれもご注意を。


 



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